表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異常調査部〜廃校幽霊殺人事件編〜【1】  作者: 月ノ羽 ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/23

大歓迎ー2

めぐるの携帯から友人である世瀬よせのメッセージが届いた事で、お疲れ様会&プチ歓迎会はお開きになった


実際には、何となくメッセージの内容に勘付き、気を使った黎ヰ(くろい)が後片付けを引き受け、帰るように言ったのだった


遠慮した所で押し問答になりそうだったので、めぐるは有り難く甘えさせてもらい、先に帰った


異常調査部内には、めぐるを除いた三名が残っていた


言葉通りに黎ヰ(くろい)は、せっせとハサミを使いこなしながら、後片付けをしている。それを横目にあくたは、力無く机の上に上半身を倒す


あくた 昱津いくつ

「…黎ヰ…くん、色々と…お疲れ、さま」


あくたの言う"お疲れ様"の意味を理解し、椅子に座りのんびりと寛いでいた曳汐ひきしおも同意した


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「実際にはこれから…なんですけどね。本当に手伝わなくて良いんですか?」


黎ヰ(くろい)

「ここからは俺の独断だからなぁ、異常調査部の()()じゃねぇし、帰るついでだ。問題ねぇーよ」


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「そうですか…では、お言葉に甘えさせて頂きますね」


あくた 昱津いくつ

「うん…ぼく、も…」


"帰るついで"に黎ヰ(くろい)がしようとしている事…それは、被害者達のお墓参りだった


廃校舎で殺害されてしまった二人の青年達に、事件の全貌を報告をする。遺族達には本当の事を伝えてしまうと、命を危険に晒してしまう危険性がある。だから今は、警察が都合の良い様に作った報告をするしかできない


死人に口なし…と言う訳ではないが、せめて本人達にはどうして殺害されてしまったのかを知る権利があるし、関わった人間として手を合わせてあげたい


これは、殺人事件を解決する度に黎ヰ(くろい)がしている事だった


照井てるいユミに関しても緊急事態の為、特別司法解剖が許可されていたとは言え、大切な娘の死体を切り裂いたのだ。本人や遺族達に頭を下げるのは当たり前だろう…


だが、今回はそれだけでは終わらない


馬場ばばが絡んだ過去の事件…ニュースを見る限り警察はうやむやにしたい様だが、黎ヰ(くろい)はお構い無しだった


アリババが罪をなすりつけた所為で、人生を狂わされ短い一生を終えてしまった青年…彼の無念をこのまま蔑ろに出来ない


だから黎ヰ(くろい)は、この事を記者にリークした


内容がどうであれ、判決が下され当人が亡くなった今、馬場ばばの証言があったとしても、罪に関してはどうにも出来ないだろう…


だとしても、遺族や同級生達には本当の事を伝え彼が無実なのだと伝えなければならない。何もしていない彼は、大勢の人間に責められ、卒業アルバムにすら載る事が出来なかったのだから


本来なら、これは黎ヰ(くろい)のすべき事ではなく、完全に自己満足の行動だと自身も認めていた。今更過去の事件を掘り返しても、遺族達の傷口を広げるだけかもしれないし、マスコミにリークした事により余計な注目を浴びてしまうかもしれない


遺族達に恨まれる可能性だって大いにあるし、むしろ当たり前だと思う。だからと言って黎ヰ(くろい)は、無実を有罪のままにしておけない…


葩永はなひさはそう言った黎ヰ(くろい)の思考を最初から読み、電子の卒業アルバムもどきを彼に渡したのだった


救えなかった命にせめても、彼の写った思い出の写真をと…


理由がどうあれ、今回の行動は同職である警察官にかなりの恨みを買うだろう。遺族達に関してもいい結果を生むとは限らない


黎ヰ(くろい)

(それを理解して実行してんだ、まさしく()()だなぁ)


