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『辺境領主の経済無双 ~増税と緊縮で滅びゆく国を、現代知識と積極財政で救う方法~』  作者: 盆ちゃん


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【プロローグ】 凍てつく王都と、路地裏の叡智

えっと、内政もの書いてみました( ̄▽ ̄;)

さすがに難しいね。今の物価高や燃料高騰を風刺するのは( 'ᢦ' )HAHAHAでは、どうぞ┏○ペコッ

【プロローグ原稿】 凍てつく王都と、路地裏の叡智

ヴァルデンシュタイン王国――かつて豊かな魔石資源と肥沃な大地で栄華を極めたその国は今、静かに、しかし確実に死に向かっていた。

王国の中枢たる王都シュトゥルム。その名の通り「嵐」を体現するかのような重く冷たい雨が、鉛色の空から絶え間なく降り注いでいる。本来であれば、冬の訪れを前に活気づくはずの大通りは閑散とし、華やかなはずのガス灯の光は、燃料である魔石への『特別消費税』の過剰な引き上げによって大半が消灯されていた。

緊縮財政と無慈悲な増税。国の借金を減らすという美辞麗句のもと、財務派閥の重鎮である侯爵が推し進めた政策は、またたく間に国中の熱と活力を奪い去った。街のあちこちには、寒さと飢えに凍える失業者が溢れ、すすり泣く声が雨音に掻き消されている。

「……愚かな。自ら国の供給能力を破壊しておいて、何が財政健全化だ」

スラム街の悪臭漂う路地裏を、泥水に足を取られながら逃げ惑う青年がいた。

ヴィクトル・フォン・エルンスト。数日前まで王都の財務局で将来を嘱望されていた若きエリート文官であり、王国の経済が破綻に向かっていることを最も早く察知し、侯爵の政策に真っ向から異を唱えた男だ。

しかし、正論は権力によって容易く握り潰された。彼は無実の横領罪を着せられ、貴族の身分を剥奪された上で、魔物が跋扈する最果ての地、辺境都市ヴォルフスブルクへの永久追放を言い渡されたのだ。

「そこまでだ、エルンスト元卿」

背後から響いた冷酷な声に、ヴィクトルは足を止めた。

振り返れば、黒い外套に身を包んだ三人の男たちが、雨に濡れてギラリと光る短剣を構えている。侯爵が放った暗殺者たちだ。辺境へ向かう道中ではなく、この王都の片隅で、事故に見せかけて自分を始末するつもりなのだろう。

「侯爵閣下もご苦労なことだ。わざわざ私のような敗北者を消すために、高価な暗殺者を雇うとはね」

「閣下の完璧な政策に、シミ一つ残すわけにはいかないのでね。恨むなら、己の身の程知らずな正義感を恨むことだ」

男たちが一斉に地面を蹴った。

ヴィクトルの護身用の魔力は、逃走の過程ですでに底を突いている。天才と謳われた頭脳も、この暴力の前では無力だった。冷たい泥に倒れ込み、死を覚悟して目を閉じた、その瞬間――。

「……おい。人の寝床の前で、うるせぇぞ」

ひび割れた木箱の陰から、ボロ布を被った人影がのっそりと立ち上がった。

アッシュブロンドの髪を無造作に掻き毟りながら現れたのは、鋭い琥珀色の瞳を持つ青年だった。身なりはスラムの浮浪者そのものだが、その体躯は無駄がなく、明らかに鍛え抜かれた戦士のそれである。

アレン・クロムウェル。彼もまた、王国の不条理によって居場所を奪われた男。騎士団の適性検査で授かったスキルが、意味不明な異界のガラクタ(紙の束)を呼び出すだけの『異界の造物召喚ガラクタ・コール』であったがゆえに、無能の烙印を押され追放された元騎士候補生だった。

