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第七十話


 私の前に変な女が現れた。


 クラスは同じだったけど全く興味が湧かない。


 猫目でキンキンとした声。


 容姿は私以上に可愛くてこの学園内では他の子が霞んで見えるくらい綺麗な顔立ちをしてた。


 清潔感もあってオシャレも気遣ってる、長くて真っ直ぐした手足は白くて透明感があった。


 けどそんな事どうでもいいの。


 なんでかって?


 だって今晶くんしか興味がないから。

 

 眠たそうな目元、生気を感じない。


 身体はいつも猫背できっと私が抱きしめたら壊れちゃう。


 いつもそっけない態度してるところも凄く良い。


 私が男子に擦り寄れば簡単に鼻の下を伸ばすのに晶くんは違う。


 そんな晶くんが可愛くて。


 可愛くて可愛くて仕方がないの!


 彼以外の人間なんて視界に入ってこない。

 

 ……けど強いて言うなら山口さん。


 彼女は私の身の回りのお世話をしてくれるしとても頼りになる。


 つまりはメイドとかと一緒よね。


 私と晶くんの生活は甘くてキャンディーのような生活なの。


 口の中でゆっくりと私の体温で溶かして。


 交わっていく。


 そんな最高の生活を送ってたのに!


 私は口の中に入っていた飴が小さくなるとそれを噛み砕く。


 砕けた飴玉は勢いよく溶けて無くなっていく。


 こんなにも甘ったるくてベタベタした生活に余分な物が入ってきてるのよ!


 許せなかった。


 けどそれ以上に。


 怖いの。


 もしかしたら私が捨てられるんじゃないかって……。


 床に落ちた飴をまた口に戻すなんてことはしないじゃない?


 ベタベタしてて色んな汚れが付着して。


 私がもし捨てられたら同じようになる。


 ベタついた飴玉のように……きっと自分ではもう綺麗に戻れない。


 多分寂しさを紛らわすために自分を汚して……。


 色んなものをつけて……もう拾ってもらえなくなる。


 それだけは嫌だった。


 でもきっと晶くんは私を小袋から開けてくれない。


 いっぱいある飴玉からどれか選んでって言われても多分どれも開けることはないんだと思う。


 自分から行動する事は極力避けてるんだと思う。


 だから私が晶くんを食べてあげる事にしたの!


 私って優しくて可愛いから晶くんが床に堕ちても全部綺麗に舐め取ってあげる!


 でも気をつけなきゃ……。


 私って小さくなったキャンディーはすぐ噛み砕いちゃうのよね。


 「ゆ、柚木さん?柚木さんの番ですよ?」


 私はふと我にかえりテレビ画面に映るスイカ鉄道を見る。


 あ、そっか私山口さんとゲームやってたんだ。


 なんだろう……今何かに呑み込まれていたような?


 私の中にある本性?本質みたいなのが奥底から覗かせていたような気がする。


 怖い。


 いつかこれが私を飲み込んでこの関係性を終わらせちゃうんじゃないかって。


 不安で仕方がない。


 鼻の奥が痛い。


 背中もムズムズする。


 落ち着け私!


 我慢が出来るようになったんでしょ!?

 

 現状で満足でしょ!?


 いや……そうじゃないのかも。


 前までの私ってどうしてたっけ?


 あの時の中学生の時とか。


 あの時は確か全部壊しちゃえばいいって。


 本気でそう思ってた。


 だって行動しなきゃ自分に都合のいいようには動いてくれない。


 誰かが勝手にやってくれるなんて事はないのだから。


 だから動かなきゃ。


 これは自分自身を守るためでもあるの。


 なにから?


 ……?


 あ、そっか私って。

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