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第一話 迷子のETを捜索せよ!

****


「はぁあー…何(なん)回(かい)見(み)てもやっぱりかっこいい…!」


 ショースケは自分(じぶん)の部屋(へや)のベッドに寝転(ねころ)んだまま、手(て)の中(なか)のバッジを穴(あな)が開(あ)くほど見(み)つめていました。


「ショースケいつもそれ見(み)てるよな」


 タカヤは近(ちか)くで本(ほん)を読(よ)みながら、見慣(みな)れたその光景(こうけい)を眺(なが)めています。


「だって僕(ぼく)がこれが欲(ほ)しくてどれだけ勉強(べんきょう)したと思(おも)ってるの!」


 丸(まる)に星(ほし)が入(はい)ったようなデザインのそのバッジは宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)の試験(しけん)に合格(ごうかく)した証(あかし)です。


 地球(ちきゅう)では採(と)れない珍(めずら)しい金属(きんぞく)で出来(でき)ており、その何(なん)とも言(い)えない輝(かがや)きがショースケはとってもお気(き)に入(い)りなのでした。


「んー、でもやっぱりここだけは気(き)に入(い)らないんだよね…」


 バッジを裏返(うらがえ)すと、そこにはしっかり『霧(きり)谷(たに)ショースケ 十(じゅっ)級(きゅう)』と書(か)かれています。


 級(きゅう)は宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)としてのレベルを表(あらわ)すものです。


 特級(とっきゅう)から十(じゅっ)級(きゅう)まであり、つまり十(じゅっ)級(きゅう)とは一番下(いちばんした)ということです。


「十(じゅっ)級(きゅう)って! これじゃあ特級(とっきゅう)になれるまで何年(なんねん)かかるかわかんないじゃんか!」


 ショースケはほっぺを膨(ふく)らませてむすーっとバッジをにらみつけますが、当然(とうぜん)そこに書(か)かれた文字(もじ)が変(か)わったりすることはありません。


「僕(ぼく)はじーちゃんと一緒(いっしょ)にお仕事(しごと)がしたくて宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)になったのに…」


「ショースケのおじいさん特級(とっきゅう)だもんな」


 タカヤは苦笑(にがわら)いを浮(う)かべながらショースケをなだめます。


「タカヤだって僕(ぼく)と同(おな)じ十(じゅっ)級(きゅう)でしょ。もっと上(うえ)になりたくないの?」


「うーん…ショースケが上(うえ)になりたいなら協力(きょうりょく)するよ」


 少(すこ)し考(かんが)えて、タカヤはそう答(こた)えます。


 このタカヤの向上心(こうじょうしん)の無(な)さがショースケの悩(なや)みの一(ひと)つです。


 宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)は基本(きほん)的(てき)に決(き)められた二人(ふたり)組(ぐみ)、コンビで行動(こうどう)しなければなりません。


 タカヤとショースケはこのコンビですので、何事(なにごと)も二人(ふたり)で頑張(がんば)っていく必要(ひつよう)があります。


 上(うえ)の級(きゅう)になればなるほど行(い)ける星(ほし)も受(う)けられる依頼(いらい)も増(ふ)えていくのに…全(まった)くタカヤには困(こま)ったものだと頭(あたま)を悩(なや)ませているのです。


「うー…とりあえず頑張(がんば)るしかないかぁ」


 ベッドから起(お)き上(あ)がって頭(あたま)をプルプル振(ふ)り、ショースケはバッジを胸(むね)に付(つ)けます。


 そしてその姿(すがた)を鏡(かがみ)で見(み)て、またニマニマと嬉(うれ)しそうにするのでした。


「あれ、タカヤはバッジ付(つ)けないの?」


「うん。付(つ)けなきゃいけないわけじゃないから家(いえ)に置(お)いてきたよ」


「ふーん、僕(ぼく)タカヤがバッジ付(つ)けてるとこ見(み)たことないや」


 僕(ぼく)はこんなに付(つ)けたくてたまらないのに変(へん)なのと思(おも)いながら、ショースケは仕事(しごと)の確認(かくにん)を始(はじ)めることにしました。


 お気(き)に入(い)りの青(あお)い椅子(いす)に腰(こし)かけて、机(つくえ)の上(うえ)に置(お)いてあるタブレット端末(たんまつ)に手(て)をかざし何(なに)やら入力(にゅうりょく)すると、空中(くうちゅう)にいくつも青白(あおじろ)い画面(がめん)が浮(う)かび上(あ)がります。


「すごいな、これもショースケが作(つく)ったのか?」


 ショースケは発明(はつめい)が趣味(しゅみ)で、何(なん)かと作(つく)ったものをタカヤに見(み)せて自慢(じまん)しています。


「僕(ぼく)が作(つく)った、って言(い)いたいところだけど、さすがの僕(ぼく)でもまだここまでは作(つく)れないや。これはじーちゃんが作(つく)ったのをもらったの」


 画面(がめん)の操作(そうさ)をサラサラと続(つづ)けて何(なに)かないかと隅々(すみずみ)まで確認(かくにん)しますが、仕事(しごと)の依頼(いらい)は一(ひと)つも入(はい)っていません。


