【おまけ】防波堤のありがたさ(二視点)
今思えばこの卒業パーティーの時まで、実技授業以外はずっと三人で居たなと思う。
ウルと離れて級友に挨拶をしている時に移動の合間合間で女子生徒からそれはもう声をかけられた。
「ユリアス様!アーノルド殿下!一度お話してみたいと思ってましたの、よければ私と一曲踊ってくださらないかしら」
「抜け駆け禁止ですわよ!ユリアス様、ぜひ私と」
「アーノルド殿下はぜひ私と一曲」
「……」
「あはは、申し訳ないけど今は級友への挨拶をして回っているんだ。だから後で機会があればね」
「あぁ!お待ちください、御二方〜!」
会場には音楽が響き渡り、ダンスをしている者がちらほら見える。挨拶をしている間に曲が始まったらしい。
曲が始まってからというものずっとこの調子だ。たまに級友と話しているところに割り込んでくる奴もいる。正直言って鬱陶しい。
「お前はよくあんな笑顔で対応できるな。俺なんて黙っちまうよ」
「まぁ、慣れだよ」
そんな話をしているとまた別の女子生徒達が近づいてきた。耳をすませてみれば今はウルが居ないからチャンスだと思っているらしい。変に態度を取れば、もし今後国交を深める時に影響しかねないので、先程から対応は全部アルに任せている。
俺は口を開いてしまえば舌打ちか暴言が出そうなのでずっと黙って愛想笑いしているだけだ。
「ユ、ユリアス様、よろしければ私と一曲踊ってはいただけませんか!私、ずっと貴方様の事気になっていて」
(げぇ、俺指名かよ。アルが対応するのはさすがにおかしいか?でも……何とかしてくれ!アル!)
そう思いアルの方を見ると、あちらは囲まれていていつの間にか距離も空いている。
(やべぇ、これじゃぁ頼れねぇ!)
「あの、ユリアス様…?」
(ぐぅぅ、頑張れ、俺。やれるぞ、俺)
「素敵なお誘いですが、残念ながらダンスはあまり得意ではなく、レディをリード出来る自信が無いので申し訳ありませんが…」
「私、ダンスは得意ですの!私がリードしますから、大丈夫ですわ。それに、ダンスの授業の時のユリアス様を見ていましたが、お上手でしたよ!」
(えー、諦めろよ!てか授業中見てたってことは同じクラスだったのか?誰だっけ……とにかく、切り抜けねぇと)
「お恥ずかしい話でしたので言っていませんでしたが、現在足首を痛めておりましてダンスをするのが難しい状態なのです。申し訳ありませんがまたの機会にということで」
「それは、無理強いは出来ませんわね……ですが、ユリアス様は他国の御方、次の機会など……」
「きっといつかありますよ」
「そうですわ!私の屋敷でパーティーをする際に招待状をお送りいたしますわ!」
(はぁ!?何言い出すんだこの令嬢!?)
「招待に応じれれば良いのですが、生憎国に戻れば多忙の身となります故、招待状は結構です」
「そんな……」
「申し訳ありませんが、殿下のお傍をあまり離れる訳には行きませんので、この辺りで失礼します。」
「あっ、」
「やぁ、大変そうだったねアス」
「先に解放されてたなら助け舟くらい出せよ、この裏切り者」
「いやぁ、君がどう切り抜けるのか気になってね」
「はぁ、もうウルのところに戻ろうぜ。疲れた」
「そうだね、あまり待たせても悪いし」
アスと殿下が離れていってしばらくして、会場に音楽が響き渡り始めた。私はご飯を食べながら踊っている人達を横目に見る。
みな楽しそうにしており、やはり人間族の貴族はパーティーが好きなのだなと改めて思う。
少し喉が乾いたので、飲み物を取りに行こうと席を立ち、飲み物が置かれているテーブルへ移動していた時だった。
「グレーズ嬢」
「はい」
「僕と一曲踊っていただけませんか」
「……」
(席を立つんじゃなかった)
先程からやけに男子生徒から視線を感じると思っていたが、これを待っていたのか。
この場には流石に食事をしている者をダンスに誘う者など居ない。だが今、私は飲み物を取りに行くために席から立った。そこに声をかけられたのだ。
(こうなるくらいなら水魔法で直接口の中に水を流せば良かった。果実水を飲みたいと思ってしまったがせいで……!ここは普通に断ろう。喉が乾いてると言って、ていうか事実乾いてるし)
「申し訳ありませんが、喉が乾いておりまして、水を飲みたいので失礼します」
「あっ、お待ちください」
私は静止の声を無視して早足にその場を去ろうとした。が、
「グレーズ嬢、俺となら踊っていただけますか?」
「っ!貴様!僕が先に声を掛けていたのだぞ」
「振られていたではないか」
「グレーズ嬢、あの二人は無視して私と踊りませんか?」
「お前は授業でグレーズ嬢と踊ったことがあるだろ!」
「はい、なので私が一番リード出来るかと。それに相性も良さそうでしたしね」
そう言って三人目の男子生徒が私の手を引く。
(いや、踊るなんて一言も言ってないんだけど)
「何、手を取っているんだ貴様!」
「嫌がっているじゃありませんか!」
「振られた御二方は黙っていてください」
「俺は振られてない!」
「僕だって、彼女は水を飲みたがっているだけで、振られてない!」
「それが振られているんですよ」
「「「グレーズ嬢!誰を選びますか!」」」
「御三方ともご遠慮します」
「えっ」
「そんな」
「なぜ、」
「私、声の大きい殿方は苦手で。それに、喉が乾いているので失礼しますね」
そう言って今度こそその場を去った。
果実水を取り、足音が近づいて来る前に最初の席に急いで戻る。それからアスと殿下が帰ってくるまで、一歩も動かないことを決めた。
まだ何となく視線は感じるが全て無視をした。
(なんか、うん、すごい、無駄に疲れた)
そうして三人は今までウル(二人)がいた事で面倒事がだいぶ減ってたんだなと最後の最後で思った。
わたくしだと思って書いていても漢字が全部私になるので、わたしかわたくしの区別がつけれないんですよね




