武井俊哉 (たけうち としや)1《連鎖》
「また今日も来てんの?」
初めて来るクラブだが、俊哉はどこにでもいるタイプなのか、こんな風に女性に声を掛けられる事も珍しくはない。
今日は「この女」と目星を付けて女を自分の横に座らせた。
「俺の事、知ってんの?」
「最近よく来てんじゃん」
来た事はないのだが、話しを合わせる事にした。
「まぁ、ね・・・名前は?」
「まみ。あんたは?」
「俊哉。いくつ?」
「じゅうはちぃ~」
と言ったかと思うと、まみは手を引っ張り
「歳なんてどぉでもいいじゃん」
と言いながら、俊哉を店の外まで引っ張り出した。
俊哉も慌てることなく、まみに手を引っ張られて外に出た。
「あんたの事、気に入ったよ」
まみは俊哉の腕にしがみつくように抱きついた。
俊哉は煙草に火を付け、ふと空を見上げると、綺麗な月が浮かんでいた。
「もっとあんたの事、教えて欲しいな」
「俺の事?」
「うん」
「まずは、生まれは広島県 福山市・・・3人兄弟の末っ子・・・」
デタラメばかりを並べながら、まみを人通りの少ない路地へと連れて行く。
まみ自身も会話にはあまり興味がなく、ただ相槌を打ちながらついて行く。
「小学校からのあだ名は『トッシー』」
「へぇ」
「今は・・・」
「・・・」
俊哉の会話が止まったので、まみが繰り返す。
「今は?」
「もんすたぁ」
「・・・・」
まみが噴出すように笑った。
「はははっ・・・もんすたぁって、今話題の?」
俊哉もつられて笑った。
「はははっ・・・うん・・・あれ・・・俺・・・」
と言ったかと思うと、すばやく組んでいた腕を振り解き、ポケットから取り出した折りたたみナイフを、まみの頚動脈に突き刺した。
まみは「シュー」という音と共に首から血があふれ出し、あっという間に真っ赤に染まり、目を見開いたまま地面に倒れた。
血が辺り一面に広がり、痙攣しているまみを見ながら「もんすたぁ」はニヤリと微笑んだ。
血溜りには綺麗な月が写し出されていた。