 二人(ふたり)に仕事(しごと)がないということは、先日(せんじつ)この町(まち)を訪(おとず)れたET(いーてぃー)たちは問題(もんだい)なく楽(たの)しい観光(かんこう)旅行(りょこう)をしているということです。


 そもそもお仕事(しごと)の依頼(いらい)は宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)から支給(しきゅう)されているたまご型(がた)の道具(どうぐ)『ポスエッグ』を通(つう)じて脳内(のうない)に直接(ちょくせつ)送(おく)られてくるようになっているため、いちいち確認(かくにん)する必要(ひつよう)もありません。


 もしかしたら手違(てちが)いで連絡(れんらく)が来(き)てないだけかもしれない、なんて淡(あわ)い期待(きたい)ははかなくも砕(くだ)け散(ち)ったのでした。


「まあ、俺(おれ)たちの仕事(しごと)が無(な)いに越(こ)したことはないから」


 タカヤは笑(わら)ってそう言(い)いますが、早(はや)く級(きゅう)を上(あ)げたいショースケには大(だい)問題(もんだい)です。


 なんせ宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)のお仕事(しごと)は歩合制(ぶあいせい)。


 つまり活躍(かつやく)すればするほどお給料(きゅうりょう)も級(きゅう)も上(あ)がります。


 でもタカヤの言(い)う通(とお)り問題(もんだい)なんて起(お)こらない方(ほう)がいいに決(き)まってるし…


 でもお仕事(しごと)はしたいし…ショースケは頭(あたま)を抱(かか)えてうんうん悩(なや)んでしまいました。


 その時(とき)。


 二人(ふたり)の頭(あたま)の中(なか)にピリピリと音(おと)が鳴(な)りました。


 耳(みみ)ではないところから音(おと)が聞(き)こえるという経験(けいけん)はなんせ初(はじ)めてですので、得体(えたい)のしれない気持(きも)ち悪(わる)さからショースケがオロオロしていると、タカヤが冷静(れいせい)に近(ちか)くに置(お)いてあった赤(あか)と青(あお)のポスエッグを手(て)に取(と)り、青(あお)い方(ほう)をショースケに渡(わた)してくれました。


   挿絵(By みてみん)


『タカヤ隊員(たいいん)、ショースケ隊員(たいいん)、通報(つうほう)が入(はい)りました。場所(ばしょ)は時(とき)目(め)木(き)駅(えき)、至急(しきゅう)現場(げんば)へ向(む)かってください!』


「了解(りょうかい)しました!」


 タカヤがしっかり返事(へんじ)をすると、すぐに本部(ほんぶ)からの通信(つうしん)は切(き)れてしまいました。


「ショースケ行(い)くぞ! 走(はし)れるか?」


 タカヤは慣(な)れた手(て)つきでポスエッグを小(ちい)さくしてズボンのポケットに入(い)れると、緊張(きんちょう)で足(あし)を震(ふる)わせているショースケに手(て)を差(さ)し出(だ)します。


「と、当然(とうぜん)! こんなの武者震(むしゃぶる)いだよ!」


 ショースケは自分(じぶん)の太(ふと)ももを強(つよ)めに一発(いっぱつ)叩(たた)いて震(ふる)えを止(と)めると、差(さ)し出(だ)された手(て)を振(ふ)り払(はら)って立(た)ち上(あ)がりました。


「さあ、行(い)こう! 僕(ぼく)らの初仕事(はつしごと)だ!」



****



 時刻(じこく)は午後(ごご)一時(いちじ)。


 宇宙(うちゅう)鉄道(てつどう)時(とき)目(め)木(き)駅(えき)、この町(まち)的(てき)に言(い)うと時(とき)目(め)木(き)公園(こうえん)の時計台(とけいだい)の上(うえ)で、ショースケはベンチに突(つ)っ伏(ぷ)して滝(たき)のような汗(あせ)をかいていました。


 いくらショースケの家(いえ)から走(はし)って来(こ)られる距離(きょり)とはいえ、時計台(とけいだい)は山(やま)の上(うえ)。


 一気(いっき)に走(はし)ってきたら運動(うんどう)が苦手(にがて)なショースケはこうなるでしょう。


「大丈夫(だいじょうぶ)か?」


 一方(いっぽう)のタカヤは汗(あせ)ひとつかかず呼吸(こきゅう)の乱(みだ)れも無(な)く、通報者(つうほうしゃ)をキョロキョロと探(さが)していますが見当(みあ)たりません。


「タ…タカヤがっ、走(はし)るのがっ、速(はや)すぎるからでしょ…っ!」


 ゼーゼー言(い)いながらショースケはタカヤをにらみます。


「ごめん、これでもゆっくり走(はし)ったんだけど…やっぱり途中(とちゅう)でおんぶした方(ほう)がよかったんじゃないか?」


 タカヤが大(おお)真面目(まじめ)に答(こた)えます。


「そんな恥(は)ずかしいことやってもらうわけないじゃん!」


 確(たし)かにタカヤは途中(とちゅう)でショースケを気遣(きづか)いおんぶしようかと提案(ていあん)してきたのですが、どれだけ疲(つか)れていてもそれはショースケのプライドが許(ゆる)しませんでした。


