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詠唱破棄?いいえ、即興(フリースタイル)です。  〜定型文しか唱えられない魔術師たちを、現代最強ラッパーがリリックでボコボコにする〜  作者: てん
第一章 重低音の衝撃(ベース・ドロップ)    ―静寂の学院に響く反逆のリリック―

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10/20

第10話:鋼鉄のディーヴァ(歌姫の洗礼)

艦隊が撤退してから三日が過ぎた。

 学院は表向きの静穏を取り戻していたが、その空気は薄氷のように張り詰めていた。


レンは屋上のフェンスに寄りかかり、遠くの地平線を眺めていた。

「……来るな」

 呟きと同時に、空の色が変わった。


地平線から、一隻の「白銀の小舟」のような飛行艇が、滑るように現れた。

 先日の巨大な鉄の塊とは違う。優雅で、無駄のない曲線美。

 その船首に、一人の女が立っていた。


深い蒼色のドレスを風になびかせ、夜の闇を溶かしたような黒髪が背後に流れる。

 彼女が口を開いた瞬間、学院中の空気が「凍りついた」。


『――――ああああぁぁぁぁ……』


それは、言葉ではなかった。

 ただのロングトーン。しかし、その一音だけで、学院の結界が「結晶化」して砕け散った。

 暴力的な重低音ではない。鼓膜を撫でるような、あまりにも「正解すぎる」純粋な高音。


「な……魔法の波形が、完全に『整列』してる……!?」


中庭に飛び出してきたアリアが、空を見上げて絶句した。

 彼女の銀の杖が、恐怖でカタカタと震えている。


「あれが……帝国の最終兵器。第一歌唱大隊長、歌姫ディーヴァエレナ……!」


──────────────────────────────


エレナは、空中に見えない階段があるかのように、しずしずと地上へ降りてきた。

 彼女の周囲では、大気中の魔力が「楽譜」のように整列し、キラキラと輝いている。


彼女の視線が、屋上のレンを捉えた。


「あなたが、ガストンの無骨な合唱を乱したという『野良犬』かしら」


鈴を転がすような、完璧な発声。

 レンはヘッドホンを首にかけ、ゆっくりと階段を降りて中庭へ向かった。


「野良犬か。……おばさんの方は、随分と綺麗な飼い犬だな」


「お、おば……っ!?」


エレナの眉が、ピクリと動いた。

 だが、彼女はすぐに冷徹な微笑を取り戻し、喉元に手を当てた。


「無礼な口を叩けるのも、今のうちよ。あなたの『騒音』が、私の『至高の旋律メロディ』にどこまで耐えられるかしら」


──────────────────────────────


エレナが、歌い始めた。


――【神聖圏・絶対和音ホーリー・コード】。


彼女の歌声が響くたびに、周囲の空間が「塗り替えられて」いく。

 レンがこれまで得意としていた「サンプリング」ができない。

 なぜなら、彼女の出す音には「隙間」が一切ないからだ。完璧に調律された音の壁が、レンの言葉を物理的に押し潰していく。


「……ぐっ、息が……」


中庭にいた生徒たちが、次々と膝をついた。

 苦しいのではない。あまりにも「美しい音」に魂が圧倒され、思考を停止させられているのだ。


「レン、逃げて! あれは魔法じゃない……存在そのものを『美』で上書きする侵食よ!」


アリアが叫ぶ。彼女もまた、その歌声の魔力に抗えず、涙を流しながら立ち尽くしていた。


レンは、マイク代わりの杖を強く握りしめた。

 声が出ない。喉が、エレナの歌声に共鳴して、勝手に「綺麗な音」を出そうとしてしまう。


「……ハ、ハッ。……面白ぇじゃねぇか」


レンは、無理やり口角を上げた。

 喉の奥から、ドロりとした「不純な魔力」を絞り出す。


「綺麗なだけの歌なんて、子守唄にもなりゃしねぇ……。俺が教えてやるよ。……本物の『毒』ってやつをな」


──────────────────────────────


レンが、地面を強く蹴った。

 エレナの完璧な旋律の中に、あえて「不協和音ディスコード」を叩き込む。


「Yo……綺麗事のメロディ 吐き気がするぜ

 お前の歌は ただの飾り 中身がねぇ(Empty)

 【不純共鳴・裏切りのバース】

 整列した音符を 俺がバラす

 美しさの中に 泥をぶっかける

 綺麗に死ぬか? 汚く生きるか?

 選ばせてやるよ この一撃ライムで……!」


──────────────────────────────


レンの放った濁った低音が、エレナの黄金色の世界に「ひび」を入れた。


エレナの歌声が、一瞬だけ揺らぐ。

 彼女の完璧な仮面が剥がれ、驚愕の表情が露わになった。


「私の……私の歌を、汚した……!? この、下賎な……!」


「ハッ、いい顔になったじゃねぇか。……ライブは、こっからが本番だぜ」


レンの瞳が、狂気的な熱を帯びて光った。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                        つづく

【あとがき】


第10話、ご覧いただきありがとうございます!


ついに「帝国最強の歌姫」エレナが登場しました。

 彼女の魔法は、これまでのガストンとは次元が違います。力でねじ伏せるのではなく、**「美しさで存在を塗り替える」**という、芸術的な恐怖。

 「サンプリングができない」という、レンにとって最大のピンチをどう切り抜けるのか?

 

 今回のレンは、あえて「汚い音」をぶつけることで、彼女の完璧な世界をハックしに行きました。

 「綺麗なだけの歌 vs 泥臭いラップ」

 

 アリアも、レンの放つ「毒」のような魅力に、恐怖しながらも目が離せなくなっています。

 

 第11話、歌合戦(MCバトル)はさらにヒートアップ!

 エレナのプライドを粉々に打ち砕く、レンのさらなる「ディス」が炸裂します。

 

 「続きが気になる!」「歌姫のプライドをへし折ってほしい!」という方は、ぜひブックマークや応援よろしくお願いします。

 

 次は、もっとエグいライムを用意しています。


作者より


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