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毒を食らわば  作者: 紗羅
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前に出していたものを改めて投稿しました。続くか分かりませんが、ちょこちょこ書いていこうと思います。

――そうか。ここは乙女ゲームの世界なんだ


高校の入学式、桜が舞う校舎に私は思い出してしまった。




 私は幼い頃から漠然とした違和感を覚えた。何故か両親が他人に感じ、お兄様がいることに疑問を感じた。けれど、それを他人に言ってはいけないことをなんとなく分かっていた。それに何より、自分自身でも何がおかしいのかよくわかっていなかった。

 けれど、5歳くらいの時、私は自分の前世を全て思い出した。

 切っ掛けはとても単純な事。


――ケンタッキー食べたい


 私はクリスマスに近づく頃、そう呟いてから思った。ケンタッキーって何?


 当時私は5歳。家はそれなりの上流階級で、お手伝いさんや執事というものがいる。私は自ら買い物に行く機会どころか、幼稚園と家の行き来以外、外出はあまりしていなかった。そんな私が何故ケンタッキーを知っているのか?そして、何故急に落ち着いて物事が判断できるようになったのか。

 その時ストンと私の中に入ってきた。

――ああ、私は死んだんだ


 それから、前世で大切だった家族や友人の顔が浮かび、私は夜通し泣き続けた。泣いて泣いて、泣き疲れて眠った後目覚めると、悲しみは消え、心はどこまでも穏やかに澄みきっていた。私の中でくすぶっていた違和感もなくなり、前世は前世のものとして過去とみることが出来るようになっていたのだ。

 泣いて腫れた目元に心配してくれる人の声を聞くたびに、自分の今の名前を聞くたびに、私の居場所はここにあると感じることが出来た。もう、家族は他人ではなくなった。私は前世を思い出して心は大人になってしまったけれど、今を現実として向き合えるようになった。


 と、言う訳で私は本気で勉強を始めた。何故かって?前世は過去として見ることは出来るが、後悔がなかったかと聞かれると肯定は出来ない。由良さん―――私の前世は由良という名前で、今世では椿だ。前世の私と今世の私は別なので前世を由良さんと言う事にする―――はとても冒険家な所があり良く海外に一人で旅行に行っていた。由良さんの子供の頃からの夢は『世界を見て周り、知ること』らしく、様々な国に行き写真を撮っていた。ちなみに本職は看護師なのだが、彼女の人生は思いだせば思い出すほど波乱万丈で本職が何か忘れるような人生だ。

 時には拳銃をもった集団の銀行強盗を退治し、またある時は雪山で行われた約1800キロの犬ぞりレースに参加し上位入賞する。道端に倒れたおじいさんを助けお礼に土地を貰ったり、友人たち石油を掘り当てる。どれを思い返しても全力で人生を謳歌しているようだが、その中で一番苦労したことがあった。それは大学受験だ。彼女は自分の趣味のための勉強は徹底してやるのだが、如何せん学校の勉強はとことんやる気が起きなかった。

 日本で習う英語は実践向きではないし、国語の点数の取り方などさっぱりだった。ただ、理数系はとても得意だったため何とか看護大学には合格することが出来たようだが。


  そんな訳で由良さん的には嫌なことは先にやっておいて損はないと言っている(ような気がする)ので私のこれからのために勉強はしておくに越したことはないはずだ。いくら同じ魂の人間だとしても由良さんはリアルチート人間で、『いい子も悪い子も真似しないでね』レベルが通常の変人である。普通を地で行く私にはとてもじゃないが真似できない。つまり、由良さんのように面白可笑しく生きていくためには相応の努力が必要である。


 うむ。とりあえず習い事に空手や合気道も追加してもらおう。あとは家庭教師だろうか。ふふふ。負けませんよ、由良さん。


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