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世間は思っていたほど広くない

私が体験した、不思議な縁のお話です。

「ちょうだい!!」


威勢のいい第一声を響かせて、俺の子供が注文した料理にルパンダイブしたのは、店主の孫(推定4歳)である。


遠慮なくバクバクとポテトを口の中に放り込んでいく。

まるでブラックホールの如く、ポテトが吸い込まれていった。


うちの子は、一口か二口くらいしか食べていなかったのに、あっという間にポテトは皿の中で半分が、霧のように消え去った。


「おお!! いい食いっぷりだな!!」


その光景を眺めていた、この子供の祖父である店主が、孫の食いっぷりを褒め称える。

自分の孫が客のテーブルを荒らしているというのに、まるで大食いタレントの大食いを見て感嘆している野次馬のようだ。


(イヤイヤイヤイヤ!!)


「ちょっと待ってくださいよ!! まだうちの子が食べてないのに、半分も食べられたらたまらないよ!!」

「悪い悪い。追加出すよ」


そう言って、悪びれもなく店主は追加のポテトとサービスでだし巻き玉子を出した。


それからというもの、祖父母の家に泊まりに来ているというその子供と、店内で鉢合わせ、料理の取り合い大バトルが毎度のように開催されるのだった。



*



この日も家族で店を訪れ、平和にビールを嗜んでいた時のことだ。


ギャーギャー!! ドタバタドタバタ!!

ガラガラガッシャーンッ!!


静かな店内に、まるで特撮映画のような派手な破壊音が轟いた。奥の宴会場から現れたのは、顔を真っ赤にしたおじさんである。酔っているのか怒っているのか分からないが、どうやら、後者のようだ。

話を盗み聞きしていると、例の「ポテト強奪児」が宴会場に突撃し、客と一触即発のバトルを繰り広げたらしい。


呆気にとられる俺たち家族をよそに、厨房から父親(店主の息子)が気まずそうに料理を運んできた。

話を聞くと、どうやら今夜は「孫のお泊まり日」らしく、母親の目を離れたモンスターが野に放たれてしまったというわけだ。

つまり、今夜のこの店には「ジュラシック・パークから解き放たれた恐竜」が迷い込んだわけだ。


世話になった大将の店ではあるが、我が家の食事の平和を守るため、俺は生ビールを煽りながら警戒レベルを最大に引き上げるのだった。



やがて子供は成長し、一緒にその店へ行くこともなくなった。

俺自身も、離れて暮らす弟が帰省した時くらいしか顔を出さなくなっていた。

それでもたまに行くと、あの「ポテト略奪児」がやってきては、店主にお小遣いをせびっている姿を目撃したものだ。




それからさらに時は流れ、我が子も成人して社会人になった。

だが、運命の歯車というものは、時としておかしないたずらをする。

「ポテト略奪児」とのおかしな再会は、我が子の何気ないひと言から始まった。


「あのお店の孫、うちの会社に就職したよ」

「え!?」


なんと、あのポテト略奪児が、我が子の勤める会社に就職したというのだ。

かつてこの子のポテトや料理を平らげていた子供が、時を超えて同じ職場の同僚になる不条理。


ちなみに、彼が会社でどんな事件をしでかしているかはここでは伏せておくが……俺はこう思わざるを得なかった。


世間は、思っていたよりも遥かに狭い。

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