なんて事を思う黎ヰ(くろい)だった


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「では、私もそろそろ帰宅しますね」


帰りの支度を済ませた曳汐ひきしおは、当たり前のように黎ヰ(くろい)がまとめたゴミの袋を持つ


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「せめて、これくらいはさせて下さい」


片付けも全て自分でやってしまえる黎ヰ(くろい)に、曳汐ひきしおあくたはちゃんと理解していた。だからか、二人は本当の意味で黎ヰ(くろい)が限界を超えてしまう前に、気づき支えようとしているのだ


黎ヰ(くろい)

「あんがと」


そんな二人の心情に黎ヰ(くろい)は気付いていた


あくた 昱津いくつ

「紾…くん、も…増えたし…これから、は…よん、等分だね…」


黎ヰ(くろい)

「だなぁ、紾ちゃんは人の隙間に入るのが上手いからなぁ〜、無意識だけど」


相手を否定せず、理解しようと懸命になる。そんな人物は中々居ない


誰だって、自分の常識から逸脱した事を目の当たりにすれば、先に否定し拒絶反応を示す


だが、蔡茌さいしめぐると言う人物は、どんな人間であれ"何故"を考える


"何故"そんな事を言うのか、"何故"そうするのか、つたないながらも相手を理解しようと考えてしまうのだ


黎ヰ(くろい)

「訓練士で実績上げてた理由が分かるなぁ〜」


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「でも、本当に良かったんですか?」


ふと、曳汐ひきしおがそんな事を言った


あくた 昱津いくつ

「ぼく、は…いいよ…多分、いい人…だから…目が真っ直ぐ…だ、もん」


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「私も蔡茌さん本人に関しては、特に問題ないんですけど…でも、異常調査部を潰す為のスパイなんですよね?」


めぐるがスパイ…きっとその事は本人ですら気づいていないだろう。だが、事実なのは間違いなかった。

でなければ、本人の意思を無視した急な部署移動などあるはずもない


めぐるの人の良さを利用し、内部を探らせ弱みを掴み一気に潰す気だ。


狡猾とも言えるその人物は先程、めぐるにメッセージを送り、早速今回の事件について根掘り葉掘り聞く気だろう


黎ヰ(くろい)

「言ったろ?大歓迎だってなぁ」


全てを知った上で、黎ヰ(くろい)はニヤリと笑った




ーーー ーーー ーーー ーーー




その日の夜


友人である世瀬よせの急な呑みの誘いに、めぐるは乗った


夜になれば、怪我は引き疲れも薄らいでおりめぐるは軽い気持ちで待ち合わせ場所へと向かっていた


蔡茌さいし めぐる

「それにしても、週末って言ってた癖に…世瀬の奴どれだけ呑みたいんだ」


漏れた独り言に反応するかの様に、背後から声が聞こえた


世瀬よせ 芯也しんや

「悪かったな。昨日の意味の分からん休日出勤で溜まってたもんでな」


振り返り、友人の顔を見るとめぐるは苦笑いを返した


蔡茌さいし めぐる

「そうか。俺も怒涛の二日で死にそうになってたんだぞ」


一瞬、大袈裟な表現かとも思ったが振り返ってみると、死にそうだったのはあながち間違いではないし、むしろそれ以上の思いもしていた


蔡茌さいし めぐる

「本当に大変だったよ」


世瀬よせ 芯也しんや

「そうか!そうか!親友想いの俺が聞いてやるよ!」


めぐるの反応を見て、愉快に笑いながら世瀬よせは肩に手を伸ばした


蔡茌さいし めぐる

「なんで上機嫌なんだ?気持ち悪いな」


世瀬よせ 芯也しんや

「当たり前だ、こうやって呑むのは久々だからな。色々とお前の話聞かせてくれよ」


この時のめぐるは、彼の真の言葉の意味を知る事はないまま、素直に返事を返したのだった


蔡茌さいし めぐる

「あぁ、分かったよ。とことん付き合ってもらうからな」


まるで鷹が獲物を見るような、そんな目で世瀬よせめぐるを見やると、もう一度愉快に笑った

異常調査部〜廃校幽霊殺人事件〜【終】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