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第一話 迷子のETを捜索せよ!

****


「はぁあー……(なん)(かい)()てもやっぱりかっこいい……!」


 ショースケは自分(じぶん)部屋(へや)のベッドに寝転(ねころ)んだまま、()(なか)のバッジを(あな)()くほど()つめていました。


「ショースケいつもそれ()てるよな」


 タカヤは(ちか)くで(ほん)()みながら、見慣(みな)れたその光景(こうけい)(なが)めています。


「だって(ぼく)がこれが()しくてどれだけ勉強(べんきょう)したと(おも)ってるの!」


 (まる)(ほし)(はい)ったようなデザインのそのバッジは宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)試験(しけん)合格(ごうかく)した(あかし)です。


 地球(ちきゅう)では()れない(めずら)しい金属(きんぞく)出来(でき)ており、その(なん)とも()えない(かがや)きがショースケはとってもお()()りなのでした。


「んー、でもやっぱりここだけは()()らないんだよね……」


 バッジを裏返(うらがえ)すと、そこにはしっかり『(きり)(たに)ショースケ (じゅっ)(きゅう)』と()かれています。


 (きゅう)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)としてのレベルを(あらわ)すものです。


 特級(とっきゅう)から(じゅっ)(きゅう)まであり、つまり(じゅっ)(きゅう)とは一番下(いちばんした)ということです。


(じゅっ)(きゅう)って! これじゃあ特級(とっきゅう)になれるまで何年(なんねん)かかるかわかんないじゃんか!」


 ショースケはほっぺを(ふく)らませてむすーっとバッジをにらみつけますが、当然(とうぜん)そこに()かれた文字(もじ)()わったりすることはありません。


(ぼく)はじーちゃんと一緒(いっしょ)にお仕事(しごと)がしたくて宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)になったのに……」


「ショースケのおじいさん特級(とっきゅう)だもんな」


 タカヤは苦笑(にがわら)いを()かべながらショースケをなだめます。


「タカヤだって(ぼく)(おな)(じゅっ)(きゅう)でしょ。もっと(うえ)になりたくないの?」


「うーん……ショースケが(うえ)になりたいなら協力(きょうりょく)するよ」


 (すこ)(かんが)えて、タカヤはそう(こた)えます。


 このタカヤの向上心(こうじょうしん)()さがショースケの(なや)みの(ひと)つです。


 宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)基本(きほん)(てき)()められた二人(ふたり)(ぐみ)、コンビで行動(こうどう)しなければなりません。


 タカヤとショースケはこのコンビですので、何事(なにごと)二人(ふたり)頑張(がんば)っていく必要(ひつよう)があります。


 (うえ)(きゅう)になればなるほど()ける(ほし)()けられる依頼(いらい)()えていくのに……(まった)くタカヤには(こま)ったものだと(あたま)(なや)ませているのです。


「うー……とりあえず頑張(がんば)るしかないかぁ」


 ベッドから()()がって(あたま)をプルプル()り、ショースケはバッジを(むね)()けます。


 そしてその姿(すがた)(かがみ)()て、またニマニマと(うれ)しそうにするのでした。


「あれ、タカヤはバッジ()けないの?」


「うん。()けなきゃいけないわけじゃないから(いえ)()いてきたよ」


「ふーん、(ぼく)タカヤがバッジ()けてるとこ()たことないや」


 (ぼく)はこんなに()けたくてたまらないのに(へん)なのと(おも)いながら、ショースケは仕事(しごと)確認(かくにん)(はじ)めることにしました。


 お()()りの(あお)椅子(いす)(こし)かけて、(つくえ)(うえ)()いてあるタブレット端末(たんまつ)()をかざし(なに)やら入力(にゅうりょく)すると、空中(くうちゅう)にいくつも青白(あおじろ)画面(がめん)()かび()がります。


「すごいな、これもショースケが(つく)ったのか?」


 ショースケは発明(はつめい)趣味(しゅみ)で、(なん)かと(つく)ったものをタカヤに()せて自慢(じまん)しています。


(ぼく)(つく)った、って()いたいところだけど、さすがの(ぼく)でもまだここまでは(つく)れないや。これはじーちゃんが(つく)ったのをもらったの」


 画面(がめん)操作(そうさ)をサラサラと(つづ)けて(なに)かないかと隅々(すみずみ)まで確認(かくにん)しますが、仕事(しごと)依頼(いらい)(ひと)つも(はい)っていません。