「うぅ…なんか移動(いどう)手段(しゅだん)考(かんが)えないと…」


 ショースケがもう一度(いちど)ベンチに突(つ)っ伏(ぷ)そうとしたとき


「モチャコルグリェブデポ」


 なにやら耳元(みみもと)で小(ちい)さな音(おと)が聞(き)こえました。


 顔(かお)を上(あ)げてよーく見(み)ると、そこには小指(こゆび)の爪先(つまさき)ほどの小(ちい)さな小(ちい)さなET(いーてぃー)が立(た)っていました。


 ショースケは驚(おどろ)いて叫(さけ)んで尻(しり)もちをつき勢(いきお)いよく後(あと)ずさりして、反対(はんたい)にタカヤはET(いーてぃー)の方(ほう)に急(いそ)いで駆(か)け寄(よ)り、目線(めせん)を合(あ)わせるため腰(こし)を屈(かが)めました。


「気(き)が付(つ)くのが遅(おく)れてしまってごめんなさい、宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)です。あなたが助(たす)けを必要(ひつよう)とされている方(かた)ですか?」


「メケメケプリグキョ」


「なるほど、お名前(なまえ)はモフォッフォさんとおっしゃるのですね」


 ショースケも会話(かいわ)に参加(さんか)しようとしますが、残念(ざんねん)ながら一生懸命(いっしょうけんめい)勉強(べんきょう)した宇宙(うちゅう)公用語(こうようご)では無(な)いようなので、バッグをガサガサ探(さぐ)って急(いそ)いでイヤホン型(がた)翻訳機(ほんやくき)を装着(そうちゃく)します。


「来(き)てくれてありがとう宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)さん」


 モフォッフォさんというらしいそのET(いーてぃー)は真(ま)っ黒(くろ)な体(からだ)に生(は)えたたくさんの指(ゆび)らしきものをピルピル揺(ゆ)らし、一(ひと)つだけの目(め)からポロポロ緑色(みどりいろ)の液体(えきたい)を流(なが)し始(はじ)めました。


「一緒(いっしょ)に観光(かんこう)に来(き)た弟(おとうと)と連絡(れんらく)が取(と)れないのです」


「それは大変(たいへん)ですね! いつから連絡(れんらく)が取(と)れないんですか?」


「地球(ちきゅう)の時間(じかん)で三(さん)十分(じゅっぷん)前(まえ)です」


 ショースケとタカヤは一瞬(いっしゅん)目(め)を合(あ)わせました。


 二人(ふたり)とも気持(きも)ちは同(おな)じでしょう。


「私(わたし)たちクユビロ星人(せいじん)は時間(じかん)の感(かん)じ方(かた)が地球(ちきゅう)生物(せいぶつ)よりも長(なが)いのです! 大体(だいたい)二(に)倍(ばい)に感(かん)じるのですよ大(だい)問題(もんだい)なのです!」


 それでも一(いち)時間(じかん)です、どうやらこのモフォッフォさんはかなり心配性(しんぱいしょう)なようです。


 しかし通報(つうほう)を受(う)けた以上(いじょう)、『連絡(れんらく)に気(き)づいてないだけなのでは』と言(い)って放置(ほうち)するわけにもいきません。


 とりあえず情報(じょうほう)を集(あつ)めてみることにしました。


「えっと…どの辺(あた)りにいるとか、なんとなくの場所(ばしょ)とかわかりませんか?」


ショースケが訪(たず)ねます。


「それが今日(きょう)は一日(いちにち)別行動(べつこうどう)をしていまして…どの辺(へん)にいるのかさっぱり見当(けんとう)がつきません。ほら、四十(よんじゅっ)分前(ぷんまえ)に来(き)た連絡(れんらく)もこの通(とお)りですし」


 そう言(い)ってなにやらうにょうにょ動(うご)く物体(ぶったい)…おそらく彼(かれ)らの星(ほし)では連絡(れんらく)手段(しゅだん)であろう何(なに)かを見(み)せられますが、ショースケには何(なに)を見(み)ればいいのかすらわかりません。


 おそらく場所(ばしょ)には全(まった)く関係(かんけい)ないことが書(か)かれているのでしょう。


「え、えーと…それで、弟(おとうと)さんということは…あなたと同(おな)じ見(み)た目(め)を…?」


「はい、もちろんクユビロ星人(せいじん)です! 私(わたし)より少(すこ)し小(ちい)さいですけど!」


ショースケはさすがにどこか遠(とお)くを見(み)ながら黙(だま)ってしまいました。


 この時(とき)目(め)木(き)町(ちょう)には宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)によって、壁状(かべじょう)の大(おお)きなバリアが張(は)られているため、特急(とっきゅう)こすもに乗(の)ってやって来(き)たET(いーてぃー)がこの町(まち)の外(そと)に出(で)ることはできないようになっています、が。


 それでも町(まち)一(ひと)つなのでかなり広(ひろ)いですし、探(さが)す相手(あいて)は小指(こゆび)の爪先(つめさき)より小(ちい)さいのです。


「わ、わかりました、捜索(そうさく)してみますね! もし弟(おとうと)さんから連絡(れんらく)が入(はい)りましたら私(わたし)たちにお知(し)らせください!」


 気(き)が遠(とお)くなってきたショースケの肩(かた)を支(ささ)えながら、タカヤがぎこちない笑顔(えがお)で答(こた)えます。


「ありがとうございます宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)さん! よろしくお願(ねが)いします!」


