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「この調味料は、イトが提案した値段では安過ぎる」
「じゃあ、どの位が妥当なんだ?」
「そうだな‥‥最低でも10倍と言いたいところだが、あまり高過ぎると今度は後で下げづらくなる。将来的に普及させたいのであれば最初は5倍、最終的に2・3倍が望ましいだろう」
「わかりました、それで値段を検討してみます。ありがとうございました」
値段を思い出しながら一覧表でも作って、それをギンガさんに渡して数量と期限なんかの注文を貰えばいいかな?「そこで相談なんだが」あれ?まだ話が続いてるぞ。
「商業ギルドにも売ってもらえないだろうか?」
「お断りします」
「はっ!?」
「だからお売り出来ません」
「な、何故だ!?普及させたいと思っているのだろう?ならば!」
「まあまあ、落ち着きなよ。イトちゃん、売れない理由があるんでしょ?」
まず栽培しているものではないので、定期的に卸すことが出来ないこと。1人で作っているので大量生産が難しいこと(やろうと思えば出来るけど‥‥)。私がまだ商業ギルドを信用していないので、個人情報流失の可能性を否定出来ないこと。
それに伴って起こる食材の乱獲、製法の強奪と私の誘拐、利益目当ての独占等の輩、周囲の人達に危険が及ぶ可能性等を挙げていく。
「‥‥わかった、時期尚早だったということで今回は諦めよう。だが、いつか必ずイトの信用を勝ち取ってみせる。そのときは売ってくれるな?」
「はい。何の道ギンガさんのお店が話題になれば、独占している方が問題になると思うので」
「ではこちらも冒険者ギルドを見習って改装をしよう。まずそこからだろう?」
ルスカさんは素早い対応を述べると、ニヒルな笑みを浮かべた。この人も出来る大人だったか。これはちょこちょこ仕込んでおかないといけないかもね。あ、仕込みで思い出した!
「これを食べてもらえますか?」
取り出したパンを2つに割って、ルスカさんとエジムさんに渡す。
「これは?」
「朝、ランセクト街道に近いパン屋で買ったものです」
「ああ、あの店のか‥‥、酷いな」
「不味い!イトちゃん、何か口直しを頂戴!」
2人揃って、あまりにも苦々しい表情をするものだから、謝罪代わりのコーンマヨパンをあげる。
「「旨い!」」
「他にも持ってそうだな?」
「うん、多分持ってるよ‥‥」
あれだけ食べてまだ入るのかよ、逆に凄ぇな!何なんだ?この、出て来るまで待ち続けます的な雰囲気は‥‥。渋々と葡萄パン・あんパンを出す。
「「最高だ!」」
「言えばまだ出てくるんじゃないか?」
「うん、絶対持ってるよ‥‥」
タクマさんが黙ってるはずだ‥‥、この2人化け物だ!どら焼き・ジャムクッキー・ドーナツを出す。
「「至福だ‥‥」」
「いや、すっかり話が逸れてしまったな」
「イトちゃんの作るものが美味しいから仕方ないよね」
「それでさっきのパン屋が、他のパン屋を潰しているかもしれないという話でいいのか?」
「っ!?知っていたんですか?」
「こちらも商売相手が何軒も急に潰れれば調べる。第一候補として、同業者に目を向けるのは常識だろう?」
「「「「「「お見逸れしました」」」」」」
『おみちょれちた』
『お見逸れ致した?』
「それで?調べた結果はどうだったのさ」
「裏にパン屋の兄がいる」
「パン屋の兄というと‥‥、薬屋か‥‥」
えっ!?誰の兄が誰とか全部覚えてるの?エジムさん凄っ!でも怖っ!
「それより、イトがどうしてパン屋の件を知っているのか聞いてもいいか?」
「実は昨夜パン屋の亭主がオビトの両親が営んでいる食堂に訪れ、パン屋のパンを買え!パン屋に対する営業妨害だからパンの作り方を教えろ!と店内で騒ぎました。
そして今朝再び訪れ、今度はお客さんに提供しているパンも自分に寄こせと言い出し、大量に購入しようとしました。先程のパンはその亭主のパン屋で1つ1,000ギルで売られていたので、推測になりますが自分のお店で転売するつもりだったのではないかと思います」
「あの不味いパンが1,000ギル‥‥」
「食堂に来ていたお客さん達も言っていましたが、パン屋が少ないから不味くても高くても買うしかないみいたいです。一番怖いのは潰した他のパン屋にしたように、今後食堂に対しても妨害工作を仕掛けてくるのではないかということなんです」
「否定は出来ない。可能性は大いにあるからな。先程も言ったが薬屋の兄が問題なんだ。奴の店にはこちらもホトホト困っていてな‥‥」
「やはり薬の値段が下がらねぇのは、薬屋が原因なのか?」
「そうだ。そこにいるメリダが話したと思うが、最近冒険者ギルドから大量に流れてきた薬草類は全てその店が買い取っている。だが一向に薬の値段が下がらないどころか値上がりするため、こちらとしても別の店に売りたいのだ。
ところが何故か他店の<薬剤>持ちが全員怪我や引き抜き等に遭い、現在まともに薬を作れるのが奴の店しかないという状況になってしまっている」
うわぁ~、やり口が全く同じ。薬が必要な人の足元を見て、それを食い物にするなんて絶対に許せないよ!