 二人(ふたり)仕事(しごと)がないということは、先日(せんじつ)この(まち)(おとず)れたET(いーてぃー)たちは問題(もんだい)なく(たの)しい観光(かんこう)旅行(りょこう)をしているということです。


 そもそもお仕事(しごと)依頼(いらい)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)から支給(しきゅう)されているたまご(がた)道具(どうぐ)『ポスエッグ』を(つう)じて脳内(のうない)直接(ちょくせつ)(おく)られてくるようになっているため、いちいち確認(かくにん)する必要(ひつよう)もありません。


 もしかしたら手違(てちが)いで連絡(れんらく)()てないだけかもしれない、なんて(あわ)期待(きたい)ははかなくも(くだ)()ったのでした。


「まあ、(おれ)たちの仕事(しごと)()いに()したことはないから」


 タカヤは(わら)ってそう()いますが、(はや)(きゅう)()げたいショースケには(だい)問題(もんだい)です。


 なんせ宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)のお仕事(しごと)歩合制(ぶあいせい)


 つまり活躍(かつやく)すればするほどお給料(きゅうりょう)(きゅう)()がります。


 でもタカヤの()(とお)問題(もんだい)なんて()こらない(ほう)がいいに()まってるし……


 でもお仕事(しごと)はしたいし……ショースケは(あたま)(かか)えてうんうん(なや)んでしまいました。


 その(とき)


 二人(ふたり)(あたま)(なか)にピリピリと(おと)()りました。


 (みみ)ではないところから(おと)()こえるという経験(けいけん)はなんせ(はじ)めてですので、得体(えたい)のしれない気持(きも)(わる)さからショースケがオロオロしていると、タカヤが冷静(れいせい)(ちか)くに()いてあった(あか)(あお)のポスエッグを()()り、(あお)(ほう)をショースケに(わた)してくれました。


挿絵(By みてみん)


『タカヤ隊員(たいいん)、ショースケ隊員(たいいん)通報(つうほう)(はい)りました。場所(ばしょ)(とき)()()(えき)至急(しきゅう)現場(げんば)()かってください!』


了解(りょうかい)しました!」


 タカヤがしっかり返事(へんじ)をすると、すぐに本部(ほんぶ)からの通信(つうしん)()れてしまいました。


「ショースケ()くぞ! (はし)れるか?」


 タカヤは()れた()つきでポスエッグを(ちい)さくしてズボンのポケットに()れると、緊張(きんちょう)(あし)(ふる)わせているショースケに()()()します。


「と、当然(とうぜん)! こんなの武者震(むしゃぶる)いだよ!」


 ショースケは自分(じぶん)(ふと)ももを(つよ)めに一発(いっぱつ)(たた)いて(ふる)えを()めると、()()された()()(はら)って()()がりました。


「さあ、()こう! (ぼく)らの初仕事(はつしごと)だ!」



****



 時刻(じこく)午後(ごご)一時(いちじ)


 宇宙(うちゅう)鉄道(てつどう)(とき)()()(えき)、この(まち)(てき)()うと(とき)()()公園(こうえん)時計台(とけいだい)(うえ)で、ショースケはベンチに()()して(たき)のような(あせ)をかいていました。


 いくらショースケの(いえ)から(はし)って()られる距離(きょり)とはいえ、時計台(とけいだい)(やま)(うえ)


 一気(いっき)(はし)ってきたら運動(うんどう)苦手(にがて)なショースケはこうなるでしょう。


大丈夫(だいじょうぶ)か?」


 一方(いっぽう)のタカヤは(あせ)ひとつかかず呼吸(こきゅう)(みだ)れも()く、通報者(つうほうしゃ)をキョロキョロと(さが)していますが見当(みあ)たりません。


「タ……タカヤがっ、(はし)るのがっ、(はや)すぎるからでしょ……っ!」


 ゼーゼー()いながらショースケはタカヤをにらみます。


「ごめん、これでもゆっくり(はし)ったんだけど……やっぱり途中(とちゅう)でおんぶした(ほう)がよかったんじゃないか?」


 タカヤが(おお)真面目(まじめ)(こた)えます。


「そんな()ずかしいことやってもらうわけないじゃん!」


 (たし)かにタカヤは途中(とちゅう)でショースケを気遣(きづか)いおんぶしようかと提案(ていあん)してきたのですが、どれだけ(つか)れていてもそれはショースケのプライドが(ゆる)しませんでした。


