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ウラステージ【ロ】

ウラステージ ロ


 階段は降って行く。延々と地の底に続いているかのように。次のステージまでは距離が結構あるようだ。途中でくたびれた玉雄は、階段に腰を掛け、リンゴを齧り小休止を取る。

 石で造られた階段と周囲の壁は冷やりとして気持ちが良い。火照った身体が冷めていく感じがする。余り長い時間腰を掛けていると体を冷やしてしまう感じがしてくる。


 ――何をそんなに自己満足に浸っているのですか


(何を言っているの)


 ――救っても仕方がないものばかりではないのですか


(そんなことはないと思う)


 ――貴方はどんな見返りを求めるのですか


(皆が救われること)


 ――その中に貴方は含まれているのですか


(……)


 ――自分を救えぬ者にヒトを救えるのでしょうか


(分からないよ。僕はただ皆を救いたいだけだ)


 ――なら、スキルを与えましょう。万能で、何者にも負けない


(いらない。それは不公平だから)


 ――愚かで素直な子、貴方にふさわしき力を……


『?#!%“&――全環境耐性スキルを取得しました』


 ハッと目が覚める。少しの間、目を閉じ眠ってしまったことに気付く。少しだけ身体が冷える。


(また、夢を見たのかな? おかしいの)


 現実世界で眠り、ゲームの世界でまた眠り、更に夢まで見ることが不思議でしょうがない。最後に何かを言っていたようだが良く覚えていない。所詮は夢なのだ。


 玉雄は気を取り直して先に進むため階段を下って行く。階段の先に明かりが見えてくる。どうやら次のステージの入口が見えてきたようだ。


 キラキラと光る何かが上から降り注いでくる。幻想的な風景だと思ったが、地面を見て降り注ぐ物の正体を知る。砕けたガラスの欠片が常に降り注いでいるのだ。

 そっと、地面の上に足を乗せる。不安定な足場として判定されたのか、ガラスの破片より数センチ浮かんだ状態になったことにホッと一安心をする。


 だが、露出した肌の部分が降りしきるガラスに触れると異変が生じる。痛みを感じ、肌がわずかに切れ血が出ていることに気付く。慌てて、ライフポイントを見るが変化は生じていない。


(行動阻害系の環境なのかな。これはこれで厄介かな)


 手をポケットに入れておく。袖口の中に隠そうかとも思ったが、工具投げの時に面倒だと思いポケットに手を突っ込むことにした。

 前のステージから引き続き、襟首を立てなるべく顔の部分を覆ておく。頭の部分は隠すものがないものの髪の毛があるせいか、あまり影響はないようだ。


 気を取り直して、歩いて進み始める。走ればガラスの欠片で靴はズタズタになり、足を痛めてしまう事だろう。


(ああ、ここは開発担当の人がいた所だ……)


 電脳世界にダイブした結果、現実世界で直接的な被害をこうむった、初めての人間。


 チクリと胸が痛む。

 

 他人だから、僅かな痛みなのかも知れない。しかし、その痛みは靄となり何時までも残り続け、時折思い出したかのように心に悲しみをもたらす。


 頭を振り、前へと進む。頭に積ったガラスの欠片がキラキラと舞い落ちて、地面に舞い落ち、積っていく。




 生物が何も存在しないかのような、ガラスの欠片が降り注ぐ世界は静寂に包まれている。静寂が音になり耳にこだまするように聞こえる。音の無い音。ただの錯覚だが、玉雄はその音が余り好きになれない。


(誰もいないのかな)


 ただ、黙々と歩き続ける。赤い光が生じない。白い光もどこにも見えない。時折、ガラスの欠片が顔の肌を傷つけて痛みを伴うが、傷はすぐに癒える。始めはその度に、恐怖でパニックになりそうになるが、今は、もう慣れてきている。


「痛いよお、痛いよお〜」


「キモ豚、盾になりなさいよ! ああ、又、顔に傷が」


 どこからか人の声が聞こえてくる。悲痛な叫びと罵倒する叫び。声のする方向に向かう。靴がボロボロになり、素足となった栗田と華園がヨロヨロと歩いている。

 足元のガラスの欠片が血で染まっている。時折つまずいて、手のひらを地面に突き更なる痛みに襲われている。


(二人を救わないと!)


