10月
「…………」
「泣きそうな目で扉を閉めるのは止めてもらって良いですか。先輩が私を呼んだんですよ」
「だっ、だって後輩ちゃんが勉強してるからぁあー」
「本気で泣かないで下さい。情けないですよ。それに私達受験生が勉強しなくてどうするんですか」
「後輩ちゃんは勉強しなくても良いじゃないか、推薦なんだから」
「でも、先輩は一般受験ですよ。どれ程点数取れば合格出来るか、オープンキャンパスで聞きませんでしたか?」
「ずっと学食食べて、講義聞いて、学食食べてた」
「一人一枚しか持っていない学食チケットなのにどう工面したんですか」
「無防備に持ってる若者の手からスリ取った」
「そこで先輩の秘められし才能は見たくなかったんですけど、先輩らしい特技で安心しました」
「褒められてる気がしない」
「じゃあ、勉強しましょうか」
「どうしよう。後輩ちゃんと二人っきり♥なドキドキイベントな筈なのに、今すぐ帰りたい。心底帰りたい」
「今までも二人っきりだったじゃないですか」
「え、なに?襲って良いよっていう意思表示?」
「一変死んだら良いと思います」
「ちょ!コンパスはそうやって使うものじゃないの!!凶器じゃなくて、文房具なの!!」
「まったく……先輩ときたらすぐにはぐらかして勉強しようとしないんですね。何の為に集まったと思っているんですか」
「会話同好会の名のもとに、会話を楽しもうと思ってました。ごめんなさい」
「……はあ。先輩がそんな調子でしたら会話しませんからね」
「ううー、じゃ!じゃあ!勉強するからこの三十分位は会話しよう?ね?ちょっと位は息抜きも必要だよね?ね?ね?」
「気持ち悪い勢いですね。死んでください」
「じゃあ、部活は月に二回にするから!それなら良い!?勉強なんて一人でも出来るよ!!」
「……先輩がそこまで言うのなら、分かりました」
「本当!!!?」
「偶数週は会話、奇数週は勉強にしましょう」
「やった………………ん?それって月四回だから結果的には回数は変わってないし、それに勉強って、えっと、え?」
「勉強は部活ではありませんよ。ただの、先輩との受験勉強です」
「くううっ!!!騙された!!!」
「騙してませんよ、それでは定時ですので」
「またね!!!!」