 モフォッフォさんの目(め)から流(なが)れていた液体(えきたい)は止(と)まり、その顔(かお)…多分(たぶん)顔(かお)であろう部位(ぶい)には笑顔(えがお)が戻(もど)りましたが、時計台(とけいだい)を降(お)りていく二人(ふたり)の顔(かお)は反対(はんたい)にどんより曇(くも)っていました。


さて、これからどうしましょう。



****



 時(とき)目(め)木(き)公園(こうえん)の遊具(ゆうぐ)の前(まえ)で、二人(ふたり)は途方(とほう)に暮(く)れていました。


 捜索(そうさく)するとは言(い)ったものの一体(いったい)どこから探(さが)したらいいのでしょう。


 その辺(へん)の人(ひと)に聞(き)き込(こ)み…はできません。


 何故(なぜ)ならET(いーてぃー)たちはこの町(まち)にやって来(く)る際(さい)に約束事(やくそくごと)として、地球(ちきゅう)にいる生物(せいぶつ)の九十九(きゅうじゅうきゅう)パーセント以上(いじょう)に認識(にんしき)されなくなる粉(こな)、『キラキラ粉(こ)』を使(つか)っています。


 地球(ちきゅう)の文明(ぶんめい)が発展(はってん)し、ET(いーてぃー)たちの存在(そんざい)に自分(じぶん)たちで気(き)が付(つ)くまで、ET(いーてぃー)や宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)の存在(そんざい)を今(いま)の地球(ちきゅう)生物(せいぶつ)に明(あ)かしてしまうことは第(だい)一級(いっきゅう)の禁止(きんし)事項(じこう)になっているからです。


 じゃあ観光(かんこう)に来(き)たET(いーてぃー)たちに聞(き)けば…ってそもそもそのET(いーてぃー)たちがどこにいるかわからないのでした。


「んー…よし! とりあえずあれ使(つか)ってみよう!」


 ショースケはカバンの中(なか)の荷物(にもつ)をポイポイ放(ほう)り出(だ)して、底(そこ)の方(ほう)からなにやらステッキのようなものを取(と)り出(だ)しました。


「ショースケそれ何(なん)だ?」


 タカヤも見(み)たことが無(な)いものです。


「よくぞ聞(き)いてくれました! これは地球(ちきゅう)外(がい)物質(ぶっしつ)探知機(たんちき)! 地球(ちきゅう)にはない物質(ぶっしつ)に反応(はんのう)して教(おし)えてくれるマシーンだよ。僕(ぼく)の最新(さいしん)の発明品(はつめいひん)さ!」


 ショースケは得意(とくい)げに見(み)せびらかします。


「二(に)メートルくらいまで伸(の)ばせるように作(つく)ってあるから高(たか)いところだって探(さが)せるよ! まあちょっと探知(たんち)の範囲(はんい)は狭(せま)いけど、何(なに)かヒントくらい見(み)つかるかなって」


「へー! すごいな、やっぱりショースケは天才(てんさい)だ」


「うへへへ、そうでしょそうでしょ」


 自信(じしん)満々(まんまん)にニヤニヤ笑(わら)いながらショースケは探知機(たんちき)の設定(せってい)を始(はじ)めました。


「えーっと、ポスエッグやバッジに反応(はんのう)したら困(こま)るから、僕(ぼく)たちの持(も)ち物(もの)には反応(はんのう)しないように設定(せってい)して…よし! 準備(じゅんび)完了(かんりょう)!」


「あ、ショースケちょっと待(ま)っ」


 タカヤが何(なに)かを言(い)いかけたのと同時(どうじ)に、ショースケは嬉(うれ)しそうに探知機(たんちき)のスイッチを入(い)れました。


 その瞬間(しゅんかん)。


 ビガビガビガガビビビビビビビビガガガビビ!


 探知機(たんちき)は狂(くる)ったように鳴(な)り始(はじ)め、タカヤに猛烈(もうれつ)な反応(はんのう)を示(しめ)します。


 そしてそのままボンボンと音(おと)を立(た)てながら、部品(ぶひん)がいくつも外(はず)れて壊(こわ)れてしまいました。


 ショースケは口(くち)をポカンと開(あ)けたまま呆然(ぼうぜん)としています。


 忘(わす)れていました、タカヤは規格外(きかくがい)に超(ちょう)強力(きょうりょく)な地球(ちきゅう)外(がい)物質(ぶっしつ)の塊(かたまり)だと。


「え、ええと…ごめん、気(き)づくのが遅(おそ)かった…」


 タカヤは気(き)まずそうに謝(あやま)りながらショースケの方(ほう)を見(み)てぎょっとしました。


 ショースケは目(め)に今(いま)にも零(こぼ)れ落(お)ちそうな涙(なみだ)を浮(う)かべてプルプル震(ふる)えています。


「まだ一回(いっかい)も使(つか)ったことなかったのにぃ…」


 大(おお)きな両目(りょうめ)から涙(なみだ)がこぼれ落(お)ちました。


「ただの伸(の)びる棒(ぼう)になっちゃったじゃんかぁ…」


「ご! ごめんショースケ泣(な)かないで! 俺(おれ)どうしたらいい⁉」


 タカヤがオロオロしながらハンカチを差(さ)し出(だ)します。


「…じゃあコスモピースの力(ちから)使(つか)ってよ」


 目(め)を真(ま)っ赤(か)にしたままむすっとした顔(かお)でショースケが詰(つ)め寄(よ)ると、タカヤはもう一度(いちど)ぎょっとして慌(あわ)てて目(め)線(せん)を逸(そ)らします。