「なんだ貴様は! 引っ込んでいろ、命が惜しければな!」

暗殺者の一人が威嚇するように短剣を振るう。しかし、アレンは面倒くさそうに首を鳴らすと、懐から「奇妙な紙の束(本)」を取り出し、パラパラとページをめくった。

「命が惜しいのはそっちだろ。……えーっと、確かこの粉塵の濃度と、熱量の関係性は……」

「狂人か? ええい、構わん! ごと殺せ!」

暗殺者がアレンに向かって飛びかかった。

アレンはため息をつきながら、足元に用意していた麻袋を蹴り上げた。中から大量の小麦粉(廃棄された粗悪品)が、雨の降らない軒下の空間にブワッと舞い散る。

同時に、アレンは指先でごく微小な、本当にただの「種火」程度の火魔法を発動させた。

「『熱力学・第一章』……粉塵爆発ダスト・エクスプロージョン

――轟ォォォォォォォォォッ!!!

路地裏の空気が一瞬にして膨張し、凄まじい爆炎と衝撃波が路地裏を駆け抜けた。

それは、異世界の常識では考えられない現象だった。たった一握りの魔力で、これほどの破壊力を生み出す魔法など存在しない。暗殺者たちは悲鳴を上げる間もなく衝撃波に吹き飛ばされ、石壁に激突して昏倒した。

「……な、なんだ、今の魔法は……!?」

泥まみれのヴィクトルが、驚愕に見開かれた目でアレンを見上げる。

アレンは「火力が強すぎたか」とぼやきながら、手元の奇妙な紙の束をペラペラと揺らした。

「魔法じゃねぇよ。ただの『物理と化学』だ。俺のクソスキルで出てきたこの紙切れに、そう書いてあったんだよ。まぁ、読めないから図解でなんとなく理解しただけだがな」

そう言って、アレンは持っていた紙の束をヴィクトルの足元に放り投げた。

泥水に浸かりそうになったその奇妙な装丁の「本」に、ヴィクトルの視線が落ちる。

その瞬間、ヴィクトルの目に宿っていた生来のスキル『森羅の翻訳眼』が、無意識のうちに発動した。

異界の言語、見たこともない法則、未知の概念。

通常であれば脳が焼き切れるほどの情報量が、ヴィクトルの天才的な頭脳の中で一瞬にして「意味」を持って再構築されていく。

表紙に書かれた文字が、ヴィクトルの脳内で明確な言葉として変換された。

『基礎化学・熱力学編』

『現代マクロ経済学 ~信用創造と積極財政の真理~』

「こ……これは……!」

ヴィクトルの手が震えた。

そこに書かれていたのは、ただの魔法の呪文などではない。世界のことわりそのものを解き明かす科学。そして、国家という巨大なシステムを動かし、富を無限に生み出すための絶対的な理論。

ヴィクトルが独学で辿り着き、それでも証明しきれなかった「経済の真理」が、圧倒的な論理と数式によって完璧に記述されていたのだ。

「お前……この『叡智の結晶』を、自分で出したと言ったか?」

「あ? ああ、俺のスキルでな。文字がミミズの這った跡にしか見えねぇから、焚き火の燃料くらいにしか使ってねぇけど」

「焚き火の燃料だと!? なんという冒涜だ……!」

ヴィクトルは泥を被るのも厭わず、その本を胸に強く抱きしめた。

震える足で立ち上がり、目を丸くしているアレンを真っ直ぐに見据える。その瞳には、先ほどまでの絶望は微塵も残っておらず、猛烈な野心と希望の炎が燃え盛っていた。

「私の名はヴィクトル! お前、名前は!?」

「ア、アレンだが……なんだよ急に」

「アレン! 私と手を組め! お前のその力と、私の頭脳があれば……この腐りきった国を、いや、世界そのものをひっくり返すことができる!!」

暗殺者が倒れ、雨音が響く路地裏。

極度の緊縮と増税で凍える王都シュトゥルムの片隅で、最強の「頭脳」と「武力」が交わった。

二人が向かうのは、見捨てられた辺境都市ヴォルフスブルク。

これは後に、異界の叡智と圧倒的な経済力をもって、ヴァルデンシュタイン王国を根底から作り変えることになる二人の、壮大な反逆の幕開けであった。

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