 玉雄は逸る気持ちを押えて、二人の所へと歩み寄る。二人の頭上で明滅する白い光が確実に視認できる程度の距離まで近づいたところで、相手もこちらに気付いてくれる。が、手を差し伸べた所で張り倒されてしまう。


「このガキ! 一人でクリアしたのか、生意気だ!」


「私を、助けないで、何をしていたの! 男でしょう!」


 痛みを忘れてガラスの欠片が積る地面に玉雄を押し付けて、八つ当たりをする。玉雄の身体にも無数の鋭利なガラスの欠片が突き刺さる。痛みで叫びそうになるのをグッと堪える。


(そう、僕があの時に救えなかった、これは報いだ)


「黙ってないで何か、ああ、又、身体が透けていく……」


「ど、どこに連れていかれるの?! いやよ、いや……」


 栗田と華園の二人もまた、消えていく。玉雄と接触した人は皆、消えていく定めなのか。ヤイコは囚われたプレイヤーを救えと言っていた。これが救いなのだろうかと、玉雄は考えてしまう。

 立上り、身体をブルブルと震わせて、体にこびり付いた細かいガラスの破片を落としておく。切り傷から血がでるのは一時的で、直ぐに癒えていく。後遺症として残るような傷ではないと判断されているようだ。


「皆、無事だといいけど……」


 一人呟き、消えた者達の心配をするが、どうなっているのか判る術はない。その時、玉雄は赤い光が明滅をするのを見つける。


(敵がいる)


 思考を切り替える。ここまで敵がいないことを考えると、このエリア唯一の敵は、ボスクラスの可能性が高い。油断をすれば命取りになる。


 赤い光は玉雄の元へと向かってくる。もしかすると栗田と華園を探していたのかも知れない。のそり、のそりと歩いて姿を現す。白い透けるような美しい花を沢山付け、肉厚の葉を蔦のようにまとわりつかせるサボテンマン。


 相手が気付く前に工具投げをする。ガラスの破片に埋もれた大地を浮いたまま進むには、先ほどのステージ同様に歩いて行動をすることになる。


(先手必勝になるかな)


 連投スキルを駆使した二本のドライバーはサボテンマンに命中する。動じることもなくこちらに向かってくる。次の工具投げをする為に、玉雄が構えると、相手も似たような動作をしてくる。


(何かが来る!)


 咄嗟に感づいた玉雄は横っ飛びに、今居る場所から距離を取る。その影響であちらこちらにガラスの破片が突き刺さり、激痛が身体を奔る。ライフポイントを確認するが減ることはなかったのが不思議くらいだが、気にしている場合ではない。


 玉雄がいた場所にはサボテンマンが放った無数の白い花びらが突き刺さっていく。傷だらけの顔から血を流し、相手に向けて工具を投げる。


 花を付けたサボテンマンの動きは緩慢だ。相手の攻撃を避けるのは容易いが、素早く避けるたびに浮き歩きスキルの効果がなくなるため、その痛みに耐えなければならない。


(耐えないと)


 耐えきれなくなりそうな痛みに負けないように気を奮い立たせる。何故こんなことをしているのかと疑問が脳裏をよぎる、誰かを救うためだと思うも、自己満足ではと反問される。

 

 僅かな思考の逡巡が、一瞬の隙を生み、相手の行動を見逃してしまう。身体にまとわせるように蔦のような腕を身体に巻きつかせる。サボテンマンは捻った身体を解き放つ様に両腕を振るい回転をする。


 ――全方位攻撃!