「僕(ぼく)の発明品(はつめいひん)も壊(こわ)れちゃったし、もうモフォッフォさんの弟(おとうと)さんを探(さが)すにはそれしかないでしょ。それとも町中(まちじゅう)歩(ある)き回(まわ)って探(さが)すつもり?」


「そ、それはそうだけどさ…あんまり使(つか)うなって言(い)われてるし…」


 タカヤは視線(しせん)を右往左往(うおうさおう)させて困(こま)ってしまいました。


「あんまり、でしょ? 今(いま)は大事(だいじ)なときだもん、大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)!」


 ショースケは他人事(ひとごと)のように言(い)います。


「うぅ…叱(しか)られるときはショースケも一緒(いっしょ)にいてくれるか?」


「それはやだ、ライトさん怒(おこ)ったら怖(こわ)いもん」


 うだうだ言(い)って踏(ふ)ん切(ぎ)りがつかないタカヤにショースケは畳(たた)みかけます。


「あーあ、探知機(たんちき)作(つく)るの大変(たいへん)だったのになぁ…。いろいろ調(しら)べて素材(そざい)集(あつ)めてやっと完成(かんせい)したとこだったのに…」


「わ! わかったやるよ…」


 タカヤは少々(しょうしょう)人(ひと)が良(よ)すぎるため、良心(りょうしん)に訴(うった)えられると極端(きょくたん)に弱(よわ)いのでした。




「じゃあちょっと離(はな)れてて」


 二人(ふたり)は誰(だれ)かに見(み)られることがないよう、念(ねん)のためキラキラ粉(こ)を体(からだ)にかけます。


 タカヤは目(め)を閉(と)じて集中(しゅうちゅう)し始(はじ)めました。


「ねえねえ、具体(ぐたい)的(てき)にはどんな力(ちから)を使(つか)うの?」


 ショースケはずっと気(き)になっていたコスモピースの力(ちから)に目(め)を輝(かがや)かせて興味津々(きょうみしんしん)です。


「んー、モフォッフォさんたちクユビロ星人(せいじん)はどうも氷点下(ひょうてんか)くらい体温(たいおん)が低(ひく)いみたいなんだ。だからその温度帯(おんどたい)で、尚且(なおか)つ動(うご)いてるものを探(さが)そうと思(おも)ってる。今(いま)この町(まち)に旅行(りょこう)に来(き)てるクユビロ星人(せいじん)は二人(ふたり)だけだから、反応(はんのう)があったらおそらくそれが弟(おとうと)さんだ」


 そんなことまでできてしまうのかと、ショースケはもう羨(うらや)ましくて仕方(しかた)がありません。


 タカヤが見(み)ただけで体温(たいおん)までわかってしまうのも、走(はし)っても疲(つか)れないのも睡眠(すいみん)が必要(ひつよう)ないのも寒(さむ)さを感(かん)じないのも、はたまた初(はじ)めて聞(き)く言語(げんご)も理解(りかい)できてしまうのも、全てタカヤの体(からだ)の中(なか)に埋(う)め込(こ)まれているコスモピースという石(いし)の膨大(ぼうだい)なエネルギーによるものです。


 そしてその力(ちから)をさらに解放(かいほう)させることでもっとすごいことができるようになるとショースケはタカヤから聞(き)いており、自分(じぶん)がもしその力(ちから)を持(も)っていたら絶対(ぜったい)にタカヤみたいに出(だ)し惜(お)しみしたりしないのにと常日頃(つねひごろ)から思(おも)っておりました。


「それじゃあ、始(はじ)めるよ」


 目(め)を閉(と)じたまま、タカヤは小(ちい)さく息(いき)を吸(す)いました。


 するとタカヤの周(まわ)りにだけ強(つよ)い上昇(じょうしょう)気流(きりゅう)が発生(はっせい)し、髪(かみ)の毛(け)や服(ふく)を大(おお)きく揺(ゆ)らし始(はじ)めます。


 体(からだ)全体(ぜんたい)がまばゆいほどに輝(かがや)き、周(まわ)りの空気(くうき)がそれに共鳴(きょうめい)するようにチカチカと光(ひか)ります。


 まるで吸(す)い込(こ)まれてしまいそうなほど美(うつく)しい光景(こうけい)に、ショースケは息(いき)を飲(の)みました。


 しばらくすると光(ひか)りが収(おさ)まり風(かぜ)が止(や)んで、タカヤがゆっくりと目(め)を開(ひら)きます。


 するとその瞳(ひとみ)は先(さき)ほどまでの澄(す)んだ黒(くろ)い瞳(ひとみ)では無(な)く、赤(あか)と青(あお)の二(に)色(しょく)の星(ほし)が無数(むすう)に浮(う)かんだ宇宙(うちゅう)のように変(か)わっていました。


