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第四十九話


 二学期が始まって一週間近く経った。


 俺はいつも通り山口と柚木と教室の隅でお昼を食べようとしていると。


 「ちょっとあんた、ウチと大谷くんが付き合えるようにサポートしなさい」


 変なのに絡まれた。


 何やら腰に手を当て偉そうに上から目線で言ってくる。


 「絶対嫌だ」


 そんなお決まりの展開お断りだ。


 と言うか人が気持ちよくお昼食べようとしている時にいきなりなんなんだこの人は?


 迷惑だから話しかけないでほしい。


 「いいから手伝いなさいよ!」


 全力でほっぺをつねってくる小鳥遊。


 俺は表情一つ変えずに無視してやった。


 「どうせあんたみたいなモブキャラ暇してんでしょ!?特に変化もない同じような一日を過ごすくらいならウチの手伝いしてる方が色も着くで……しょ!」


 なっ!……こいつ分かってないな、あと首痛いから離してほしいあと胸が当たってる。


 俺は小鳥遊を振り解き視線を合わせる。


 瞳は緑色で宝石のように輝いている。


 こんな整った顔立ちの人間をまじまじとは見れない。


 「なんで目線逸らすのよ!」


 俺はそっぽ向いたまま。


 「いやいや……モブキャラって案外難しいんだからな、いかに目立たないよう陰に潜み……だが!メインキャラの近くに存在しなくてはならない、じゃないとモブキャラにすらもなれないからね、しかし美味しいところは頂きながら周囲の評価はまぁ一応こんなキャラ居たなとふんわり存在感を出しつつも物語には関わらなくちゃいけないーー」


 これがどれほど難しい事なのか常にカメラを向けられている彼女には分からないのだろう。


 俺は日々モブキャラとはどうあるべきなのか考え研究してそれを実行している。


 コツとしては人集りが出来てたら何となくそこに居るとか試合があったら準々決勝くらいまで行くとか。


 それくらい微妙なポジションを保つ事だね。


 「はぁ!?なに訳わからないこと言ってんのよ!?キモすぎ!て言うか……手伝わないならあんたがいますぐにでも目立つようにーー」


 「分かった……分かりましたよ手伝いますよ……はぁぁ〜」


 分かりやすいくらいの大きなため息を吐いてやった。


 小鳥遊は悪女の笑顔をこちらに向けている。


 この人転校生なんだよね?


 クラスカーストが一番下の俺に目をつけたのかな?


 それならほんといい性格してるね。


 もちろん皮肉です。


 山口に帰り遅くなると視線で伝えるとコクコクと頷いてくれた。


 「なによ?誰にアイコンタクト送ってんのよ?」


 「そんな事より、第一俺は大谷と接点少ないからね」


 正直これ以上ハイスペックなヒロインキャラと会話するのすら避けたいところなんだが。


 柚木で手いっぱいだし何なら手に負えないし。


 けど断れば何をされるか分かったもんじゃない。


 まぁ手短に終わらせて適当に相手すればそのうち飽きてくれるでしょ。


 と言うかなんでよりによって俺なのかな?


 向こうの二人組とか凄い話したそうにしてるのに。


 「そうね……まぁいいわ、まずは何処か遊びに行くのよ」


 「何処に?」


 俺がそう質問すると頭を叩かれた。


 痛いんですけど。


 「そんなの何処でもいいの!カラオケでもボウリングでも!そこで大谷くんと二人きりになればあとは雰囲気とノリと勢いでゴールよ!」


 あぁ、この子あれですわ。


 多分あんま頭良くないわ。


 いたっ……何故か頭を叩かれた。


 「なんで?」


 「なんかムカつく顔してたから」


 なんて理不尽。


 「とりあえずそれであんたは大谷くんと女子一人を誘って合計四人で行くの、分かった?」


 「いや、全く分からん」


 「そう?じゃあ分かるまでーー」


 小鳥遊が拳を上げるので俺は降伏のポーズを取る。


 「分かりました、とりあえず誘えばいいんでしょ?」


 「そうよ!あんたはウチが動きやすいようにサポートして引き立ててくれればいいのよ!頭悪いのね!」


 本当にめんどくさい。


 あと声でかい。


 俺はどうしてこんなにも面倒ごとに巻き込まれるんだ。

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