 放たれた儚いガラスの白き花弁が一斉に周囲に解き放たれる。咄嗟に工具を二つ投げ、二つの花弁を撃ち落す。狙わなくとも、大量の花弁がまき散らされている。

 その僅かに開いた空間へ、転げる様に飛び込む。それでも、被弾をする。ライフポイントが減り、顔や手に多量のガラス片が食いこみ、袖口や襟口から入りこんだ細かいガラスが玉雄の身体をチクチクと蝕んでいく。


「ウーー、〜〜〜〜」


 声にならない痛みに耐え、サボテンマンへと目を向ける。その場でフラフラと立ち止まっている。痛みに耐え、工具投げを敢行する。


(クーリングタイムの間に、少しでも多くのダメージを!)


 玉雄は必死に工具を投げつける。それは僅かすぎる時間、サボテンマンは再び動き出す。


 キズや痛みはすぐに癒えるが、それでもやはり完全に慣れることはない。断続的に与えられる痛みは心に恐怖をもたらす。それでも玉雄は躊躇をせずに、横っ飛びを繰り返しサボテンマンの攻撃を避ける。

 少年が取れるとは思えないような行動を必死に繰り返す。何かが、彼を狂気に囚われたかのように、突き動かしている。




 再び訪れた全方位攻撃をサボテンマンの懐に潜りこむことに寄りしのぎ切った。ヤイコ戦で行った行動をそのままに実行した。だが、サボテンマンのリーチはヤイコよりもはるかに長く、危うく手の回転に巻き込まれるところでもあった。

 

 しかし、その攻撃が止めとなりサボテンマンが崩れ落ちる。

 息が荒いままに、消滅するサボテンマンを見届ける。

 目の前に、重厚な扉が現れる。


「次の、エリアかな」


 ステージクリアではないと判り、若干の落胆がある。ライフの回復はまだ行われないことになる。残り二つだが、状況に寄れば簡単に砕け散ってしまうライフポイントだ。

 傷が癒えるのを待ってから扉を開け、次のエリアへと向かう。この時ばかりは電脳世界のゲームで有って良かったと玉雄は思う。そうでなければ、あんな無理なことは出来ないと自嘲する。


 だが、普通の人間ならば痛みを伴う行動は誰もが躊躇をする。玉雄は少しずつだが、ゲームの中でも成長していることに気付いていない。

 身体的な能力ではなく、ひたすらに耐える能力。身体の痛みにも、心の痛みにも耐える能力。傍から見れば『鈍感』だと笑われるだけの能力。


(現実世界でも耐えることが出来るのかな)


 自分の出した問いかけに、無理だろうなと答えを出して扉を潜りガラスの破片がキラキラと降り注ぐ、美しき地獄を後にして次のエリアへと向かう。




 本来であれば、例え高度な科学技術を用いても、新たなる世界を一から作り上げることは不可能と言って良いでしょう。


 それは、創世の御業と変わりがないことなのです。


 創世には恒星が生じるような、終焉を終えるような、大量のエネルギーが必要とされるのです。


 ゼロからイチを生み出すのは大変なことです。


 しかし、不完全ながらもヒトがそれを成し遂げてしまった。


 どこからか入手したエネルギーの塊、生命の果実とも賢者の石ともいえるような存在を手に入れて。


 ヒトがヒトを創りあげましたが、完全とは言えないヒトになってしまいました。


 貴方は今、それを正そうとしている。あるべきものをあるべき姿に戻そうとしている。


 不完全なものを、完全なものへと変えることができれば


 あるいは……

 

 

 

 門を繰り繰り抜けるまでのわずかな間に、何かを伝えられたような感じがした。ウラステージに来てから繰り返される白日夢のような感覚に玉雄は違和感を覚えるが、直ぐに忘れてしまう。

 

 新たなるエリアは洞穴のように薄暗く、濁った水面が足元を覆ていた。匂いも何も感じられない。水面の上から少し浮いた状態で辺りを見渡す。

 