「あの、冒険者ギルドから流れた薬草類は本来の量と比較して、どの位の期間分に相当しますか?」
「この2週間で急激に増えたが、これまでの平均と比べれば約1年分に相当するな」
あれ?メリダさんからは毎日薬草100本、魔草20本、癒やし草10本って聞いたけど‥‥。ちらっ、舌をペロっと出して笑えば許されるとでも思ってるのか!?まあ、可愛いから許すけどさ‥‥。そもそも高騰している原因が薬草類の不足だと思っていれば、確かに必要だもんね。
「ではその薬屋は、少なくとも既に1年分の薬草類を溜め込んでいるということですね?」
おぉ!?来たよ!我らがエース、オビトさん!
「結果的にはそうなってしまった。こちらも、売らなければ腐ってしまうものを抱えている訳にはいかないからな」
「そうですか。それなら今後一切薬草類を納めなくても、冒険者ギルドは責められませんよね?」
「むっ!?」
「だってそうですよね?結果として、1年分もの薬草類をきちんと納めたにも関わらず、薬の値段を意図的に高騰させるような店に薬草類を売ったのは商業ギルドのミスですから。それをまた冒険者ギルドに催促するのは、お門違いもいいところだと思いませんか?」
「‥‥‥‥‥」
「まさか催促しようとしていたんですか?納めたところで、またその薬屋にしか売る手段を持たない商業ギルドでは手に余るだけですよ。原因がわかっているのでしたら、先にそちらをどうにかしたら如何ですか?」
「君‥‥名前は?」
「オビトです」
「オビト、良ければ私の後を継がないか?」
「ダメ!ダメったらダメ!オビト君に先に目を付けたのは私なんだからね!」
「しかしその様子では断られたのだろう?」
「ぐぅっ!」
「ならば問題はない、どうだ?」
「お断りします、全く興味がありませんので」
「ふっ、即答か。まあ先は長い、よく考えてくれ」
このやり取り何処かで‥‥?ああ、狸と狐はやっぱり似てるんだね、うぷぷ!
薬屋にこれ以上薬草類を渡さないことも勿論だけど、明日から製作期間に入るからヤミルさんのために先手を打ったんだ。流石オビト、いいとこあるじゃん!
「気になったんだが、具体的にはどうやって潰してんだ?」
「いつもいつの間にか潰れてるよね」
「言われてみればそうだな」
「確かにそうね、気付いたときにはもうないことが多いわ」
「これも推測になるが、私は冒険者を雇っている可能性が高いと睨んでいる」
「やはりそうか思うか‥‥」
「エジムもか?」
「まあな、後々面倒な破落戸を囲い込むとも思えないからね」
高い金額で雇ってたりするのかな?ちなみにいくら貰えるんだろう?いやいや、そんなことを気にしてる場合じゃないだろ、私!今は悪者について話し合っている深刻な場面なんだから、真面目に考えないと。
‥‥ダメだぁ!真面目にって思えば思う程、くだらないことしか出てこないよ。例えば全員坊主にさせて他の店で扱き使うとか、今まで潰して来たお店を土下座して回らせるとか。
マシなのは全財産を投げ打ってでも賠償させるとか、当面無償で薬を提供させる位か。果たしてこの雰囲気の中でこの意見を発言していいものか悩む‥‥。うんにゃ、悩むような意見は言わないに越したことはない!そうだ、そうしよう!私は貝になるんだ!
「イトはどう思う?」
「全員坊主にして土下座させて扱き使うとか?」
うわぁああ~!?何でこのタイミングで話し掛けるのさ!思わず言っちゃったよ!
「中々いい意見だね、他には?」
「えっ!?そう?他と言われると、全財産を使ってでも賠償させるとか、無償で薬を提供させるかとかだけど」
「実行犯の見つけ方を話してたのに、その先を考えてるなんて凄いね」
「ま、まあね!出来る人間は先の先まで読むものさ!」
「どうせまたくだらないことを考えてただけでしょ?」
「その通りだよっ!なんで貝になれなかったんだ、私のバカぁ!!」
後は大人に任せろと言われたので、オビトと4人で帰宅の途に着くことにする。
「じゃあ、すみませんがお先に失礼します」
「明日から宜しくお願いします」
『タク、メリ、テチ、ヤミ、エロタ、キネまたあちた!』
「「「「ぶはぁっ!」」」」
「あ、うん‥‥、いや、エジムなんだけど‥‥」
「キネとは私のことか?どういう意味だ?」
『其方がエロタであったか、噂は聞き及んでおるぞ』
「う、うわあぁぁん!イトちゃん何とかしてぇ~!!」
「「お邪魔しました」」
『ちゃまちた』
『失礼する』