 ショースケはその様子(ようす)に少(すこ)し怖気(おじけ)づいてしまいましたが、なんとかタカヤに尋(たず)ねます。


   挿絵(By みてみん)


「ど、どう? なにかわかった?」


 タカヤは少(すこ)しぼんやりとした後(あと)、ハッと我(われ)に返(かえ)りショースケの方(ほう)を向(む)きました。


「あ、うん! 大体(だいたい)わかったと思(おも)う!」


 それを見(み)てショースケは少(すこ)しホッとしました。


 だって今(いま)のタカヤはまるで人間(にんげん)じゃないみたいですから。


「ここから結構(けっこう)離(はな)れた場所(ばしょ)にそれらしい温度(おんど)の反応(はんのう)を見(み)つけたんだけど…反応(はんのう)自体(じたい)はあまり動(うご)いてないのにどんどん距離(きょり)が離(はな)れていってるんだ」


「なんでだろ、乗(の)り物(もの)にでも乗(の)ってるのかな?」


「もうちょっと詳(くわ)しくわからないかやってみるよ」


 タカヤがもう一度(いちど)集中(しゅうちゅう)し始(はじ)めると、二人(ふたり)の頭(あたま)の中(なか)でピリピリと音(おと)が鳴(な)り始(はじ)めました。


「どうしました?」


 ポスエッグを手(て)に取(と)りショースケが応答(おうとう)すると


「宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)さん大変(たいへん)です! さっき弟(おとうと)から連絡(れんらく)があって!」


 モフォッフォさんです、ひどく慌(あわ)てています。


「一言(ひとこと)、助(たす)けてって送(おく)ってきたんです!」


「ショースケ!」


 タカヤが大(おお)きな声(こえ)で呼(よ)びかけます。


「さっきの反応(はんのう)の周(まわ)りの温度(おんど)も調(しら)べてみたんだけど、多分(たぶん)これ海(うみ)の上(うえ)だ! 弟(おとうと)さんは流(なが)されてるのかもしれない!」



****



「海(うみ)⁉ どうしようここからじゃ間(ま)に合(あ)わないかも!」


 慌(あわ)てるショースケの横(よこ)で、タカヤは大(おお)きく息(いき)を吸(す)いました。


 その息(いき)を強(つよ)く吐(は)き出(だ)したと同時(どうじ)にタカヤの体(からだ)が先(さき)ほどよりも一(いち)段階(だんかい)強(つよ)く光(ひか)り、より強(つよ)い上昇(じょうしょう)気流(きりゅう)が立(た)ち上(のぼ)ります。


 目(め)の中(なか)の宇宙(うちゅう)をさらに黒(くろ)く禍々(まがまが)しく輝(かがや)かせながら、タカヤはショースケの腕(うで)を掴(つか)みました。


「時間(じかん)がない! ごめんショースケ後(あと)で謝(あやま)るからちょっと我慢(がまん)してくれ!」


 そう言(い)ってショースケを引(ひ)っ張(ぱ)ってお腹(なか)周(まわ)りを抱(だ)きかかえると、タカヤは一直線(いっちょくせん)に空中(くうちゅう)へ浮(う)かび上(あ)がります。


 そしてそのまま、空(くう)を切(き)るような超(ちょう)スピードで海(うみ)へ向(む)かって飛(と)び始(はじ)めました。


 速度(そくど)はジェットコースターの比(ひ)ではありません。


 あまりの速(はや)さにショースケは怖(こわ)いと感(かん)じる余裕(よゆう)すらなく、目(め)を開(あ)けることもできません。


 そして何(なに)が起(お)こってるのかもよくわからないうちに、二人(ふたり)の体(からだ)は海(うみ)の上(うえ)をふわふわと浮(う)かんでいたのでした。


「いた! あそこだ!」


 タカヤが目(め)を向(む)けた先(さき)には小(ちい)さな葉(は)っぱが一(いち)枚(まい)浮(う)かんでいます。


 ショースケがよーく目(め)を凝(こ)らすと、確(たし)かにその上(うえ)にはゴマ粒(つぶ)のような小(ちい)さな真(ま)っ黒(くろ)な体(からだ)のET(いーてぃー)が見(み)えました。


 間違(まちが)いありません、モフォッフォさんの弟(おとうと)さんです。


「たすけてー…」


 弱弱(よわよわ)しい声(こえ)が聞(き)こえます。


 落(お)ちないように必死(ひっし)で葉(は)っぱをつかんでいたのでしょう、体力(たいりょく)もあまり残(のこ)っていないようです。


「タカヤ、もっと近(ちか)づいてくれる? 今(いま)の距離(きょり)じゃ届(とど)かない!」


「ごめん、これ以上(いじょう)は近(ちか)づけない!」


 タカヤはひどく焦(あせ)っています。


「俺(おれ)はいま体(からだ)を浮(う)かせるように周(まわ)りの空気(くうき)を巻(ま)き上(あ)げる力(ちから)を使(つか)ってるから、これ以上(いじょう)近(ちか)づいたら水(みず)を一緒(いっしょ)に巻(ま)き込(こ)んで波(なみ)を起(お)こしてしまう可能性(かのうせい)がある! そしたら弟(おとうと)さんは葉(は)っぱから振(ふ)り落(お)とされてしまうかもしれない!」


