第74話 正道の許嫁(?) 綾小路真理亜
綾小路真理亜。
獅童家とは何代も前から昵懇の仲の綾小路家、その本家の娘さんだ。
美しい黒髪ロングのお嬢様ストレート。
年は俺の2つ下だが、小柄で華奢な身体は年齢よりももっと幼く見えさせる。
「真理亜、どうしてここに? アメリカの大学に飛び級で留学していたはずだろ? ああ、向こうはもうサマーブレイクなのか」
「ええ、夏のお休みを利用して正道様に会うために日本に帰ってきましたの」
「そうならそうと連絡を入れてくれてもよかったのに」
「だって正道様を驚かせたかったのですもの」
「真理亜の目論見通り、驚かされたよ。まったく、真理亜のお転婆は昔から変わらないな」
俺の身体に嬉しそうに抱き着いたままで離れない真理亜。
昔から変わらないスキンシップに苦笑していると、
「えっと、正道くん、この女の子とはどういうご関係?」
蚊帳の外に置かれていた桃花が、おずおずと尋ねてきた。
その声が微妙に不満気に聞こえたのは、俺の気のせいだろうか?
俺が答えるよりも先に真理亜が答えたのだが――。
「わたくしは正道様の許嫁ですわ」
「えっ! 許嫁!?」
マリアの言葉に桃花が大きく目を見開いた。
即座に訂正する俺。
「元・許嫁な。親同士が勝手に言っていただけだし、正式に解消されてる。令和の時代に許嫁とか時代錯誤だからな。ライオネル・グループは自由闊達を是とする企業だよ」
「じゃあ本当に許嫁だったんだ……」
俺としては違うと明確に否定したはずだったのだが、なぜだか桃花はしょんぼりと肩を落とした。
桃花の反応から今の説明の問題点――過去の話とはいえ真理亜と許嫁だったことを肯定してしまったこと――を即座に理解した俺は、すぐに追加説明を行った。
「そもそも小さい頃の話だから。それこそ小学校に入る前とかそういうくらいの。桃花はそんな頃の、親が勝手にした約束に意味があると思うか? 真理亜なんて多分3歳とかだぞ」
「ううん、思わないけど」
「つまりそういうことだ」
俺が優しく微笑むと、桃花は「うん」と安心したように頷いた。
桃花を納得させたところで、今度は真理亜が尋ねてくる。
「正道様、そちらの女性はどなたですの?」
「この子は花宮桃花。高校のクラスメイトだよ」
「クラスメイトですか……その割には大変仲が良そうに見えますけれど? わたくしというものがありながら」
「許嫁は解消されてるからな。あといろいろあってな。ちょっとだけ特別な関係なんだ」
「いろいろ……ですか」
「ああ、そうだ」
「曖昧に誤魔化すような物言いですわね?」
「別にそういうんじゃない。桃花のプライベートにも関わることだから、詳しくは言えないってだけ」
それに特許のこととか橋の上での出会いとか、一から話してたら長くなるしな。
そう考えると、かなり濃密な数カ月を俺と桃花はともに過ごしてきたもんだ。
「そうでしたか。承知いたしましたわ」
真理亜はそう言うと、俺から離れて桃花に向き直った。
「初めまして花宮さん。わたくし綾小路真理亜と申します。正道様とは幼少のみぎりから、仲良くさせていただいておりますの。どうぞお見知りおきを」
自己紹介を終えた真理亜が――俺に勢いよく抱き着いてきたお転婆っぷりはどこへやら――優雅なカーテシーを見せる。
「あ、えっと、初めまして綾小路さん。花宮桃花です」
そんな真理亜に桃花はペコリと普通のお辞儀を返した。
「ふぅん……なるほどですわね」
「ええっと、なんですか?」
親ガチャSSR、ここまでお読みいただきありがとうございました♪
かなりレアな経済ラブコメも今度こそ次回が最終話となります。
最後まで楽しんでもらえるよう、頑張ります!
そして完結に合わせて、明日くらいから新作をスタートしようかなと思っています
異世界ファンタジー要素のあるラブコメです。
「異世界で勇者だった俺、なぜかモブ男子高校生に転生してしまう ~引退後はスローライフしようと思ってたが、勇者スキル×現代日本もわりとスローライフじゃね?~」
こちらは中身が最強勇者になったモブ男子が、ラブコメをしつつ、降りかかる火の粉を次々にざまぁしていく、痛快で軽快なラブコメになる予定です。
今作同様に応援してくれたら嬉しいです!




