表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/34

31 旅へ

 よし。お腹も膨れたことだしそろそろ冒険にでも出ようかなー。


 ……その前に一応セラさんに盗賊のこと伝えた方がいいよね。

 ついさっきしばらく会えないなんて挨拶をしたばっかりだから、ちょっと会いに行くのが恥ずかしい。

 でもそんなこと言ってられないかー。

 他の人が襲われてからじゃ遅いんだしね。


 私は再びセラさんに会うためにギルドへと向かった。

 セラさんは先ほどと変わらず、ギルドの受付に立っていた。私がギルドに入ってきたのを見つけると目を丸くして、驚いているようだった。

 私だってこんなすぐに会うことになるなんて思っていなかったから驚いている。


「どうしたのー? アンナちゃん。何か忘れ物でもしてた?」

 受付まで行くとセラさんの方から聞いてきてくれた。


「いや忘れ物はしてないんですけど、実はさっき盗賊に襲われちゃいましてその報告に来ました。」

「え、盗賊? アンナちゃん怪我とかはない!?」

 セラさんが受付から身を乗り出して私の心配をしてくれる。やっぱりセラさんは優しいな。

 真っ先に私のこと心配してくれるなんて。


「私に怪我はありませんよ。でも盗賊を捕まえるのには失敗しちゃって……」

 私が申し訳なさそうに言うと、セラさんは安心したような顔になっていた。

「いいのよ! アンナちゃんに怪我がなかっただけで私は安心したし!」


 セラさんはそう言ってくれるけど、ギルドの人がそれでいいのかな? ちょっと不安なところもある。

「ここ最近は盗賊なんて現れてなかったのよね。前にアンナちゃんが捕まえてくれた盗賊団が最後なのよ。その襲った盗賊はどんな人相だった?」


「えっと、2人組で男でしたね。顔は布で隠されていて見えませんでしたけど。結構強かったですよ? 少なくとも前の盗賊団よりは遥かに!」

 私がそういうとセラさんも少し驚く。


「なるほどねー。アンナちゃんがそこまで言うくらいの相手なのかー。わかったわ。他のギルドや、冒険者にもちゃんと注意するよう言っておくわね。依頼の方も考えておかないとね」

 セラさんが私から聞いたことをメモしていた。


「まだその2人は盗賊として活動し始めたばかりなのかもね。本当にしばらくそういう話しを聞かなかったし」

 セラさんはそう言うけど、そうなのかな?


 実際に戦ったからわかるけど、やけに手慣れていた気がする。不意打ちだって私くらい強くなきゃ避けられないだろうし。

 2人のどちらかは、スキルを封じるスキルを持っていると思うし。


 今まで襲った人を全て殺していたから情報もなかったのかもしれない。殺せそうな相手だけを狙っていたのかもしれないしね。

 想像しかできないけど、盗賊として物を盗むより、人を殺す方を楽しんでいたんじゃないかな?


 特に刀男の方は私がスキル使えない隙に攻撃してきた時に、目がやばかったし。

 血走っていたのかな? 私は人のあんな目を間近で初めて見た。

 まさに映画でしか見たことのない、殺人鬼のような目だった。




 私はセラさんにスキル封じの事も追加で伝えてから、再びお別れの挨拶を済ませた。

 さて、今度こそ冒険の旅に出よう。またすぐにギルドに戻るなんてことがないようにしないとね。

 3回目はいい加減セラさんも呆れちゃうでしょ。


 準備はすでに終わっているし、後はどこに行くかを決めるだけだ。

 ルコール地方は東の方はすでに探索した。ラクスウルフと初めて会ったのも東の森だったし、赤い果実があった洞窟も東の森だ。

 でも西に広がっている森の探索はまだしていない。


 以前にセラさんと雑談した時のことを思い出す。

 西の森の奥には鉱山があるそうだ。昔は人の出入りもあったらしいんだけど、今じゃ利用されていないらしく魔物が住み着いているらしい。

 そこの魔物はルコール地方にしては強いらしく、しかもこれといって使える素材もないため冒険者もあんまり近づかないみたいだ。


 まあ私の目当ては素材じゃなくて魔物だし、そこの鉱山は良いかもしれない。後は赤い果実のような特別美味しい食べ物も冒険の目的だけど。


 セオル地方に関してはセラさんから特に何も聞いていないのでよくは分からない。

 西の森にスライム草原が広がっていることくらいかな? 東の森も少しキツネを退治するために入っただけだしね。


 セオル地方を南に進むと、リーズ地方が存在する。さらに南にはケアリ地方。

 この4つの地方によってこの大陸はできているみたいだった。ケアリ地方に魔王の城もあるみたいで、魔物もかなり強いみたいなんだけど、私が今行く必要はないよね。


 そこを探索するのは私が圧倒的に強くなって怪我の心配がなくなってからにしよう。痛いの嫌だし。


 リーズ地方には行ってみたい。リーズ地方にある街は魔王の城から一番近い街なので、武器やアイテムなどがこの街と比べるとかなり多い。

 食事もなかなか美味しいとの噂で、ぜひ私も食べてみたい。お金ならあるからいくらでも食べれちゃうぞ。


 それだけ美味しい食事がある街なら、近くには赤い果実のような特別な食べ物が取れるような場所もあるかもしれないし。

 なんの確証もない、ただの勘だけどさ。



 まあ全部が昔、セラさんから聞いたことだから多少聞き流した箇所もあったかもしれない。本当にあの人はおしゃべりが好きだもんな……

 最初は楽しいんだけど、ずっと聞いているのも疲れてくるから仕方がないよね。


 とりあえず、旅の最初の目的地はルコール西にある鉱山にしよう!

 ここから1番近いしね。近場から攻めていくつもりだ。

 その後、セオル地方をゆっくりと探索してからリーズ地方へと向かおう。


 リーズ地方も探索が終わったらケアリ地方に行けるくらい強くなっていると思うし、もしかしたら魔王だって倒せるかもしれない。

 魔王を倒すのは勇者の仕事だから私には関係ないけどさ。




 行先も決まったことだし、早速私は目的地に向かって歩き出した。ルコールの街から出て西へと向かう。

 草原にはピンクスライムの姿しか見えないのでつまらない。

 この世界に来てすぐに見たレアルスライムはあれから1度も見かけていなかった。


 魔法反射 のスキルを持っていたあのスライム。今でこそ思うけど、あのスライムに会っていなかったら私はすぐに死んでしまっていたんじゃないだろうか?

 ラクスウルフに出会った時の魔法によって。


 そんな昔のことを思い出しながら歩いているとあっという間に、西の森へと着いた。

 あとはこの森のずっと先まで進むと鉱山がある。道のりはまだまだ長いなー。


 あ、そうだ。久しぶりにあの姿で行こうかな?

 私は今思いついたことを実行する。 擬態 を使って、自分の姿をラクスウルフの姿へと変化させた。


 この姿になるのも久しぶりだ。5人のクラスメイトに会った日以来だろうか?

 あの人たちも無事に生きているかなー。1度関わった縁があるため少しだけ気になる。

 たぶん会ったら会ったで、ウザくてさっさと離れたくはなるんだろうけども。


 私は全身がラクスウルフの姿になったのを確認してから、森の中を走り出した。

 人間の姿の時とはまるで違う疾走感に、思わず嬉しくなる。以前走った時よりもさらに気持ちいい。

 私の俊敏値が上がったおかげかな?


 私は出会う魔物を全て無視して、木々の間を駆け抜けた。魔物たちは私に反応すらできなかったんだけどさ。



 その後、私は1時間も走らない内に森を抜けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