ごめんなさい
私のせいで有梨香が左腕を骨折した。
2限の体育でバスケの試合をしていた時だ。前を見ながらドリブルすることができない私は、必死にボールを弾ませてゴールリングに向かって走っていた。その時、前方に相手チームの有梨香が立ちはだかる。誰かがいるって見えていたのに、私は止まれなくて激突してしまった。私の下敷きになった有梨香は、すぐさま保健室へ運ばれた。
昼休みになってから有梨香が教室に戻ってきた。衣替えの期間が終わり夏服の黒いベストを着ているため、首から白い布で左腕を吊った有梨香の痛々しい姿は目立つ。
私は何度も謝った。
「本当にごめん……ごめんなさいっ!」
「もういいってば」
有梨香は大丈夫って笑ってくれたけど、無理してるように見えた。謝ったくらいで許してもらえるわけがない。利き手ではないとはいえ、痛くて不便な思いをさせてしまっているのだから。
結局、午後からの授業では、有梨香はぼんやりしてばかりいて、あきらかに元気がなくなっていた。私が出来もしないのにドリブルなんてするから悪いんだ。本当に申し訳ない。
いつも私はこうなんだ。17年間の自分の人生を振り返ってみると、いかにヒドイ人間なのかがわかる。人を傷つけたり、困らせることばかりしてきた。人の役に立てないどころか、人の迷惑にしかならない私なんて消えるべきだ。わかっているのに怖くて死ねない。私に少しでも勇気があればいいのに。
自分を戒めるために、進んで不幸を目指してみたらどうなるだろう?頭の中でシミュレーションすると、すぐに失敗した。私の周りには優しい人が多いから、つい手を差しのべてくれたり、気をつかってくれたりする人が現れる可能性が高い。そしたら私は幸せになってしまう。私なんか幸せになっちゃいけない人間なんだから、親切は受け取れない。私より幸せになるべき人はたくさんいるんだから、そういう人たちにこそ親切は届けられるべきだろう。
だとすれば、私、何をしたらいいんだろう?どうすれば誰も傷つけずに生きてゆけるんだろう?
迷惑かけない人間にならなきゃ。誰かの邪魔をしてはいけないし、余計なこともしちゃダメだ。自分の意見なんて持たずに従うべきかもしれない。大人しくしていよう。
放課後、有梨香が私に声をかけてきた。
「沙弓!一緒に帰ろっ」
「え……私でいいの?」
「これから行きたいとこあるの、ついて来てくれない?」
「……うん、いいよ」
私と有梨香の帰る方向は別々なのに、なぜか誘われた。行きたいところがあるって言ってるんだから、目的地があるんだろう。どこに行くんだろう?病院?カラオケ?カフェ?わからないけど、私なんかに拒否権はないし、どこにでも行こう。
つづく