 何もいない。静かな水面。

 

 試しにそっと水にリンゴを落としてみる。熱を感じることはないので熱水と言うことはないと思う。逆に熱水であれば、クリア前に耐性スキルを取得しているからダメージを受ける心配はない。

 

 リンゴは何事もないかのように沈んでしまう。酸で解けるような泡立ちも何も起こらない。


(ただの、水? かな)


 玉雄はその様子に拍子抜けをする。今までの環境に比べると随分と生易しい感じに思えてならない。


(だけど、絶対にそんなことはないよね)


 一瞬水に触れてみようかとも思ったが、貴重なライフを減らしてまでも試す必要は無いであろうと判断し、その場を後にする。


(出会っていないプレイヤーは萬姫さんと百姫さんかな)


 残った母子を救い出すために玉雄は行動を再開する。




 それが、一瞬、誰だか分からなかった。声もなく溺れるような人がが見受けれ、救助に向かった。

 頭上には白い光が明滅しているからプレイヤーなのだろうとは思うが、全身も顔も酷く爛れていて判別が付かない状態だ。


「も、もしかして、萬姫さんですか?」


 相手はコクコクと頷く。赤くただれた目から涙を流して助けを求めている。玉雄は手を差し伸べ、足助の時と同じように引き上げようとするが逆に水面へと引きずり込まれてしまった。


「う、うわ!」


 慌ててライフポイントを確認するが、減ることはない。身体に異常も感じない。ただの、濁った水の様だ。だが、目の前の萬姫の皮膚は爛れてしまっている。


「コ、コノ、水はネ、ジ、時間を掛ケテ、ヒフをムシバムの」


 ケラケラと笑いながら萬姫は玉雄に向けておかしな口調で語りだすが、目の焦点があっていない。その様子に玉雄はギョットする。


「アナタ、見てイタノでしょう」


「な、何をですか?!」


「アノ人が言っテいたもの。しらばっくれるんじゃないわよ!」


 萬姫はウラステージをランダムに転移している際に一度だけ足助と遭遇をしている。ステージイの前半のエリアであったために気付かれることはなかった。


 その時の萬姫は、足助に対して恐怖感を抱いており、とても顔を見合すことは出来ない状態であった。盛大に咳き込みそうになるのを必死に堪えて、足助が過ぎ去るのを密かに待った。


「あのガキ、見た癖にしらばっくれて! 俺を嵌めやがって!」


 足助が咳き込みながらそう呟くのが聞こえた。ガキというならば百姫を覗いた者、全てが足助より年下になるが、あの言い草では多分、玉雄だろうと判断できる。

 

 水面から顔を出している玉雄の首を掴み、執拗なまでに平手打ちを浴びせる。


「ただのガキが、何ヲしているノよ! 身ヲ挺して守りなサイ!」


 爛れた皮膚がムズ痒く耐えきれなくなり、玉雄を手放して全身をかき始める。かろうじて残った爪が爛れた皮膚を引っ掻いて痛みを与える。


「だ、駄目です、引っ掻くと余計に悪化します」


 手を掛けようとした萬姫が徐々に消えていくのが、見て分かる。萬姫は気付いていない。痒い、痒いと呟きながら全身を掻き毟り痛みに顔を歪ませる。


 そして、しばらくして玉雄の前から姿を完全に消した。


 玉雄は水面から直ぐに這い上がる。水の中で歩く動作をすれば徐々に浮いて来てくれた。


(浮き歩きのスキル取っておいて良かった……)


 使えないと思ったスキルが思いのほか役に立ったことに、玉雄は満足をしている。水に浸かった影響は出ていない。萬姫の言い分を信じるならば長時間浸かっていなければ問題は無いと言うことだろう。


