再会
世界樹汚染から六日後。
復旧作業はまだまだ時間がかかりそうだが、ようやく会議等の招集が無くなり時間が出来た。
「アヴィー、遅くなって悪かった。やっと時間が出来たから話し合おう」
「ノア休まなくて大丈夫?僕は全然まだ待てるよ。無理してるんじゃ…」
「いやいい。こういう事は早く終わらせたい」
そう言ってウルは家の周りに遮音結界を張り、アロンとセズにも外に行ってもらった。
「さて、どこから話すべきか。何か聞きたいことはある?」
「聞きたいことしかないよ。どうして居なくなったのか、どうして今そうなっているのか。なんで何も言わずに、六千年間も居なくなったの…」
「たかが六千年だろ」
「たかが!?僕がどれだけ……!」
「わかった、今のは私が悪かった。落ち着いてくれアヴィー」
アヴィーは悲痛そうな顔で声を荒らげた。
人によるが、創造者にとって六千年という時間は大したものではない。
だからまさかこんなにもアヴィーが怒るとは思わなかったのだ。
「質問にはいくらでも答えよう。さっき口にしていた疑問も後で説明する。だが、先に言っておきたいことがある」
「なに?」
「私が今こうなってることを他の創造者達に言わないでくれ。特に一番と二番は絶対にダメだ!あいつらこの事知ったらなんておちょくってくるかわかったもんじゃ……!」
一番と二番の事を言った途端アヴィーの目が逸れる。視線をあわそうとするがあわない。
口がへの字になっており、少しピクピクしている。
お世話係をしていたからわかる。これはアヴィーが焦ってる時の顔だ。
「おいアヴィー。何故目を合わせない」
「えっっっとぉぉ、」
「アヴィー。隠し事、あるな?」
「すぅぅ…」
「言え。」
「…」
「言、え。」
目を逸らしたまま言おうとしないので、肩に手をおきグッと力を込めて逃げられないようにしながら顔を近づけ圧をかける。
「実は神世でね、今ノアは消失のノアって呼ばれてて」
「消失ぅ?」
「元々集会をサボりがちだったノアだけどさすがに出席しなさ過ぎるのと、連絡がつく人が一人も居ないせいでそう呼ばれちゃってて」
神世は創造者や神が集まる場所で、そこでたまーに集会が開かれる。
創造者の時からまともに顔を出した事はなかったが、数回に一度は一番か二番に引っ張られて連れていかれる為それで騒がれたのだろう。
「どうせ第三世代のバカが言い出したんだろ」
「うん、まぁそれはそうなんだけど…」
「ったく。覚えておけよあいつら。で?それとなんの関係があるんだ」
「一番と二番様がノアと一番接触の可能性が高い僕と六番様に魔法をかけて」
「魔法?」
「ノアと接触したらその瞬間に二人に通知が行く魔法……ノアの魔力に反応するから、多分もう二人とも気づいててそろそろ突撃してくる頃合いだと」
「はぁ!!?なんでそんなもの!」
「多分二人ともノアが心配だったんじゃないかな」
「そんなわけないだろ!?あいつらは俺をおもちゃかなんかだと思ってるだけのイカレ野郎達だぞ!」
一番はいつまでもこちらの事をガキ扱いをしておちょくってくる腹黒で、二番は目が合えば何かとケチをつけてくる嫌味野郎だ。
二人の共通点は私以降の歳下にものすごく甘く、優しい所。二人揃って猫被りというわけだ。気持ち悪い。
「あの二人が俺を心配するわけ…!」
「酷いなぁ、お兄ちゃん達にそんな事言うなんて。こっちはやっとノアの情報が入ってきて超特急で仕事を切りあげてきたって言うのに」
「そうだぞ。間抜けな弟を心配して探していたってのに、なんだその暴言は」
どこからともなく突然聞こえる声。
言い終えると同時にアヴィーの両隣に空間の歪みができ、そこから二つの人影が出てくる。
そうして姿を現したのは言うまでもなく、先程話していた猫被り畜生共である。
「げっ。一番、二番……」
「全くお兄ちゃん達に向かってげっとか言わないのって、あれぇー?ノアちゃんどうちたのかな?その可愛らしい姿は」
「うるせぇ!ニヤニヤするな!近寄るな!」
「ダメだろノア。お前は今普通の人間と何ら変わりないのだから、俺達のことをそんな風に呼んじゃ。ほら創造神様と呼んでみろ」
近寄ってくるファスの掌と自分の掌を合わせてファスを押し返しながらヴェルを睨む。
「だ、か、ら!嫌だったんだよぉー!!!」
「あっはは!ごめん、ごめんってノア。そういじけないでよいつもの戯れだろう?」
「少し揶揄っただけだろう。いつもならこんなんでそんなにへこたれないじゃないか。いつまでそんな隅に居るつもりだ?」
部屋の隅で膝を抱えながら完全に丸まった私は目だけを動かし二人を睨む。
「話しかけんな、こっち見んな。てか帰れ」
そう言い放って私はまた視線を床に戻し丸まる。
「あーあ。ありゃしばらくダメそうだ。よっぽど俺らにあの姿見られたのが嫌みたいだ」
「だな。悪ぃなアヴィー、話し合い中だったろ?邪魔しちまった」
「いえ、構いませんよ。まさか本当にこんなにすぐ来るとは思ってませんでしたが」
「まぁ、あいつは有り得ないって言ってるが俺らもちゃんとあいつの事心配してたからな。ノアの魔力を発見した通知がとんできた時どれ程嬉しかったか、あいつは分かっちゃくれねぇだろうけどよ」
そう言ってノアを見つめる二人の目は、間違いなく優しいお兄ちゃんの目だった。
「ノアの機嫌が戻るまで、アヴィーがどうやってノアを見つけたのか聞いてもいいかな?」
「あ、はい」
僕はノアを見つけた経緯を二人に話した。
その間ノアはずっと隅で丸まりながら何かをブツブツ言っていた。多分文句だろう。