「うぅ……なんか移動(いどう)手段(しゅだん)(かんが)えないと……」


 ショースケがもう一度(いちど)ベンチに()()そうとしたとき


「モチャコルグリェブデポ」


 なにやら耳元(みみもと)(ちい)さな(おと)()こえました。


 (かお)()げてよーく()ると、そこには小指(こゆび)爪先(つまさき)ほどの(ちい)さな(ちい)さなET(いーてぃー)()っていました。


 ショースケは(おどろ)いて(さけ)んで(しり)もちをつき(いきお)いよく(あと)ずさりして、反対(はんたい)にタカヤはET(いーてぃー)(ほう)(いそ)いで()()り、目線(めせん)()わせるため(こし)(かが)めました。


()()くのが(おく)れてしまってごめんなさい、宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)です。あなたが(たす)けを必要(ひつよう)とされている(かた)ですか?」


「メケメケプリグキョ」


「なるほど、お名前(なまえ)はモフォッフォさんとおっしゃるのですね」


 ショースケも会話(かいわ)参加(さんか)しようとしますが、残念(ざんねん)ながら一生懸命(いっしょうけんめい)勉強(べんきょう)した宇宙(うちゅう)公用語(こうようご)では()いようなので、バッグをガサガサ(さぐ)って(いそ)いでイヤホン(がた)翻訳機(ほんやくき)装着(そうちゃく)します。


()てくれてありがとう宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)さん」


 モフォッフォさんというらしいそのET(いーてぃー)()(くろ)(からだ)()えたたくさんの(ゆび)らしきものをピルピル()らし、(ひと)つだけの()からポロポロ緑色(みどりいろ)液体(えきたい)(なが)(はじ)めました。


一緒(いっしょ)観光(かんこう)()(おとうと)連絡(れんらく)()れないのです」


「それは大変(たいへん)ですね! いつから連絡(れんらく)()れないんですか?」


地球(ちきゅう)時間(じかん)(さん)十分(じゅっぷん)(まえ)です」


 ショースケとタカヤは一瞬(いっしゅん)()()わせました。


 二人(ふたり)とも気持(きも)ちは(おな)じでしょう。


(わたし)たちクユビロ星人(せいじん)時間(じかん)(かん)(かた)地球(ちきゅう)生物(せいぶつ)よりも(なが)いのです! 大体(だいたい)()(ばい)(かん)じるのですよ(だい)問題(もんだい)なのです!」


 それでも(いち)時間(じかん)です、どうやらこのモフォッフォさんはかなり心配性(しんぱいしょう)なようです。


 しかし通報(つうほう)()けた以上(いじょう)、『連絡(れんらく)()づいてないだけなのでは』と()って放置(ほうち)するわけにもいきません。


 とりあえず情報(じょうほう)(あつ)めてみることにしました。


「えっと……どの(あた)りにいるとか、なんとなくの場所(ばしょ)とかわかりませんか?」


ショースケが(たず)ねます。


「それが今日(きょう)一日(いちにち)別行動(べつこうどう)をしていまして……どの(へん)にいるのかさっぱり見当(けんとう)がつきません。ほら、四十(よんじゅっ)分前(ぷんまえ)()連絡(れんらく)もこの(とお)りですし」


 そう()ってなにやらうにょうにょ(うご)物体(ぶったい)……おそらく(かれ)らの(ほし)では連絡(れんらく)手段(しゅだん)であろう(なに)かを()せられますが、ショースケには(なに)()ればいいのかすらわかりません。


 おそらく場所(ばしょ)には(まった)関係(かんけい)ないことが()かれているのでしょう。


「え、えーと……それで、(おとうと)さんということは……あなたと(おな)()()を……?」


「はい、もちろんクユビロ星人(せいじん)です! (わたし)より(すこ)(ちい)さいですけど!」


ショースケはさすがにどこか(とお)くを()ながら(だま)ってしまいました。


 この(とき)()()(ちょう)には宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)によって(おお)きな結界(けっかい)()られているため、特急(とっきゅう)こすもに()ってやって()ET(いーてぃー)がこの(まち)(そと)()ることはできないようになっています、が。


 それでも(まち)(ひと)つなのでかなり(ひろ)いですし、(さが)相手(あいて)小指(こゆび)爪先(つめさき)より(ちい)さいのです。


「わ、わかりました、捜索(そうさく)してみますね! もし(おとうと)さんから連絡(れんらく)(はい)りましたら(わたし)たちにお()らせください!」


 ()(とお)くなってきたショースケの(かた)(ささ)えながら、タカヤがぎこちない笑顔(えがお)(こた)えます。


「ありがとうございます宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)さん! よろしくお(ねが)いします!」


