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花をあげよう  作者: 花咲 匠
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第二話 花屋の日常 Part,2

 順調に花の仕入れを終えた優は、買った花をゴルフに積み込み、隣に美紀に声をかけた。


 「もうすぐ、春ですからねぇ。 いい花が手に入って、良かったですよ」


 呑気にそう言うと、若干不機嫌そうな声が返ってきた。


 「優さんがのんびりしてたから、今日の目玉商品は売れた後でしたけどねっ!」


 「まぁまぁ、それはそれで、こういう掘り出し物が見つかったので良かったではないですか」


 先程手に入れたオレンジ色の花を持ちあげて、笑顔と共に言う。

 その笑顔にどぎまぎした美紀は、なんとなく顔を逸らしてしまう。


 「確かに、優さんのおかげでいい花が手に入ったから良かったけどさ……」


 「それなら、いいじゃないですか。 終わりよければ全て良しってね」


 顔を逸らした美紀には気付かず、自分の車に花を積み込む優。

 それほど、量はないので手早く積み込んでしまう。


 「ん? どうかしましたか?」


 美紀がこちらをぼうっと見ているので首を傾げる。


 「いえいえ、なんでもないです! あぁ、もうこんな時間ですか!? 早く積み込まないと、優衣さんに怒られるっ!」


 優衣というのは美紀の店の店員であり、花屋『ギフト』の常連さんでもある。

 美紀の店では、経理担当となっていてあまり遅いといつも恐い顔で説教されるらしい。

 いつもは穏やかに微笑んでいる京美人みたいなヒトなので、優は全く想像もつかない。


 「では、手伝いましょう。 遅くなったのは私のせいでもありますしね」


 そう言い、美紀の手から花をひったくり、有無を言わさぬ勢いで手早く積み込む。


 「しかし、あの美人な優衣さんが怒るところを見てみたい気もしますねぇ」


 呟く優を、初めて見るものでも見る目で美紀がみる。


 「物好きですね、優さん。 見ないほうがいいですよ。 絶対イメージ崩れますから」


 その言葉に微笑みつつ、車のトランクを閉める。


 「優しい美紀さんがそこまで言うとは……やはり一度、見てみたいですね。 積み込みは終わりましたよ」


 「あ、ありがとうございます。 すいません、ほとんどやってもらって」


 「いえいえ、これくらい何度でもやりますよ。 それでは、お互い今日も頑張りましょう」


 さわやかな笑顔でにっこりと言う優。


 「そうですねっ! がんばりましょうっ!」


 嬉しそうに言う美紀だが、持っているかばんから携帯の着信音が鳴る。


 「あっ、すいません。 ちょっと待ってください」


 「いえいえ、どうぞ」


 嬉しそうにしていたため、誰からの電話かを確認せずに通話ボタンを押す美紀。

 嫌な予感がしていた優だが、それを伝える前に電話を取ってしまった。


 「はい、もしもし、高城ですけど……」


 『ちょっと、美紀!! どこで何してるのよ!』


 とてつもない大声で電話に向かって話しているのか、自分の車のトランクを閉めに行った優の耳まで聞こえてきた。


 「ゴメン、優衣さん。 今から帰るから……」 


 『今から!? まだ市場にいたの!?』


 「うん、そうだけど。 ちょっとバタバタしていて……」


 『今、何時だかわかってるの!?  もう8時半よ、8時半っ! 早く、戻ってらっしゃいっ!』


 優衣の怒ったときの声が聞けて、少し面白かった優だが、美紀が可哀想になってきたので、電話を変わる。


 「どうも、優衣さん。 お元気ですか?」


 『その声は……優さん!? なんで、あなたがそこに?』


 「いえ、おたくの美紀さんと一緒に仕入れていたのでね。 それに、美紀さんは悪くありませんよ? 私がのんびりしていたのが原因でこんな時間になってしまったので」


 やんわりした対応に、怒りの勢いを減じされる優衣。


 『あぁ、そうでしたの。 それなら、仕方ありませんけど……この責任はどう取ってくれるのですか?』


 悪戯っぽい声で言う優衣。

 こんな展開になるとは思ってもいなかった優は救いの目を美紀に向けるが、当の本人はわざとらしく遠くの空を見ている。


 「えぇー、では今度ウチにいらしてください。 ご馳走しますので」


 苦笑と共に誘う優。

 花屋になる前は、洋食屋で働いていたので、腕には自信があるほうだ。

 というのを、前に話したところなぜか、恍惚とした顔で「料理もできるんですね、優さんは」などと言われたのである。

 それから、なにかと来たがっていたので渋々、了解してしまった。


 「それなら、私もご一緒してよろしいですかっ!」


 側で聞き耳を立てながら聞いていた美紀が大声で優衣にも聞こえるように言う。


 「二人分も三人分も変わらないので、いいですよ。 いいですよね、優衣さん?」


 そう向こうにいる電話相手に聞く。


 『……いいわよ、別に。 ちょっと、美紀に代わってくれる?』


 妙な間が空いた優衣に疑問を感じつつ、携帯を美紀に返す。


 「はい、代わってくれ、だそうです」


 「ありがと。 優さんは先に帰ってていいですよ」


 「では、お言葉に甘えて」


 そういって車に乗り込み、美紀に挨拶をして、エンジンをかける。


 「それでは、また今度」


 「はい、また今度」


 控えめだが、手まで振ってくれる美紀に手を振り返し、アクセルを踏む。

 優が完璧に駐車場を出てから、美紀は優衣に話し出した。


 「ちょっと! 何、抜け駆けしようとしてるのよっ!」


 『あらら、失敗しちゃったわね。 けっこう小さめな声で話してたつもりだけど?』


 「フフッ、甘いわね。 そこは優さんに密着しながら、聞いたわ!」


 『なんですって!? 私でさえそんなコトしたことないのに』


 「残念でしたねっ! これで私のほうが……」


 などと優の与り知らぬところでこの会話は美紀の店の開店時間まで、続くのであった。


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