宰相の独白
皇帝から内々にと、相談があった。
皇太子の想い人を養女にしてほしいという頼みだった。
いくら、妻の従兄弟とは言え、何てことを言うのかと。
だが、我が家には息子しかいない故に、娘が欲しいという夢が叶うのはなかなか魅力的な気もする。
妻に相談すると、とても喜ばれた。
陛下からは、彼女の現在の状況や生い立ちを聞き、我が家が選ばれた理由にも納得した。
我が帝国では婚姻にそんなに身分や血を重要視していない。
だが、隣国のフローレン王国は違う。
だからこその相応しい家柄が必要と言う訳なのだ。
彼女はアルデリック侯爵夫妻とその息子で、異母弟から不遇の扱いを受けていた。また、生母は幼い頃に死別したそうだが、元王の隠された異母妹だと言う。
元々王太子の婚約者となったのは、か弱い姪を救うための手段だったそうだ。
侯爵家を勘当された段階で、戸籍が改竄され、アルデリック侯爵家とは無縁の王族の一員になるらしい。
が、王国的には探られたくない部分なので、同じく王族の妻を持つ我が公爵家の養女になるそうだ。
2週間後には新しい娘を我が家に迎えられると知り、妻は張り切ってカトレア嬢の為に部屋や婚礼衣装の準備をしていた。