レポート19ー俺は男ですが大丈夫ですかー
金髪の少女と露店を開いていた中年風プレイヤーが言い合っていた。
「素材とかレベル的に値段高すぎるじゃない」
「そうは言われてもねえ、こっちは鍛冶突貫だからこの素材とるのにも苦労するんだよ」
「それにしてもさすがにってこと」
「そんなにかい……次からはそれなら気をつけるよ。とりあえず今回は見逃してくれないかい」
「む……まぁいいでしょ。今回だけだからね。次見かけたら今日よりしつこいから」
どうやら露店で売ってる武器の値段の悶着だったらしいがユミが見ているうちに終わった。
周りに集まって見ていた人たちも散っていく。ユミはそのまま大通りを進む。
するとさきほどの悶着で争いをしていた金髪の少女が露天を開いている。
……他よりでっかいな。鍛冶レベルが高いのか商売系の何か持ってるのか?
そんなことを思いながら店を覗いてみる。様々な種類の武器が多く並んでいる。
「いらっしゃい。何をお求め?」
少女はそう言ってユミに声をかける。キャラクターの見た目ではユミと同い年か少し上のような雰囲気だ。
「長槍ってありますか?」
「長槍? また珍しいチョイスだね」
「やっぱりそう思う?」
「槍は短槍を投擲とか小回りを聞かせて戦うのが主流っぽいからね? 実際に使ってるのは見たことないから知らないけど」
「短槍って投げることもできたのか」
少女はパネルをだして操作している。露店に見えるように出している武器とは別でもっているようだ。そして一本の長槍をだしてパネルを閉じユミに渡す。
【ロングスピア】という名前の武器で攻撃力がレベルに対して高めで耐久力もそこそこある。しかし少し重めの槍だ。
「これはいくらくらい?」
「1500Gくらいかな。あんまり作ってないとはいえ素材自体はかなり取りやすい素材で作ったから」
「それなら買います」
「まいどあり」
そういって露店メニューの購入ボタンを押す。
「そういえばさっきそこで何やってたんですか?」
「あぁ、あれ? あの店が売ってた物の値段が素材とかを考えた場合の値段の倍くらいで売ってたから言えずに入られなかったんだよ」
「初心者騙しみたいなことがあるから?」
「それもあるけど。1つの店がやって他の店がやると基準が高くなっちゃうからね。そうすると買い手も減っちゃうから」
「あぁ~」
ユミは槍を背負ってみる。今までと比べると重量感を感じられた。
そしてユミは挨拶してその場を去ろうとする。
「ありがとうございました。それじゃあ」
「あ、ちょっと待って」
それを店主の少女は呼び止めた。
「折角だしフレンド登録とかしない? 実は鍛冶とかばっかりやっててあんまりいなくて……店のお客さんでもこんなに話したのははじめてだから」
「いいですけど。俺でいいんですか? あ、後一応男ですから俺」
「お姉さんを騙しても何もでないぞ~」
そういってフレンド登録する。そしてフレンド欄の性別欄を見たのかユミの目の前で少女は一瞬固まり二度見した。
「それではこれで。何かあったら手伝いますよ」
「う、うん……あ、武器作って欲しいとかあったら言って。材料と時間があれば作ってあげるから」
そう言ってユミはその場を去った。改めてフレンド欄を確認すると少女のプレイヤーネームは【アイ】のようだ。
その他にも防具などの露店を見て回った後ユミはログアウトした。