【第八章総集編】鴉の手記⑧
ミリアの治療とアウレリアの看病の甲斐もあり、バルナスは一命をとりとめ、レックスも起き上がれるようになった。
軍議により、蛮族が急にこれまでと違った文明的な攻撃方法に変わったのは、レックスを襲ったエピオナ人が知恵を授けたからではないかと推測された。この男を尋問するために、同じエピオナ人であるミリアも同席するよう命じられる。
すると、すかさずアウレリアも同行すると宣言した。ミリアが心配であると同時に、自身の「神の瞳」で捕虜が嘘をつかないか判別できるのではないかと提案したのである。
伝説によると、黄金の聖女の瞳は「神の瞳」と呼ばれ、全てを見抜くとされている。そしてアウレリアもこれまで幾度も相手の嘘を見抜いてきていた。レックスはアウレリアの申し出を受け入れ、捕虜の尋問に彼女を同行させることとした。
尋問の結果、未知の毒は東方由来、すなわち皇后派が裏で糸を引いていること。そして、今夜蛮族が夜襲で総攻撃を仕掛けてくることが判明した。
アウレリアたち非戦闘員は離れた森の中に潜み、レックスたち王国軍は密かに天幕から抜け出して、空になった陣営を敵にあえて攻撃させた。迂回して潜伏し、敵の背後から王国軍は逆に総攻撃を仕掛ける。レックス自ら敵の頭目を捕らえることに成功し、ついにダナオス川戦役は終結する。
レックスは講和という名の隷属契約を蛮族に結ばせ、族長の息子ロドルグを留学生という名目で人質として連れ帰る。まともな礼儀も知らない野生児の世話まで増やされ、心身ともに疲労が限界まで来たトゥレンは密かに吐血する。しかし、その現場をよりによってミリアに目撃され、彼は命に関わる病ではないとの診断を受ける。
一方、戦地から連れ帰ったエピオナ人捕虜はトゥレンに必要な情報を遺した後で首を吊って自害した。また同胞を救えなかったことに打ちひしがれるミリア。そしてその姿をアウレリアは黙って見つめていた。
神の瞳――それは神与の異能などではない。ただ、人の感情に伴う微妙な揺れを察知できる、人の力に過ぎなかった。本人すらも自覚しない力に翻弄されながらも、彼女はただ運命の奔流の先をまっすぐ見つめるのだった。




