3月
「もう来週からは四月なのに、雪溶けはまだまだだね」
「まだ寒いですからね。五月に入るまでは溶けないでしょう」
「うむ。早く後輩ちゃんのビキニ姿を見たいのになぁ。まだかなあ。待ち遠しいよ」
「それは先輩が死んでも見れませんよ。なので死んでください」
「死んでも見れないって言ったばかりなのに!??久し振りの公園デートなのに厳しいよ!!」
「一万歩譲って出てあげたんです。感謝して欲しいくらいですよ。ところで、もう部活は引退したという記憶があるのですが、どうしてここに呼び出したのですか?」
「部活か。そういえば、そんな名目で呼び出していた時もあったなあ」
「部活の行動理念を思い出して欲しいのですが」
「え?後輩ちゃんと会話する口実だけど、何か?」
「何か?じゃないですよ。まったく。付き合わされていた私の身にもなってください」
「僕ら、付き合ってたのか……照れるなあ」
「誤解です。……はあ。だから、言葉を十分に理解出来ない人は嫌いなんです」
「むむっ。心外だなあ。僕だって人並みに言葉を理解出来てるよ。難しい言葉だって言えるし」
「…………」
「なにその目。信じてないでしょ。まったく、『鶴の一声』みたいな視線を向けられても困るんだよ」
「…………はぁ」
「うん?」
「相変わらず、先輩は先輩ですね。かわりなくて安心しました」
「褒められてる気がしないけど、どうしてかなあ。何で菩薩のような暖かい視線を向けられてるのだろう」
「先輩に何かプレゼントを送る機会があったら、電子辞書を送ります。常に肌身離さず持っていてください」
「こ、後輩ちゃんだと思ってってかい?大胆だなあ」
「先輩の社会適応のためですよ。失言しかねないですからね。先輩だったら、上司に対しても謝った語を使いそうで怖いです」
「失敬な。これでも、先生方には好かれていた僕だよ」
「好かれていたというよりは、厄介がられている様に思えたのですが。先輩は留年していますからね」
「確かに。先生方の視線には諦めも入っていた気がする……」
「でしょうね。私が先生でも同じ行動をとっていたかもしれません」
「後輩ちゃんが先生か。ミニスカで教壇立つ姿を想像しただけで萌え禿げる」
「燃え禿げる……?火でもあるんですか?」
「ちらっと見せる天然とか可愛いすぎてもう、吐血、喀血、下血」
「先輩にしては難しい言葉を知ってますね。後者は是非ともやめていただきたい出血ですけど」
「ちなみに、喀血と吐血は両方とも口から出るけど別物なのでご注意を」
「……急に真面目キャラぶりっこしても無駄ですよ。先輩には合いません」
「大丈夫。後輩ちゃんの家を監視してる時にたまたま医学書院の教科書が目に入っただけさ。偶々だよ」
「それくらいの変態加減が先輩らしいです」
「こ、後輩ちゃんが監視を容認してくれているだと!?」
「監視の件については警察と話し合って訴訟を起こす段階まで来ているので、安心してください」
「安心できないよ!??僕、捕まっちゃうじゃん!!後輩ちゃんのスイートプリンスが捕まっちゃうよ!??」
「犯罪を犯したのは先輩です」
「ごもっとも!!反論できない!!」
「まあ、冗談ですけど」
「そりゃ良かった」
「でも、監視は止めてください。私だってプライバシーがありますから」
「とか言って覗くけど(分かった。気を付けるね)」
「…………台詞と思考が逆です」
「え、あ、ああ。聞いちゃった?……えへへー。まったねー!!!」
「逃げるのは、……卑怯です」