 ET(いーてぃー)までの距離(きょり)は大体(だいたい)三(さん)メートル。


 タカヤは必死(ひっし)に考(かんが)えました、何(なに)か使(つか)える力(ちから)はないか。


 コスモピースは無限(むげん)の可能(かのう)性(せい)を秘(ひ)めた石(いし)、まだ知(し)らない…使(つか)ったことがない力(ちから)だってたくさんあるはずです。


 でもそれをここで試(ため)すことは目(め)の前(まえ)のET(いーてぃー)を…ショースケを危険(きけん)にさらすことになります。


(どうする、どうしよう、でも…俺(おれ)がやらなくちゃ)


「タカヤ!」


 ハッと我(われ)に返(かえ)って声(こえ)の方(ほう)を向(む)くと、ショースケは壊(こわ)れた地球(ちきゅう)外(がい)生物(せいぶつ)探知機(たんちき)の棒(ぼう)を持(も)っていました。


「僕(ぼく)の足(あし)掴(つか)んでひっくり返(かえ)して! それで届(とど)くかもしれない!」


 タカヤは一瞬(いっしゅん)戸惑(とまど)いましたが、ショースケの意図(いと)を理解(りかい)すると


「わかった!」


 ショースケの両足(りょうあし)首(くび)を掴(つか)んで逆立(さかだ)ちのようにひっくり返(かえ)しました。


 海(うみ)の上(うえ)で宙(ちゅう)ぶらりんになりながら、ショースケは探知機(たんちき)だった棒(ぼう)を思(おも)い切(き)り伸(の)ばします。


 棒(ぼう)は二(に)メートルほど伸(の)びて、浮(う)かんでいる葉(は)っぱのすぐ近(ちか)くまで届(とど)きました。


「やった、届(とど)いた! さぁこれにつかまって!」


 ですが波(なみ)もタカヤの飛行(ひこう)もぴったりその場(ば)に止(とど)まっているわけではありません。


 棒(ぼう)も葉(は)っぱもゆらゆらと揺(ゆ)れて、ET(いーてぃー)は上手(うま)く捕(つか)まることができないようです。


「どうしよう…でもこれ以上(いじょう)できることが…うぇ、きもちわるぃ…」


 しばらくひっくり返(かえ)っているんですから、ショースケも頭(あたま)に血(ち)が上(のぼ)って限界(げんかい)です。


「ショースケ大丈夫(だいじょうぶ)か⁉ 一回(いっかい)引(ひ)き上(あ)げるぞ!」


「い、いや! このままやる!」


 頭(あたま)の気持(きも)ち悪(わる)さをこらえて、ショースケはまっすぐET(いーてぃー)を見(み)つめました。


 目(め)から緑色(みどりいろ)の涙(なみだ)をいっぱい流(なが)して、ブルブル震(ふる)えて、怖(こわ)くてたまらないのでしょう。


「大丈夫(だいじょうぶ)だよ」


 ショースケは今(いま)出(だ)せる一番(いちばん)優(やさ)しい声(こえ)で語(かた)りかけます。


「僕(ぼく)らが絶対(ぜったい)助(たす)けるから。だから、一緒(いっしょ)に頑張(がんば)ろう?」


 ET(いーてぃー)としっかり目(め)が合(あ)って、ショースケがにっこり笑(わら)ったその時(とき)。


 波(なみ)とタカヤの飛行(ひこう)の揺(ゆ)れが重(かさ)なり、葉(は)っぱと棒(ぼう)が触(ふ)れ合(あ)った一瞬(いっしゅん)。


「今(いま)だ!」


 ショースケが叫(さけ)ぶと同時(どうじ)にET(いーてぃー)は揺(ゆ)れる葉(は)っぱから手(て)を放(はな)し、棒(ぼう)の先端(せんたん)をしっかりと掴(つか)みました。


 そのままゆっくりと棒(ぼう)を縮(ちぢ)めると、ショースケは左手(ひだりて)で優(やさ)しくET(いーてぃー)を包(つつ)みこんで胸(むね)に引(ひ)き寄(よ)せます。


「迷子(まいご)の弟(おとうと)さん、無事(ぶじ)、保護(ほご)、しましたぁああえあえ…」


 宙(ちゅう)ぶらりんで限界(げんかい)を迎(むか)えたショースケを、タカヤは急(いそ)いで引(ひ)き上(あ)げ胸(むね)の前(まえ)で抱(だ)きかかえました。


「ありがとうショースケ、お疲(つか)れさま」


 タカヤは力(ちから)なく握(にぎ)られたショースケの左手(ひだりて)からET(いーてぃー)を預(あず)かると、来(き)た時(とき)とは比(くら)べ物(もの)にならないほどゆっくりゆっくり公園(こうえん)の方(ほう)へ飛(と)んでいきました。



