番外編 その2
「部長、ちょっといいですか?」
私は、お昼休みに、部長に声をかけた。
「静田くん、なんだい?」
部長が振り返った。
「あのう、変に思わないでほしいのですが……」
「気になる言い方だねえ。何かあったかい?」
内容が内容なだけに、言い出しにくい。
でも、部下のためにも、ここは頑張らないと!
「部長が、倒れたときに、異世界が見えたり、行ったりしませんでしたか?」
私は勇気を振り絞った。
一瞬、時が止まる。
「どうしたんだい、静田くん!?」
部長の目が、大きく見開かれた。
「確かに、長いこと入院はしていたけど、天国が見えるような重体ではなかったぞ?」
「いやー、また倒れないように、飲みすぎには注意しないとなっ!」
「静田くんも、倒れたじゃないか。君も飲みすぎはダメだぞ」
ハッハッハと笑いながら、部長は行ってしまった。
一人残された私は、顔が赤くなるのを感じた。
恥ずかしい。
かなり恥ずかしい。
そうだ、部長の性格だったら、異世界に行ってきたら、大声で言いふらしそうだ。
それに、永瀬くんだって、はるかさんに話すに違いない。(はるかさんなら、わあ!私も行ってみたい、なんて言いそうだ)
ということは、やっぱり偶然が重なっただけ?
転移したのは、私だけだったのかな?
私は、違う方向から考えることにした。
私の課の場所が、風水的に良くないとか?
お祓いとかしてもらったほうがいい?
そうだ。ラスターが初詣をしてみたいって言っていた。
その時に、みんなに健康のお守りを買ってこよう。
効果はあるか分からないけど、とりあえず、自分を納得させた。
――よし、午後の仕事を早く終わらせて、今日は私が晩ご飯を作ろう!
メニューは、どうしようかなあ、と考える私。
以前なら、仕事中にこんなことを考えるなんてありえなかった。
好きな人がいるって凄いことだ。
「おーい、あの資料、出来ているか、永瀬くん?」
いつもの調子で聞く部長。
そんな部長が、
「危なかった。実は、異世界に転移したなんて、誰にも話せない……」
なんて考えていたことを、
私は知らない。
――終――




