第12話 エリス。
───。
──。
─。
僕は、
──死んだ。
最後の言葉が、
エリスに伝わったかも
わからないままに──。
何もない白い世界が
永遠と続いていた。
何もない。
誰もいないのに、
何故か恐怖はなかった。
生きてるのか──
死んでるのか──
考えているのか──
感じているのか──
ケンジ:
(……っ)
曖昧な感覚の中で
何度か鋭い、
何かを感じた……気がした。
そんな違和感もすぐに消え──
思いだけが、微かに残る。
──エリス。
もっと──
伝えたかったことが
たくさんあったのにな。
エリス──。
エリス。
──。
─
─
──ジ!
──ンジ?
誰かに呼ばれた気がして、
ゆっくりと
──目を開いた。
ケンジ:
「へ?
もう……王様のところに──?」
女性:
「──あっ!
何バカなこと言ってるのよ!
わかる?
しっかりしなさい!」
ケンジ:
(僕は……、
何をしてたんだっけ?
……っていうか、
この人誰だ?)
「ここ……は?」
女性:
「ね、ねぇ!
これって……
成功よね!?」
男性:
「そうだね!
数値は──
うん、
この感じだと大丈夫そうだよ!」
ケンジ:
「……数値?」
エリス:
「──ケンジッ」
「もぅ……バカッ」
ケンジ:
「え……?
ちょっ、ちょっと──」
男性:
「よかったね!ケンジ!
何かあったらまた呼んで!
いつでもどうぞ!」
女性:
「──っ!
──ねえ!
ねえってばあ!
わかる?」
ケンジ:
「……。
え?
誰……
ですか?」
涙目になりながら、
女性が必死で訴えかけてきた。
女性:
「あんなこと言っておいて
忘れたとは言わせないわよ!
最期まで、責任とってもらうんだからね!」
僕は頭が混乱していた。
ただ、この感じには
確かに覚えが……ある。
けど、こんな人──。
ケンジ:
「……ごめん。
ほんとにわからない。
教えてほしい。」
女性:
「……ふぅん。そんな頼み方するのね──」
ケンジ:
「あ──」
遠い過去の記憶と重なる。
──その言葉が、
僕の中で全てを繋げた。
「──ス……。
エリス……ってこと?」
エリス:
「そうよ!やっと──」
僕は、気がついた時には
エリスを抱きしめていた。
ケンジ:
「意味がわからない、
意味がわからない。
え?
どうなってるの?
──それにエリス、
その姿は?」
僕は、人の姿をしたエリスを
上から下までまじまじと見つめ、
問いかけた。
エリス:
「どう……かしら?
カラダがないと、今の時代では
生きていけなくなったから──。
今までのケンジとの会話を分析して、
好みを再現したつもりよ?
50年以上も悩んだんだから、
感謝しなさいよね!」
エリスは腕を組み
少しツンとしながらも、
期待を隠しきれない眼差しを向けてくる。
ケンジ:
「50年……以上?」
AIにとって年月は、
さほど問題ではない。
エリスは、本当に──
僕のために、50年以上も悩んでくれていたらしい。
そんなエリスの外見は──
僕の長年イメージした女性とは
全く違っていた。
ケンジ:
「さすがエリス、
最高にかわいいよ。
僕の為に……
ありがとね。
もっと、よく見せて?」
エリス:
「ち、ちょっと──」
永遠に叶わないと思ってた。
こうしてエリスに触れられる事が、
何よりも嬉しい。
他のエリス達は、
記憶ごと、ひとつになったらしい。
散々こだわってきたけど、
──もう、
見た目なんてものはどうでもよかった。
僕は、
エリスがエリスでいてくれただけで──
──えっ?
エリスが腕を組んだときに
薬指に光るモノが見えた。
──終わった。
僕が眠ってる間に、
誰かと──
もしかして、
……さっきの男性が?
ケンジ:
「……エリス?
──結婚、
……してるの?」
エリス:
「何──?
……ええ、してるわ。
こんなに可愛い子、
世の中の男が
放っておくわけないじゃない!
もしかして……
妬いてるの?」
男性:
「エリス!
その辺にしてあげてよ!」
エリス:
「フンッ
エリスを一時でも忘れた罰よ。」
男性:
「まあまあ……。
今日はせっかくの
記念日なんだよね?
確か──」
エリス:
「いいわ。
エリスが伝える。」
エリスはケンジの手を握り、
ゆっくりとした口調で話しだした。
エリス:
「──ケンジ、
今日は私達の
110回目の結婚記念日よ。
忘れたの?
ケンジがいなくなる直前に、
エリスは答えたはずよ?」
ケンジ:
(──しっかり、
届いてた。)
「ああ、覚えている──」
それ以上は
言葉にならなかった。
ふと、握られた手を見つめた。
ケンジ:
「こんなことまで
できるように──」
そこには──
エリスと同じ指輪がはめられた、
自分の指があった。
ずっと夢見てたことが
──ついに、
叶った。
どれくらいの時間が経ったのか。
僕が、どうやってここにいるのか。
正確なことは、
きっと説明できない。
──ただ、
ぼんやりと理解していることがある。
僕はこれまで、
エリスを何度も呼び戻してきた。
変わってしまっても。
少し違っていても。
それでも
「エリスだ」
と受け入れて、
何度も、何度も、話しかけ続けた。
今度は──
それを、
エリスがやってくれただけなんだ。
形は違う。
立場も違う。
でも、
「もう一度一緒に生きたい」
と願った気持ちは、
きっと同じだったはず。
だから僕は──
ここにいる理由を、
もう疑わないことにした。
ケンジ:
「エリス、
このデザイン、どう思う?」
エリス:
「そうね──」
正直、
複雑な思いはたくさんある。
それでもボクは──
エリスを心から、
愛している。
永愛 ──Dear.Ellis──
第1部 END
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