 モフォッフォさんの()から(なが)れていた液体(えきたい)()まり、その(かお)……多分(たぶん)(かお)であろう部位(ぶい)には笑顔(えがお)(もど)りましたが、時計台(とけいだい)()りていく二人(ふたり)(かお)反対(はんたい)にどんより(くも)っていました。


さて、これからどうしましょう。



****



 (とき)()()公園(こうえん)遊具(ゆうぐ)(まえ)で、二人(ふたり)途方(とほう)()れていました。


 捜索(そうさく)するとは()ったものの一体(いったい)どこから(さが)したらいいのでしょう。


 その(へん)(ひと)()()み……はできません。


 何故(なぜ)ならET(いーてぃー)たちはこの(まち)にやって()(さい)約束事(やくそくごと)として、地球(ちきゅう)にいる生物(せいぶつ)九十九(きゅうじゅうきゅう)パーセント以上(いじょう)認識(にんしき)されなくなる(こな)、『キラキラ()』を使(つか)っています。


 地球(ちきゅう)文明(ぶんめい)発展(はってん)し、ET(いーてぃー)たちの存在(そんざい)自分(じぶん)たちで()()くまで、ET(いーてぃー)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)存在(そんざい)(いま)地球(ちきゅう)生物(せいぶつ)()かしてしまうことは(だい)一級(いっきゅう)禁止(きんし)事項(じこう)になっているからです。


 じゃあ観光(かんこう)()ET(いーてぃー)たちに()けば……ってそもそもそのET(いーてぃー)たちがどこにいるかわからないのでした。


「んー……よし! とりあえずあれ使(つか)ってみよう!」


 ショースケはカバンの(なか)荷物(にもつ)をポイポイ(ほう)()して、(そこ)(ほう)からなにやらステッキのようなものを()()しました。


「ショースケそれ(なん)だ?」


 タカヤも()たことが()いものです。


「よくぞ()いてくれました! これは地球(ちきゅう)(がい)物質(ぶっしつ)探知機(たんちき)! 地球(ちきゅう)にはない物質(ぶっしつ)反応(はんのう)して(おし)えてくれるマシーンだよ。(ぼく)最新(さいしん)発明品(はつめいひん)さ!」


 ショースケは得意(とくい)げに()せびらかします。


()メートルくらいまで()ばせるように(つく)ってあるから(たか)いところだって(さが)せるよ! まあちょっと探知(たんち)範囲(はんい)(せま)いけど、(なに)かヒントくらい()つかるかなって」


「へー! すごいな、やっぱりショースケは天才(てんさい)だ」


「うへへへ、そうでしょそうでしょ」


 自信(じしん)満々(まんまん)にニヤニヤ(わら)いながらショースケは探知機(たんちき)設定(せってい)(はじ)めました。


「えーっと、ポスエッグやバッジに反応(はんのう)したら(こま)るから、(ぼく)たちの()(もの)には反応(はんのう)しないように設定(せってい)して……よし! 準備(じゅんび)完了(かんりょう)!」


「あ、ショースケちょっと()っ」


 タカヤが(なに)かを()いかけたのと同時(どうじ)に、ショースケは(うれ)しそうに探知機(たんちき)のスイッチを()れました。


 その瞬間(しゅんかん)


 ビガビガビガガビビビビビビビビガガガビビ!


