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オムツと私たち  作者: 062


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佐藤ゆりあ(7)

走り続けてきた。15歳のあの日から。


「マリちゃん、私ね、思うんだ。『なぜおむつをつけてはいけない』んだろうって」

「だって、犯罪でも、迷惑行為でもないんだよ?」

「だから、私は変えるの『世界』を!」


そうして走りだした。


全てのコアである、量子コンピュータ『スーパーセル』

量子コンピュータの手足となり、感覚器官でもある、スマートウォッチ『テンペスト』

被験者を保護するための概念『ユリア・シンドローム』


考え、行動し、時には暗躍して、気がついたら大臣になっていた。


そして、それが崩れようとしている。

目の前の11歳の少女に。



「お願い、夏樹さん、『テンペスト』を『ユリア・シンドローム』を止めて!」


教師の悲痛な訴えに、それでも目の前の少女は首を横に振る。


わかっているのだ。少女には。状況が不可逆的なものだと。


「先生、生徒に教わるのは体裁が悪いだろうから私から言わせてもらうよ。そこの天才少女は『テンペスト』を止められる。実際に3日程前に千葉の施設が乗っ取られた」

「だったら!」


冷静さを欠いた教師は、一縷の望みのように少女を見る。私はそれを打ち砕くことにする。


「ハッキングで『テンペスト』のコアである『スーパーセル』を止めたって、そこの天才少女のおもらしやおねしょは治らないんだ。何故なら、脳みそもまた、学習するからね。『排泄はおむつでするものだ』と。それでも、『テンペスト』の稼働を止めて、『ユリア・シンドローム』はまやかしだったと喧伝したとしよう。現状の『ユリア・シンドローム』患者が日本だけで1000万人。さて、この人達はどうなる?君の弟君のようになる者もいるんじゃないかな?」


教師が私を睨む。まるで親の仇のように。いや、弟の仇か。それで良いと思う。彼女にはその権利がある。謝罪も弁解も無意味だろう。私は彼女にそれだけの事をしたのだから。


問題は目の前の天才少女だ。厄介にもこれまで積み上げたものを破壊するだけのアイデアがある。


(できれば、使いたくない手だったが)


墨を飲んだような気持ちでスマホを取り出し、電話をかける。相手はこの地方の銀行の支店長。


「佐藤ゆりあです。2日前に聞いた件、買収しようと思います。債権を10倍で買い取ります。条件は株式の51%以上の譲渡で」


2つ返事で支店長は了承する。すぐにスマホで送金して、決済を終える。


「たった今、すずめ観光の買収が完了したよ。ああ、君のお母さんもそこが運営している、すずめ温泉で働いていたっけ?」


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