夏休みその7
『それではまずサイコロを振ってください!黄色いマスはアイテムマス・青いマスはプラスマス・赤いマスはマイナスマス・建物のマスは物件になっています!』
私と柚木さんは同じモニターに向かい真剣な表情をしています。
今日の夜ご飯をどちらが作るか……勝った方が今日の晩御飯を作ることが出来ます。
私はこの勝負に勝って麻婆豆腐を作ってみせます!
「それじゃあ私の番ね……よし!6がでた!このままガンガンゴールに向かっていくわよ!」
やはり……柚木さんはゲームプレイの経験もあって頭も良いですがこのゲームの抜け道を知らないようですね。
このゲームには必勝法があります。
今回のバトルも私が勝たせてもらいます!
『それでは亜衣社長!サイコロを振ってください!』
「あ!山口さんも6ね……って、そっちはゴールと逆の方向じゃない?……そっか!先にアイテムを豊富に持って置いて序盤は相手に譲るって事ね……そんな動きをされたのは初めてよ……」
流石柚木さん……もう気づかれましたか……。
けど実はこの戦法はそれだけではありません。
この三年モードにのみ使える有効手段があるのです。
序盤にアイテムを集めるのも定石ではありますが。
「柚木さん、私は手を抜きませんから!大人しく今日は私の麻婆豆腐を食べて貰います!」
たじろぐ柚木さんは私の圧に押されてるみたいですね。
そしてさらに余裕の表情を見せることによって相手に不安を煽らせます。
「わ、私だって!そもそもこのゲームはゴールから遠いとやつが来るわ!アイテムだろうが良い物件だろうが全て奪っていくわ!」
確かに……ゴールから離れれば離れるほどプレイヤーとの距離も開き奴をなすりつける事が出来なくなります。
……ですが!
数時間後……。
「う、嘘でしょ……」
『亜衣社長おめでとう御座います!プラス収支一兆円で圧勝となりました!物件数0アイテム使用回数4それではまた!』
この三年モードにのみ許される有効打法……それは。
「宝くじマスでループする事です!」
「こんなんずるじゃない!なんで貰える金額がこんなに多いのよ!?」
膨れる柚木さんも見てて可愛いです。
ですがこれは勝負です。
勝つためには手を一才抜きませんし勝つためには手段も選びません。
「この三年モードは短期決戦型なのである程度レートの上がった状態でスタートしています、だからアイテムも優遇されていますし宝くじの配当金も優遇されていると言う事です」
私が一人で編み出したこのゲームの必勝法。
けどこうやって誰かとゲームするのって凄く楽しいです。
本気で勝ちに行って一つ一つに一喜一憂して。
本来ゲームってこうあるべきなのかもしれませんね。
もちろん一人でやるのも楽しいですが。
誰かと同じ時間を共有してコミュニケーションをとって。
仲良くなるきっかけにもなるかもですし。
「認められないわ!今度は普通のモードで勝負よ!山口さんの戦法をフルに活用して今度こそ勝ってやるわ!」
「ふふん……良いですよ、何度でも受けてあげます!」
……そして数時間後。
「や、やりますね柚木さんですが残り82年もあります!勝負はまだまだこれからです!」
「山口さんこそ、ここまで私を本気にさせるなんて!独占をなんとか崩さなきゃいけないわね!」
熱い握手を交わす私たち。
その背後に人影が。
「あの……帰ってきたんだけど夜ご飯って出来てるの?」
「「あ」」
すっかり忘れてました。
勝負はお預けです。