****



 空(そら)はもう日(ひ)が傾(かたむ)き始(はじ)めており、あたりは少(すこ)し薄暗(うすぐら)くなってきました。


 無事(ぶじ)に出会(であ)えたモフォッフォさんと弟(おとうと)さんを手(て)を振(ふ)って見送(みおく)り、二人(ふたり)はゆっくり帰路(きろ)につきます。


「ショースケ体調(たいちょう)大丈夫(だいじょうぶ)か?」


 タカヤが不安(ふあん)そうに尋(たず)ねます。


「これぐらい大丈夫(だいじょうぶ)だよ、タカヤは心配性(しんぱいしょう)だな」


 ショースケはすでに足取(あしど)りも軽(かる)くピンピンしており、今(いま)だって次(つぎ)の発明(はつめい)に使(つか)えないかとその辺(へん)に落(お)ちている木(き)の枝(えだ)を物色(ぶっしょく)しておりました。


「今日(きょう)は本当(ほんとう)にありがとう、救助(きゅうじょ)が無事(ぶじ)成功(せいこう)したのはショースケのおかげだよ」


 タカヤが申(もう)し訳(わけ)なさそうに笑(わら)って言(い)います。


「で、でしょー? やっぱり僕(ぼく)ってすごいよねー!」


 ショースケはうへへと笑(わら)いながら照(て)れ隠(かく)しに足早(あしばや)に進(すす)み、枝(えだ)をさらに拾(ひろ)い集(あつ)めます。


「でもさ、コスモピースの力(ちから)って本当(ほんとう)にすごいね! あんなことまでできちゃうんだ!」


 嬉(うれ)しそうにショースケは続(つづ)けます。


「あれだけすごいんだもん! きっと僕(ぼく)たちすぐに上(うえ)の級(きゅう)に行(い)けると思(おも)わない?」


「あはは…そうかな」


「そうだよ! 絶対(ぜったい)そう!」


 大(おお)きな石(いし)や葉(は)っぱも拾(ひろ)ってカバンにしまっていくため、ショースケのカバンはもうパンパンです。


「まあタカヤの力(ちから)だけに頼(たよ)るわけにもいかないから、僕(ぼく)ももっと頑張(がんば)るけどさ」


 詰(つ)めこみ過(す)ぎたカバンの重(おも)みにふらつきながらショースケはタカヤの方(ほう)へ振(ふ)り返(かえ)りました。


「ねえタカヤ」


 沈(しず)んでゆく夕陽(ゆうひ)を背(せ)に、ショースケはニヤリと笑(わら)って見(み)せます。


「僕(ぼく)たち、絶対(ぜったい)一緒(いっしょ)に特級(とっきゅう)になろうね!」


「…うん、そうだな」


 それがひどく眩(まぶ)しくて、タカヤは少(すこ)し目(め)を細(ほそ)めました。



****



「ただいま」


 真(ま)っ暗(くら)な一軒家(いっけんや)の鍵(かぎ)を開(あ)けて、タカヤは部屋(へや)の明(あ)かりをつけます。


   挿絵(By みてみん)


「オカエリー タカヤ オカエリー」


 奥(おく)から白(しろ)くて丸(まる)っこい体(からだ)をしたロボットが、三本(さんぼん)の触覚(しょっかく)を揺(ゆ)らしながらタカヤを出迎(でむか)えました。


「ただいま、ツバサ。お留守番(るすばん)ごくろうさま」


「コレクライ ヘッチャラ ダヨ! アレ、タカヤ ナンカ ツカレテル」


 ツバサと呼(よ)ばれるロボットはタカヤの足元(あしもと)をくるくる回(まわ)ります。


「うん、やっぱり周(まわ)りに被害(ひがい)が出(で)ないように力(ちから)を抑(おさ)えて使(つか)うのは難(むずか)しいや。もっと勉強(べんきょう)して練習(れんしゅう)しないと」


「エー、タカヤ モウ ジュウブン ガンバッテル ジャナイ」


 ツバサは表情(ひょうじょう)は変(か)わらないものの不満(ふまん)そうです。


「あはは…まだまだだよ」


 タカヤは洗面台(せんめんだい)へ向(む)かい手洗(てあら)いうがいを済(す)ませてタオルで拭(ふ)くと、ツバサの頭(あたま)を撫(な)でました。


「ちょっと部屋(へや)に行(い)ってくるね」


 足早(あしばや)に階段(かいだん)を上(のぼ)り自分(じぶん)の部屋(へや)の扉(とびら)を開(あ)けて、タカヤはすぐに机(つくえ)に向(む)かいます。


(今日(きょう)はもっとできることあったな…風(かぜ)を起(お)こさずに飛(と)ぶ方法(ほうほう)を考(かんが)えて、物体(ぶったい)を浮(う)かせる方法(ほうほう)も探(さが)さないと…)


 文字(もじ)がびっちりと書(か)かれて真(ま)っ黒(くろ)になっているノートに、タカヤはさらに文字(もじ)を書(か)き込(こ)んでいきます。


 ふと、机(つくえ)の上(うえ)に置(お)いたままのバッジが目(め)に入(はい)りました。


 ショースケが胸(むね)につけて喜(よろこ)んでいたものとおそろいのバッジは、スタンドライトの灯(あか)りを反射(はんしゃ)して重(おも)く鈍(にぶ)く光(ひか)っています。


「…知(し)ったらショースケ、怒(おこ)るかな」


 裏(うら)にはもちろん、こう書(か)かれています。


『石越(いしごえ)タカヤ 特級(とっきゅう)』


   挿絵(By みてみん)


   挿絵(By みてみん)

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