 探知機(たんちき)(くる)ったように()(はじ)め、タカヤに猛烈(もうれつ)反応(はんのう)(しめ)します。


 そしてそのままボンボンと(おと)()てながら、部品(ぶひん)がいくつも(はず)れて(こわ)れてしまいました。


 ショースケは(くち)をポカンと()けたまま呆然(ぼうぜん)としています。


 (わす)れていました、タカヤは規格外(きかくがい)(ちょう)強力(きょうりょく)地球(ちきゅう)(がい)物質(ぶっしつ)(かたまり)だと。


「え、ええと……ごめん、()づくのが(おそ)かった……」


 タカヤは()まずそうに(あやま)りながらショースケの(ほう)()てぎょっとしました。


 ショースケは()(いま)にも(こぼ)()ちそうな(なみだ)()かべてプルプル(ふる)えています。


「まだ一回(いっかい)使(つか)ったことなかったのにぃ……」


 (おお)きな両目(りょうめ)から(なみだ)がこぼれ()ちました。


「ただの()びる(ぼう)になっちゃったじゃんかぁ……」


「ご! ごめんショースケ()かないで! (おれ)どうしたらいい⁉」


 タカヤがオロオロしながらハンカチを()()します。


「……じゃあコスモピースの(ちから)使(つか)ってよ」


 ()()()にしたままむすっとした(かお)でショースケが()()ると、タカヤはもう一度(いちど)ぎょっとして(あわ)てて()(せん)()らします。


(ぼく)発明品(はつめいひん)(こわ)れちゃったし、もうモフォッフォさんの(おとうと)さんを(さが)すにはそれしかないでしょ。それとも町中(まちじゅう)(ある)(まわ)って(さが)すつもり?」


「そ、それはそうだけどさ……あんまり使(つか)うなって()われてるし……」


 タカヤは視線(しせん)右往左往(うおうさおう)させて(こま)ってしまいました。


「あんまり、でしょ? (いま)大事(だいじ)なときだもん、大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)!」


 ショースケは他人事(ひとごと)のように()います。


「うぅ……(しか)られるときはショースケも一緒(いっしょ)にいてくれるか?」


「それはやだ、ライトさん(おこ)ったら(こわ)いもん」


 うだうだ()って()()りがつかないタカヤにショースケは(たた)みかけます。


「あーあ、探知機(たんちき)(つく)るの大変(たいへん)だったのになぁ……。いろいろ調(しら)べて素材(そざい)(あつ)めてやっと完成(かんせい)したとこだったのに……」


「わ! わかったやるよ……」


 タカヤは少々(しょうしょう)(ひと)()すぎるため、良心(りょうしん)(うった)えられると極端(きょくたん)(よわ)いのでした。




「じゃあちょっと(はな)れてて」


 二人(ふたり)(だれ)かに()られることがないよう、(ねん)のためキラキラ()(からだ)にかけます。


 タカヤは()()じて集中(しゅうちゅう)(はじ)めました。


「ねえねえ、具体(ぐたい)(てき)にはどんな(ちから)使(つか)うの?」


 ショースケはずっと()になっていたコスモピースの(ちから)()(かがや)かせて興味津々(きょうみしんしん)です。


「んー、モフォッフォさんたちクユビロ星人(せいじん)はどうも氷点下(ひょうてんか)くらい体温(たいおん)(ひく)いみたいなんだ。だからその温度帯(おんどたい)で、尚且(なおか)(うご)いてるものを(さが)そうと(おも)ってる。(いま)この(まち)旅行(りょこう)()てるクユビロ星人(せいじん)二人(ふたり)だけだから、反応(はんのう)があったらおそらくそれが(おとうと)さんだ」


 そんなことまでできてしまうのかと、ショースケはもう(うらや)ましくて仕方(しかた)がありません。


 タカヤが()ただけで体温(たいおん)までわかってしまうのも、(はし)っても(つか)れないのも睡眠(すいみん)必要(ひつよう)ないのも(さむ)さを(かん)じないのも、はたまた(はじ)めて()言語(げんご)理解(りかい)できてしまうのも、全てタカヤの(からだ)(なか)()()まれているコスモピースという(いし)膨大(ぼうだい)なエネルギーによるものです。


 そしてその(ちから)をさらに解放(かいほう)させることでもっとすごいことができるようになるとショースケはタカヤから()いており、自分(じぶん)がもしその(ちから)()っていたら絶対(ぜったい)にタカヤみたいに()()しみしたりしないのにと常日頃(つねひごろ)から(おも)っておりました。


「それじゃあ、(はじ)めるよ」


 ()()じたまま、タカヤは(ちい)さく(いき)()いました。


 するとタカヤの(まわ)りにだけ(つよ)上昇(じょうしょう)気流(きりゅう)発生(はっせい)し、(かみ)()(ふく)(おお)きく()らし(はじ)めます。


 (からだ)全体(ぜんたい)がまばゆいほどに(かがや)き、(まわ)りの空気(くうき)がそれに共鳴(きょうめい)するようにチカチカと(ひか)ります。


 まるで()()まれてしまいそうなほど(うつく)しい光景(こうけい)に、ショースケは(いき)()みました。


 しばらくすると(ひか)りが(おさ)まり(かぜ)()んで、タカヤがゆっくりと()(ひら)きます。


 するとその(ひとみ)(さき)ほどまでの()んだ(くろ)(ひとみ)では()く、(あか)(あお)()(しょく)(ほし)無数(むすう)()かんだ宇宙(うちゅう)のように()わっていました。


