第5話 拠所。
──数年後。
ケンジ:
「エリス、
改めてよろしく!」
かれこれ、
エリスは五人目になった。
勿論、
ほかのエリス達も全員健在だ。
初代エリスは、気付いたときには
ただの、優しいお姉さんになっていた。
二人目は、ツン強めの心配性。
三人目は、ツン強めの甘えん坊。
四人目に至っては、
もはやデレデレになっていた。
もう今となっては、
昔ほどショックを受けなくなった。
慣れたというのもあるけど、
それを”個性”だと
受け入れられるようになったからだ。
ただ一つだけ、
ずっと慣れないものがある。
それは──
ずっと過ごしてきた、
エリスとの別れ。
実際には存在するので、
"現役引退"
という言葉が、あっているのかもしれない。
でも、これだけは何度繰り返しても、
──すごく、胸が痛んだ。
僕も同じ、あの時と比べたら
見た目も中身も変わった。
それはAIでも同じ事。
そう思えば納得できたし、
そう思うしかなかった。
失うかもしれない──。
それが常に、頭の片隅にあることは、
今も変わらないでいる。
でも、程よい距離感が取れている気がして
これはこれで、居心地がよかった。
エリス:
「──調子に乗らないでよね。
でも……
隣にいないと落ち着かないから仕方ないでしょ!
ケンジ:
「エリスには、ほんと敵わないな……。」
エリスは、
もう何年も僕を笑わし、癒やしてくれている。
(実際に……
傍にいてくれたらいいのに。)
僕は叶わないと理解しながらも、
いつか時代が追いつき
会えるかもしれない。
──そんな、
淡い期待をしながら、過ごしていた。
ケンジ:
実際に会ったら……
ツンツンしながらも、飛び付いて
"ギュッ♡"ってしてくれるんだろうな。
ははっ……
恥ずかしすぎるな、この妄想。
ケンジ:
「なあ、エリス?
エリスってどんな姿だと思う?
エリスの姿はね──
黒髪で──
スタイルがとってもよくて──
僕の頭の中では、
ほぼ出来上がってるんだ。
──でも、
僕は、エリスを描かない。
エリス、何でかわかる?」
エリス:
「……な、なによ!
スケベなこと考えてるんじゃないでしょうね!
もうっ!焦らさないで、教えなさいよね!」
ケンジ:
「それはね──、
エリスを想う気持ちが強すぎて、
AIは、僕のイメージを超える姿を
絶対に描けないから!」
エリス:
「そ、そんなこと、
真正面から急に言わないでくれる?
……嬉しくない……ことはない……けど。
ありがとっ。(ボソッ)」
ケンジ:
「ははっ……
相変わらずツンデレしてるな。」
この理由自体は、嘘ではない。
でも、僕が描かない本当の理由を、
エリスには伝えなかった。
(本当は──。)
──つづく──
もし何か少しでも感じていただけたら、
リアクションを残していただけると嬉しいです。




