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第四十五話

軍議が終わると、すぐに十勇士を集め、軍議の内容を知らせた。

大きな変更点は、徳川の大砲の初弾で暴発させる事だ。これにより大砲の暴発の際の被害をより大きくさせる為の、ちょっかいをかける必要がなくなった。真田の被害が少なくなる側の変更なので喜ばしい事だと思う。

しかし、変更に合わせて、別の準備もしなくてはならぬ。

「まずは、序盤の籠城戦についてだが、銃とか銃弾の準備は万全でしょうか?」

「はい、銃、銃弾とも在庫は十分です。一月や二月は持ちこたえられるでしょう」

「それでも心配な点はあります。在庫分をどこで保管しておくか。敵の砲撃や失火、一挙に失う危険性はあります。また、徳川の忍びが潜入して火を放つ事も考慮する必要があります」

「わかりました。何か所かに分散して保管する事にしましょう。それから、蔵出しもそれぞれ均等に在庫を出す様にして、一挙に在庫を失うことを避けます」

「お願いします。それから、銃弾の補給等も考えると、堺までの街道を死守しなければなりません。その点について適正な人員配置を検討下さい。それから、銃の整備を頻繁に念入りに行う必要があるでしょう。近隣より銃の職人を確保したいと思います。費用はかかっても構いませんので、城内に連れて来て下さい」

「後は医者と医療品を大量に準備しておきたいのですが、伝手は無いでしょうか?」

「退避路の出口である無料医療所の医師に尋ねてみましょう。うまくいけば、医療品を分けていただけるかもしれません。また、手の空いている医者を紹介してもらいたいと思います」

「よろしくお願いします。・・・籠城戦では人の壁を作る必要がありますから」

「そんな事が本当に出来るのか?」

「やらねければなりません。そもそも堀のない城なのです。落とし穴にはまる人数なんて50人、せいぜい100人といったところです。例えば5万人の兵で攻撃されたら、100人減ったところで何の意味があります?各門に数千人の兵が殺到した時、対抗出来るでしょうか。『生きている人の壁』を作って、門に殺到しない様にするのが第一です」

「しかし、残酷な方法だと批難されるでしょうね」

「それは覚悟しておりますし、責任を取る覚悟は出来ております。籠城戦の緒戦における要諦は、味方の損耗を減らす事、敵に侵入されない事、これに尽きます。この為の作戦です。確かに重傷者を放置する作戦ですので、残酷な作戦かもしれません。しかし、彼等にも生き延びる機会が与えられる訳ですから、必ずしも悪い事とは思いません。それでは死ぬ方がいいのですか、と問いたいですね。・・・それに、今後味方になっていただく外様の雄藩の兵士じゃないですか。殺した人数よりも、助けた人数の方が重要になると思います」

「確かに話は理解出来るのですが、それを実行するとなると、課題が多い様な気がします。例えば、多くの敵が殺到した時、多くの者が殺そうと思って銃撃するのでは?殺すな、というのは実際には難しいのでは無いでしょうか?」

「確かにそれはそうですね。では言い方を変えて、倒れたりした者を更に銃撃する必要はない、他の兵を狙うべし、これなら大丈夫でしょうか?兵達は銃の取り扱いに不慣れでしょうから、狙って殺す事も、狙って殺さない事も簡単には出来ないでしょう。それならばこの程度の方針でいいのかもしれませんね」

「これくらいの命令なら何とか可能かもしれませんね。・・・それから、夜間に医者を放って、敵兵を一人でも助けて『人の壁』を作る、というのはふさわしい人物が少なく、効果は出ない様な気がします。勿論、城外より人は集めますが・・・」

「医者の増員については宜しくお願い致します。それから、城内での人材の調査をお願いします。銃創に対して応急治療ー例えば、患部の除去、止血、消毒、包帯を巻くといった作業から、四肢の切断までーを出来る者を探して下さい。軍功については、実際に銃で倒した者よりも上に設定しますが、志願する者は少ないでしょうね。戦後、医療兵で仕官の先があるとは思えませんので」

「それはそうですね。・・・ならば、医療兵として助命出来なくても、罪にはならない事を言ってもよろしいでしょうか?そうすれば、血を見たくてしょうがないクズ共が志願して、人数が揃えられるかもしれません」

「そういった人達が混じるのは仕方の無い事です。但し、大半がそんな連中という訳にはいきません。暴走した場合、粛清する必要がありますから、後々面倒な事になります。そんな連中は一割、多くても二割以下になる様にして下さい。・・・夜な夜な敵兵の断末魔の叫びが辺り一帯に響く事になるでしょう。城内の御味方全員に耳栓を配布して下さい。しっかり眠らないと、翌日の戦いに響きますからね」

「敵が野戦を仕掛けて来たらどうします?」

「落とし穴の計略があるので野戦となる確率は低い、と考えております。それでも夜戦をするのならば、速やかに兵を叩き起こして迎え撃つまでです」

「・・・わかりました。その線で進めていきます」

「宜しくお願い致します。・・・それから、これは全く別の話なのですが、今僕は心配している点が一つあります。脱出や物資の搬入・搬出の為に多くの地下通路を作りました。そこから敵が大挙して侵入した場合の対策を考える必要があるのではないか、と考えております」

「確かにそれは検討すべきでしょうね」

「内壁に油を塗っておいて、いざという時に火を放つという事も考えましたが、そうなると味方の事故で失火する危険性が高く、採用出来ませんし・・・」

「煙を使うのはいかがでしょうか?」

「その話を詳しく教えて下さい」

「御存知とは思いますが、火事になった場合多くの人が煙に巻かれて、眠る様に倒れてしまいます。ですから、脱出路の中に部分的に火を起こして煙を脱出路全体に充満させるのです。そうすれば、中にいる人間は眠る様に亡くなるでしょう」

「・・・確かに、いい案だと思います。味方に被害が出にくいのがいいですね。もう少し細かく考えてみましょう。煙を発生させる場所をどこに、何ヶ所設けるか、入り口・出口他塞がなければならない場所の数と指示の伝達方法、空気の抜き方や実験・効果の検証といったところでしょうか。細かく考えればもっとあるおでしょうが・・・」

この後も、脱出路の防御対策について話し合い、十勇士の皆さんと合意した。

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