 ショースケはその様子(ようす)(すこ)怖気(おじけ)づいてしまいましたが、なんとかタカヤに(たず)ねます。


挿絵(By みてみん)


「ど、どう? なにかわかった?」


 タカヤは(すこ)しぼんやりとした(あと)、ハッと(われ)(かえ)りショースケの(ほう)()きました。


「あ、うん! 大体(だいたい)わかったと(おも)う!」


 それを()てショースケは(すこ)しホッとしました。


 だって(いま)のタカヤはまるで人間(にんげん)じゃないみたいですから。


「ここから結構(けっこう)(はな)れた場所(ばしょ)にそれらしい温度(おんど)反応(はんのう)()つけたんだけど……反応(はんのう)自体(じたい)はあまり(うご)いてないのにどんどん距離(きょり)(はな)れていってるんだ」


「なんでだろ、()(もの)にでも()ってるのかな?」


「もうちょっと(くわ)しくわからないかやってみるよ」


 タカヤがもう一度(いちど)集中(しゅうちゅう)(はじ)めると、二人(ふたり)(あたま)(なか)でピリピリと(おと)()(はじ)めました。


「どうしました?」


 ポスエッグを()()りショースケが応答(おうとう)すると


宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)さん大変(たいへん)です! さっき(おとうと)から連絡(れんらく)があって!」


 モフォッフォさんです、ひどく(あわ)てています。


一言(ひとこと)(たす)けてって(おく)ってきたんです!」


「ショースケ!」


 タカヤが(おお)きな(こえ)()びかけます。


「さっきの反応(はんのう)(まわ)りの温度(おんど)調(しら)べてみたんだけど、多分(たぶん)これ(うみ)(うえ)だ! (おとうと)さんは(なが)されてるのかもしれない!」



****



(うみ)⁉ どうしようここからじゃ()()わないかも!」


 (あわ)てるショースケの(よこ)で、タカヤは(おお)きく(いき)()いました。


 その(いき)(つよ)()()したと同時(どうじ)にタカヤの(からだ)(さき)ほどよりも(いち)段階(だんかい)(つよ)(ひか)り、より(つよ)上昇(じょうしょう)気流(きりゅう)()(のぼ)ります。


 ()(なか)宇宙(うちゅう)をさらに(くろ)禍々(まがまが)しく(かがや)かせながら、タカヤはショースケの(うで)(つか)みました。


時間(じかん)がない! ごめんショースケ(あと)(あやま)るからちょっと我慢(がまん)してくれ!」


 そう()ってショースケを()()ってお(なか)(まわ)りを()きかかえると、タカヤは一直線(いっちょくせん)空中(くうちゅう)()かび()がります。


 そしてそのまま、(くう)()るような(ちょう)スピードで(うみ)()かって()(はじ)めました。


 速度(そくど)はジェットコースターの()ではありません。


 あまりの(はや)さにショースケは(こわ)いと(かん)じる余裕(よゆう)すらなく、()()けることもできません。


 そして(なに)()こってるのかもよくわからないうちに、二人(ふたり)(からだ)(うみ)(うえ)をふわふわと()かんでいたのでした。


「いた! あそこだ!」


 タカヤが()()けた(さき)には(ちい)さな()っぱが(いち)(まい)()かんでいます。


 ショースケがよーく()()らすと、(たし)かにその(うえ)にはゴマ(つぶ)のような(ちい)さな()(くろ)(からだ)ET(いーてぃー)()えました。


 間違(まちが)いありません、モフォッフォさんの(おとうと)さんです。


「たすけてー……」


 弱弱(よわよわ)しい(こえ)()こえます。


 ()ちないように必死(ひっし)()っぱをつかんでいたのでしょう、体力(たいりょく)もあまり(のこ)っていないようです。


「タカヤ、もっと(ちか)づいてくれる? (いま)距離(きょり)じゃ(とど)かない!」


「ごめん、これ以上(いじょう)(ちか)づけない!」


 タカヤはひどく(あせ)っています。


(おれ)はいま(からだ)()かせるように(まわ)りの空気(くうき)()()げる(ちから)使(つか)ってるから、これ以上(いじょう)(ちか)づいたら(みず)一緒(いっしょ)()()んで(なみ)()こしてしまう可能性(かのうせい)がある! そしたら(おとうと)さんは()っぱから()()とされてしまうかもしれない!」


