感謝
「……ニィ」
いた。ダンボールの奥で小さく丸まってるまるがいた。
「……まる」
「ニィ」
丸くハゲた頭を私に向けて、まるは小さく返事をした。見たところケガは無さそうだ。
「よかったぁ……」
緊張が解けて地面にへたりこむ。安心して目元をぬぐうと、今度はお尻がぬれている。あれ?生あたたかい?
どうやら飛び散った牛乳の上に座ってしまったようだ。しかも、ひしゃげた牛乳パックの中身は空っぽになっていた。
「ご、ごめんね、まる!?また買ってこなくちゃ……」
「ニャァ」
「……でも、買って戻るまでにあの犬が戻ってきたらどうしよう……」
困った。なんで牛乳パック投げちゃったんだろう。私って本当にバカだよ。けど、無いものは無い。コンビニ行ってまた買ってこよう。
「……まる、一緒に来てくれる?」
「ニャァ」
「……触っていい?」
まるの前に手を伸ばすと、まるは自分から顔をすり寄せてきた。そっと撫でてみる。まるを撫でてみると、ふわふわしてあったかい。ハゲた頭もあったかかった。まるは怒ったり避けたりせず撫でられてくれた。
「……ありがとう、まる」
「ニィ」
私のほほがゆるんだ。
まるの小さな体をゆっくりと包みこんで抱き上げ、バッグの中へ移動させる。教科書につまずきながら、まるはバッグの中を探険し始めた。
まると一緒にもう一度コンビニへ行き、牛乳を買う。女性店員に不思議がられたけど、それよりまるが暴れて落ちたりしないか気にしているうちに、あっという間に購入できた。
公園へ戻ってくると、安全を確認してからまるをダンボールに戻す。まるは自分の家のニオイを嗅ぎながらくるくるまわった。それからダンボールに前足をひっかけて立ち、私に向かって鳴く。
「お腹空いた?待っててね、今あげるよ」
「ニャァ」
温めてから牛乳を小皿に注ぎ、小さく砕いたキャットフードを混ぜ入れてまるに差し出す。まるはすっかり元気になっている。お腹も空いたようで、すぐに食べ始める。
「おいしい?よかった……あ、そうだ。有梨香に写真送ろう」
きっと有梨香は心配してる。食事中のまるをななめ上から撮ってメールした。すぐ返信があった。
『カワイイ!最高だよぉ、まる!!ありがとう!沙弓に頼んでよかった!』
有梨香が喜んでくれた。幸せになっちゃいけないと思ってたのに、今、私は幸せに満たされている。有梨香のおかげだ。
「ニャァ」
「まるにも感謝しなきゃね。私のきっかけになってくれてありがとう」
まるを撫でる。まるは満足そうに目を細めて笑ってくれた。
おしまい




