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花をあげよう  作者: 花咲 匠
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第十九話  急げ急げっ!!

 不思議な雰囲気の少年、深夜とトラブルの後に別れた3人は、優のゴルフに乗り込む。

 ここまで、特に多くを語らない優に何を言ったらいいのかわからず、ただ黙って優衣と美紀の二人は付いてきたが、優がケータイを取り出し、厳しい表情で画面を見ているのに気付いた優衣は声をかける。


 「どうかしたんですか、優さん? 顔色が悪そうですけど」


 心配そうに尋ねる優衣。

 それに対し、引きつった顔で応える優。


 「で、電話が…………美咲さんから、電話がかかってきてましたっ!!」


 優衣は、すでに一人の人物が優の家に招かれているのを電話で伝えられていたので、その美咲という人物がそれだろうと察した。


 「こ、このままでは、美咲さんになんて言われるかっ!? どうしましょう、電話を返したほうがいいですかねぇ……………」


 「……………………美咲って誰です?」


 この先に起こりそうなコトを考えて、ゾッとする優に、かなり不機嫌そうな声音で美紀。

 おそらく、自分と優衣以外に招かれた客がいるとは思ってもみなかったのだろう。


 「アレ? 優衣さん、言ってなかったんですか?」


 「えぇ、そのほうが面白いでしょう?」


 「面白くなぁぁぁぁぁいいいいい!!」


 首を傾げた優に、悪戯っぽい笑顔で告げる優衣。

 そんな優衣を見て、叫び声を上げる美紀。


 「うふふ。 ねぇ? 面白いでしょう?」


 「…………美紀さんで遊んでますね」


 「そうよっ! なんで、いつもあたしがこんな目に遭わなきゃいけないのよ!?」


 美紀を面白そうに見つめながら悪びれもせずに言ってのける優衣。

 その言葉に不憫さを感じ、呟く優と、それを肯定する美紀。

 みんなのやりとりが可笑しくて、たまらず優衣は笑い出す。

 それにつられて美紀も笑い出し、優は微笑みながらそれを見る。

 先程みたいにどこか無理をしたような笑顔ではなく、屈託の無い笑顔だった。


 「やっと、ちゃんと笑ってくれましたね」


 安心したような顔でそう言う優に、気恥ずかしさを覚えて俯く優衣と美紀。

 やはり、気を張っていたのが優にはバレていたのだ。


 「あはは、流石にあれだけの大立ち回りをした人物には、隠し切れなかったかぁ~」


 「やっぱり、優さんには敵わないわね~」


 優衣は空を見上げ、息を吐きながら言う。

 美紀も同じように言う。


 「さてと、じゃあ、行きましょうか。 ささっ、早く車に乗ってください」


 場を締めくくるように行った優の言葉に、女性陣二人は争いの種を思い出す。

 優はそのために逃げたのだが、よもや自分で地雷を踏んでしまった。


 「「あっ!! じゃあ、助手席はわたし(あたし)ねっ!」」


 見事に被った二人の言葉で自分が何をしたかを思い出し、やってしまったと言わんばかりの顔になる。

 その言葉を発した二人は、互いを睨みつけながら一歩も引こうとしない。

 修羅場突入かと肝を冷やした優だったが、さらに追い討ちをかけるような出来事が起こる。


 「じゃあ、優さんに―――」


 そう言いかけた美紀の言葉を遮るように優のケータイに着信が入り、バイブレーションが振動する。

 焦っていたからだろう、誰からの電話かを確認せずに、そのまま通話ボタンを押す。


 「はい、もしもし! 助かりましたよっ!」


 普通に応答してからいらぬことまで思わず言ってしまう優。

 そんな不可思議な単語に機嫌を悪くする電話の相手。


 『なにが助かりましたよっ! いつまで、私はここで一人で待ってなきゃいけないわけっ!?』


 不機嫌たっぷりの声音でそう電話の相手は怒鳴り声を出す。

 近くにいた優衣と美紀の二人にまでその声は届いており、驚いて口論を止める。 

 「げっ、美咲さんですか?」


 「なにが、『げっ』よ。 ヒトを散々待たせておいて! 今、何時だと思ってるのよ!」


 心の中で思っていたコトがモロに出てしまい、電話の相手、美咲はさらに機嫌を悪くしたように優を責め立てる。

 美咲の言葉に従い、自らの腕時計を確認する優。

 時刻はすでに18時を過ぎており、15分もあれば戻ってくると言って、家を出てからすでに40分も経っており、それは怒るだろうと納得した。

 いくら、トラブルがあったとはいえ、全く連絡をしなかったのは悪かったと思ったので素直に謝る。


 「すいません。 全く連絡も寄越さずに、長い間待たせてしまって」


 『う、うん。 わかったわ、なるべく早く帰ってきてよね!』


 素直に謝った優に勢いを削がれた美咲は、多くは言わずに謝罪を受け入れてくれた。

 だが、優としては理由もあるので、それも一応言っておく。

 自分の正当性を裏付けるために。


 「あ、でも、遅れたのは私が悪いんじゃなくて、ちょっとしたトラブルがあったんですよ」


 『トラブル?』


 珍しく優が言い訳をするので、不審そうな声音半分、心配そうな声音半分で美咲が聞いてくる。

 その美咲に、声を潜めて本当に大事件があったように言う。


 「そうなんですよ。 不良に絡まれてしまいましてね。 それの後処理がいろいろと―――」


 だが、効果はイマイチ。 というか、逆効果だったりする。


 『それでも、優さんならもっと早く済ませることができたでしょう!? 言い訳はいいから早く帰ってらっしゃい!!』


 「は、はいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


 優の話を聞いていた美咲からすれば、そんなコトぐらいでっ!という認識だったので、ピシャリと言い放つ。

 美咲の電話越しの剣幕に気圧されて、優は情けない声を上げる。

 優衣と美紀は、電話の相手に終始会話のペースを握られている優をみて、さきほどの大立ち回りをやらかした人物にはとても見えないと感心したように見ている。

 器用な真似ができるな、と。

 その後、何度かやりとりを交わした優は、白い顔になって後ろで見守るように立っていた二人に声をかける。


 「早く、行きましょうか。 で、どっちが助手席に座るか決まりましたか?」


 「いや、まだ―――」


 「じゃあ、ジャンケンで決めてください。 早くっ!」


 二人の言葉を聞くや否や、条件を指定して急かす優。


 「わ、わかったわ」 


 「ゆ、優さんがそう言うなら…………」


 二人も乗り気ではなさそうだが、とくに反論せずに従う。


 「「最初は、グー! ジャンケン、ぽい」」


 二人できれいに声を合わせながらジャンケンをする二人。

 それを近くで見守る優。

 その目は早くしろと急かしているようにも見えた。


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