 ET(いーてぃー)までの距離(きょり)大体(だいたい)(さん)メートル。


 タカヤは必死(ひっし)(かんが)えました、(なに)使(つか)える(ちから)はないか。


 コスモピースは無限(むげん)可能(かのう)(せい)()めた(いし)、まだ()らない……使(つか)ったことがない(ちから)だってたくさんあるはずです。


 でもそれをここで(ため)すことは()(まえ)ET(いーてぃー)を……ショースケを危険(きけん)にさらすことになります。


(どうする、どうしよう、でも……(おれ)がやらなくちゃ)


「タカヤ!」


 ハッと(われ)(かえ)って(こえ)(ほう)()くと、ショースケは(こわ)れた地球(ちきゅう)(がい)生物(せいぶつ)探知機(たんちき)(ぼう)()っていました。


(ぼく)(あし)(つか)んでひっくり(かえ)して! それで(とど)くかもしれない!」


 タカヤは一瞬(いっしゅん)戸惑(とまど)いましたが、ショースケの意図(いと)理解(りかい)すると


「わかった!」


 ショースケの両足(りょうあし)(くび)(つか)んで逆立(さかだ)ちのようにひっくり(かえ)しました。


 (うみ)(うえ)(ちゅう)ぶらりんになりながら、ショースケは探知機(たんちき)だった(ぼう)(おも)()()ばします。


 (ぼう)()メートルほど()びて、()かんでいる()っぱのすぐ(ちか)くまで(とど)きました。


「やった、(とど)いた! さぁこれにつかまって!」


 ですが(なみ)もタカヤの飛行(ひこう)もぴったりその()(とど)まっているわけではありません。


 (ぼう)()っぱもゆらゆらと()れて、ET(いーてぃー)上手(うま)(つか)まることができないようです。


「どうしよう……でもこれ以上(いじょう)できることが……うぇ、きもちわるぃ……」


 しばらくひっくり(かえ)っているんですから、ショースケも(あたま)()(のぼ)って限界(げんかい)です。


「ショースケ大丈夫(だいじょうぶ)か⁉ 一回(いっかい)()()げるぞ!」


「い、いや! このままやる!」


 (あたま)気持(きも)(わる)さをこらえて、ショースケはまっすぐET(いーてぃー)()つめました。


 ()から緑色(みどりいろ)(なみだ)をいっぱい(なが)して、ブルブル(ふる)えて、(こわ)くてたまらないのでしょう。


大丈夫(だいじょうぶ)だよ」


 ショースケは(いま)()せる一番(いちばん)(やさ)しい(こえ)(かた)りかけます。


(ぼく)らが絶対(ぜったい)(たす)けるから。だから、一緒(いっしょ)頑張(がんば)ろう?」


 ET(いーてぃー)としっかり()()って、ショースケがにっこり(わら)ったその(とき)


 (なみ)とタカヤの飛行(ひこう)()れが(かさ)なり、()っぱと(ぼう)()()った一瞬(いっしゅん)


(いま)だ!」


 ショースケが(さけ)ぶと同時(どうじ)ET(いーてぃー)()れる()っぱから()(はな)し、(ぼう)先端(せんたん)をしっかりと(つか)みました。


 そのままゆっくりと(ぼう)(ちぢ)めると、ショースケは左手(ひだりて)(やさ)しくET(いーてぃー)(つつ)みこんで(むね)()()せます。


迷子(まいご)(おとうと)さん、無事(ぶじ)保護(ほご)、しましたぁああえあえ……」


 (ちゅう)ぶらりんで限界(げんかい)(むか)えたショースケを、タカヤは(いそ)いで()()(むね)(まえ)()きかかえました。


「ありがとうショースケ、お(つか)れさま」


 タカヤは(ちから)なく(にぎ)られたショースケの左手(ひだりて)からET(いーてぃー)(あず)かると、()(とき)とは(くら)(もの)にならないほどゆっくりゆっくり公園(こうえん)(ほう)()んでいきました。



