12月
「やあ、後輩ちゃん。この年の終わりに後輩ちゃんという素敵な女性に会って終われたことを嬉しく思うよ」
「…………」
「ぴきゃぁぁぁぁぁあっっっうあわあわあわあ!!?????」
「あら、扉が閉まらないですね。ソーセージでも挟まっているのでしょうか」
「違うっ!違うっ!それは僕のか弱いか弱い、指で後輩ちゃんが挟んでるの!!ソーセージじゃない!!」
「へえ、そうですか」
「あ、……はあ。やっと離してくれた……あー、良かった。僕の指付いてる……」
「良かったですね」
「うんうんって、閉めないで!!?僕の必死の努力で開けた後輩ちゃんの扉を閉めないで!??」
「説明しながら叫ばないでください。近所迷惑です」
「だったら早く家の中入れてよー。寒いよー。甘酒持ってきたからサー」
「甘酒だけで入れると思ったら大間違いです。けど、今年最後に人助けをして善行を積むのも悪くないですね」
「僕を入れることって善行なの!?」
「入る代償として貴方は声を失います」
「人魚姫的設定あったんだ」
「失います」
「……はい」
「全く、私は最後の日に先輩に会いたいと思ってないですけど、何で来るんでしょうかね」
「……(後輩ちゃんに会いたいからに決まってるさ!)」
「仕方がないから部屋に入れます。下に親がいるので静かにしてくださいね」
「……(ナニその設定!萌えるんだけど!親がいるからこそ声を殺してナニするんでしょ!?)」
「先輩は宿題は終わらせましたか?」
「……(二人でいる時にそんな怖い話をしないでぇー!)」
「ブンブン首を振ってる所から見ると、全くやってないのですね。持ってきましたか?」
「……(うっ、言われると思った)」
「泣かないでくださいよ。私が苛めているみたいじゃないですか」
「……(だって後輩ちゃんが宿題だなんて怖いことを言うから。あ、甘酒どうぞ)」
「あら、ありがとうございます。でも、私ホンの少しでもアルコールを取ると危険なことになるのですが良いのですか?」
「……!!!(淫乱後輩ちゃんになるの!?あー熱いわ、とか言いながら胸元を露出させて僕がどぎまぎしてるのを妖艶な笑みで見送って脱ぎ出すんでしょ!?うぇるかむ!!)」
「そ、そうですか……では、今後の責任は取りませんから。先輩の自己責任にしてくださいね」
「……っ!!!っ!!!(呑んで呑んで呑んで、呑んで呑んで呑んで、呑んで呑んで呑んで、いっき☆)」
「……ぷはぁ」
「……(お酒弱い後輩ちゃん可愛い!!一口呑んだだけなのに頬を真っ赤にして目をとろーんとさせて、次の瞬間に脱ぐかも!?)」
「おい、先輩」
「っ!?っ!!!??(え、今のドス聞いた声どっから聞こえた!?)」
「あんたさぁ、いい加減、うちにセクハラすんの止めろやな」
「…………後輩ちゃん?」
「大体な、後輩のことをちゃん呼びとかきめぇんだよ。さぶイボ立つわ。死んでまえ」
「…………ねえ、聞こえてますか?」
「触れんじゃねーよ。汚ねぇし、臭ぇなあ、おい。つーかお前、うちのこと好きやろ。なあ?丸わかりなんだよ」
「え、や?ちょっと待ってください。淫乱ビッチ後輩ちゃんはどこですか?」
「はぁー?意味分かんねぇ。うちが淫乱とか、お前まじで死ねや。うちが優しいだけで社会的にはあんた、セクハラの罪でブタ箱やからな?あ?」
「あ、はい。誠に仰有る通りでございまして……」
「てか、あんた来年もう受験生やで?志望校決めてるんか?あ?赤点になってる暇ないやろが。うちが勉強教えてやってんやから、ちゃんと百点持ってこんといてまうぞ?」
「あ、はい。分かりました」
「ええか?分かったな?せやかて、あんたは口だけやからのー……うし。契約書書かせたる」
「へ?あ、はい」
「ほーほー。そこに母音押してな、次回のテストで一教科以上百点取ります……っと。駄目やったらうちがあんたを警察に突き出す。ええな?」
「はい、はい」
「ほな、帰れ。とっとと失せろ。うちの家におる場合やないやろ。さっさと勉強せい。あんたはやりゃあ出来るんやからなぁ」
「あ、はい。分かりました。それでは、良いお年を」
「おん。来年こそは進級せえよ。またなー」
「えっ、あ、はい……!」