 そして、目の前に透明な身体をした尾びれを持つ上半身が人型の女性のフォルムをしたキャラが水面を飛び跳ねる。


 突如として現れた幻想的で美しいキャラに目を奪われる。


 頭上には赤い光が明滅する。


「て、敵キャラ!」


 思わず叫んだ玉雄に向けて、透明な人魚のような敵は無数の水弾を浮かべ、一斉に解き放つ。


 呆けた時間の分だけ行動が遅れる。玉雄は咄嗟に水面下に潜り逃げるが脚に水弾を一発受けてしまう。

 ジワリとした痛みが足を覆う。あまり見たくはないので我慢をして、水面を歩き上がる。


(残りのライフが一つ、もう、ミスは許されない)


 玉雄は危機的状況にありながら、自己を評価し、焦りを産まないように心を落ち着かせる。


 後戻りのできないゲームは散々やってきた。

 だけど、自分を代償にしていたわけではないからやっぱり怖い。


「でも、やらなきゃ駄目なんだ!」


 水面を跳ね上がる半透明な人魚に向けてドライバーを打ちこむが相手はすでに水面の中へと戻っていくところだ。


 相手の水弾は水に潜り、やり過ごした。いつ、皮膚が水に浸食され蝕まれるかは判らない。


 それによってダメージを受けるかも知れないが、今は出来ることをやるしかないと玉雄は判断をする。


 玉雄の皮膚は赤く爛れはじめていた。ライフが減る様子はない。ここもまた、行動阻害の罠なのだと玉雄は思う。ならば、痛みに耐えるだけだ。地形の効果に遠慮をする必要は無い。


 水中を優雅に泳ぐ、半透明の人魚に向けて工具投げを実行する。焦って水面に出る必要はなくなった。全身が痒く、ひりつく痛みを感じるが気にしては入られない。


 水中の中で攻撃を受けた人魚は、反撃をするどころか驚いたかのように玉雄から距離を取る。海とは認められないため、海中スキルが役に立たないのか、息が続かなくなった玉雄は泳いで水面に顔を出し、呼吸をしてから水面の上へと歩いて上がる。


 水面に波紋が広がる。人魚が姿を現す兆候だ。その場所にむけて工具を構え、現れた瞬間に工具を投げつける。


 人魚はまたも驚いて、再び水面へと戻っていく。水弾を出す様子はない。


(この敵は臆病なんだ。相手には攻撃を仕掛けるけど、先手を打たれると逃げ出すのかも知れない)


 なら、先手を続けるのみと、水面の全体を見渡すように集中する。一点を見続けてはいけないと言い聞かせ、全体を俯瞰するかのように水面を見続け、波紋の行方を探し続ける。




 最後も水弾を放つことなく、人魚は姿を消していく。勝利は玉雄の元へと転がり込んだ。そして、目の前にまた、降りの階段が水面を掻き分け出現する。


『ウラステージロ クリア! NEXT ファイナルステージ』


「次で本当に最後なのかな」


 玉雄は現れた文字を見つめて、そう呟いた。


 ヤイコは言っていた。何度も、何度も、死に戻っていたと。


 しかし、死に戻らなかったとしても、クリアが無い物も多い。


 永遠に繰り返される、難易度が上がるステージの繰り返し。


 もしかすると、ここも同じなのかも知れないと玉雄は思う。


 死に戻っても同じ、死ななくても同じ事の繰り返し。


 単調な作業のようなことの繰り返し。


「……それじゃあ、やっぱり嫌になるかな」


 玉雄は再度呟いて、降りの階段へと足を進める。先はまだ見えない。まるで、地の底に、地獄の底へと誘うかのように降って行く。


(ファイナルステージ、ヤイコはどう戦う気なのかな)


 再び会いまみえる相手の事に思いを馳せる。何も変わっていなければ、勝利は玉雄の物となる。何かが変わっていれば、その逆になるかも知れない。


(だけど、救うためには負けられない)


 玉雄は、心に強く思いを刻みこみ、ファイナルステージへと続く階段を降って行く。


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