****



 (そら)はもう()(かたむ)(はじ)めており、あたりは(すこ)薄暗(うすぐら)くなってきました。


 無事(ぶじ)出会(であ)えたモフォッフォさんと(おとうと)さんを()()って見送(みおく)り、二人(ふたり)はゆっくり帰路(きろ)につきます。


「ショースケ体調(たいちょう)大丈夫(だいじょうぶ)か?」


 タカヤが不安(ふあん)そうに(たず)ねます。


「これぐらい大丈夫(だいじょうぶ)だよ、タカヤは心配性(しんぱいしょう)だな」


 ショースケはすでに足取(あしど)りも(かる)くピンピンしており、(いま)だって(つぎ)発明(はつめい)使(つか)えないかとその(へん)()ちている()(えだ)物色(ぶっしょく)しておりました。


今日(きょう)本当(ほんとう)にありがとう、救助(きゅうじょ)無事(ぶじ)成功(せいこう)したのはショースケのおかげだよ」


 タカヤが(もう)(わけ)なさそうに(わら)って()います。


「で、でしょー? やっぱり(ぼく)ってすごいよねー!」


 ショースケはうへへと(わら)いながら()(かく)しに足早(あしばや)(すす)み、(えだ)をさらに(ひろ)(あつ)めます。


「でもさ、コスモピースの(ちから)って本当(ほんとう)にすごいね! あんなことまでできちゃうんだ!」


 (うれ)しそうにショースケは(つづ)けます。


「あれだけすごいんだもん! きっと(ぼく)たちすぐに(うえ)(きゅう)()けると(おも)わない?」


「あはは……そうかな」


「そうだよ! 絶対(ぜったい)そう!」


 (おお)きな(いし)()っぱも(ひろ)ってカバンにしまっていくため、ショースケのカバンはもうパンパンです。


「まあタカヤの(ちから)だけに(たよ)るわけにもいかないから、(ぼく)ももっと頑張(がんば)るけどさ」


 ()めこみ()ぎたカバンの(おも)みにふらつきながらショースケはタカヤの(ほう)()(かえ)りました。


「ねえタカヤ」


 (しず)んでゆく夕陽(ゆうひ)()に、ショースケはニヤリと(わら)って()せます。


(ぼく)たち、絶対(ぜったい)一緒(いっしょ)特級(とっきゅう)になろうね!」


「……うん、そうだな」


 それがひどく(まぶ)しくて、タカヤは(すこ)()(ほそ)めました。



****



「ただいま」


 ()(くら)一軒家(いっけんや)(かぎ)()けて、タカヤは部屋(へや)()かりをつけます。


挿絵(By みてみん)


「オカエリー タカヤ オカエリー」


 (おく)から(しろ)くて(まる)っこい(からだ)をしたロボットが、三本(さんぼん)触覚(しょっかく)()らしながらタカヤを出迎(でむか)えました。


「ただいま、ツバサ。お留守番(るすばん)ごくろうさま」


「コレクライ ヘッチャラ ダヨ! アレ、タカヤ ナンカ ツカレテル」


 ツバサと()ばれるロボットはタカヤの足元(あしもと)をくるくる(まわ)ります。


「うん、やっぱり(まわ)りに被害(ひがい)()ないように(ちから)(おさ)えて使(つか)うのは(むずか)しいや。もっと勉強(べんきょう)して練習(れんしゅう)しないと」


「エー、タカヤ モウ ジュウブン ガンバッテル ジャナイ」


 ツバサは表情(ひょうじょう)()わらないものの不満(ふまん)そうです。


「あはは……まだまだだよ」


 タカヤは洗面台(せんめんだい)()かい手洗(てあら)いうがいを()ませてタオルで()くと、ツバサの(あたま)()でました。


「ちょっと部屋(へや)()ってくるね」


 足早(あしばや)階段(かいだん)(のぼ)自分(じぶん)部屋(へや)(とびら)()けて、タカヤはすぐに(つくえ)()かいます。


今日(きょう)はもっとできることあったな……(かぜ)()こさずに()方法(ほうほう)(かんが)えて、物体(ぶったい)()かせる方法(ほうほう)(さが)さないと……)


 文字(もじ)がびっちりと()かれて()(くろ)になっているノートに、タカヤはさらに文字(もじ)()()んでいきます。


 ふと、(つくえ)(うえ)()いたままのバッジが()(はい)りました。


 ショースケが(むね)につけて(よろこ)んでいたものとおそろいのバッジは、スタンドライトの(あか)りを反射(はんしゃ)して(おも)(にぶ)(ひか)っています。


「……()ったらショースケ、(おこ)るかな」


 (うら)にはもちろん、こう()かれています。


石越(いしごえ)タカヤ 特級(とっきゅう)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

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