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-7話- 魔界と人間界の違いはどうやら魔法 その1

「まあ、なんだ。シュウクレムが復活したことで四天王がそろったわけだな」

 君守家の長男の真洋こと魔王軍四天王であるマーマンのマカマフィンがそんなことを言い出す。

「ええ、魔王軍としても失った戦力の一部を取り戻したことになります」

 君守家の世帯主の辰人こと魔王軍四天王であるドラゴンのタリュートゥが答える。

「うちとしても新しい家族が増えたわけよね。にぎやかになるわ」

 君守家の世帯主の配偶者の羽春こと魔王軍四天王であるハーピーのハハルアピが続く。

「吾輩でもにぎやかしくらいにはなるからニャ。ま、よろしく頼むニャ」

 君守家の新しい家族とは三毛猫のカステラこと魔王軍四天王であるゴーレムのシュウクレムである。昨日から君守家で飼い始めたのだ。


「魔王様の護衛は任せるぜ。お前は魔王様のお気に入りのようだからな」

 真洋が魔王様と呼ぶのは君守家の次男である朝太のことである。

「お気に入り過ぎて、こんな朝から幹部会議をやっているわけですけどね」

 昨晩は朝太が猫と一緒に寝ると言い出したため、翌朝、朝太が起きる前に四天王たちで集まって幹部会議という名の家族会議を行っているのである。

 幸い今日は休日であるため、真洋が学校に行く必要もない。

「そのうち飽きるわよ、きっと。子供がちゃんと面倒見るからなんて言って動物を飼って、結局お母さんが面倒を見ることになるのが世の常らしいわ」

「もっとも、吾輩、ある程度のことは自前でできるのニャ。でも、猫の振りをする必要上お世話になりますニャ」

「シュウクレムとしては俺たち四天王が家族として生活していることについてはどう思っているんだ?」

「意外な決断だったと思うニャ。まあ、それに対していまさらどうこう言うつもりはないのニャ」


「こいつが来たことで、何か俺たちのやることが変わるのか」

 真洋がそんなことを言い出す。

「とりえあず吾輩を歓迎する宴を開くがいいニャ。無礼講なのニャ。みんなで浴びるように酒を飲みまくるのニャ」

「俺は実年齢百歳越えだけど、戸籍上は十二歳だからそういうのアウトなんだよ」

「なんニャ! 吾輩の酒が飲めないっていうのかニャ!」

「やめろよ。そういうのはアルコールハラスメントって言うらしいぞ」

「まあ、吾輩もゴーレムなので飲み食いはしないんだけどニャ」

「でもお前、皿に入った牛乳をなめていただろ」

「あれは猫の振りをしているための演技ニャ。逆に聞くけどニャ、おめーは朝太の差し出してきた飲み物を断れるのかニャ?」

「それは、できないと思うけどよ」

「時には飲めないものを飲む必要があるってことニャ。涙を呑むってことなのニャ」

「うまいこと言ったみたいな感じを出すんじゃねえよ」


「それよりもですね、シュウクレムに確認しなければならないことがあります」

 辰人が話題を修正する。

「何ニャ?」

「魔王様が時間を戻す術に失敗して今の朝太の姿になったことは把握していますよね。あなたならその術についてなにか知っているかと思ったのですが、いかがですか」

「うーむ。吾輩ではあまり参考にはならないと思うニャ」

「でも、お前は術のとき魔王様のすぐ傍にいたわけだろ。何も知らないってことはないんじゃないのか」

「吾輩、術の間はスリープモードのような状態になっていたのニャ」

「どうして?」

「シュウクレムは魔王様の魔力で動いていたはずですからね。それを解除する必要があるくらい、時間を止める術を行うには集中する必要があったということでしょう」

 真洋の質問に辰人が答える。

「なるほどな。護衛役なのかと思ったらそんな理由で傍に置いていたわけか。あれ? だけど、シュウクレムは意思を持っていたんだよな。俺はてっきり、魔王様の魔力でラジコンみたいに操縦されていたイメージを持っていたんだけど、違うってことだよな」

「私も似たようなイメージでしたよ。魔力の流れだったら羽春さんのほうが把握している可能性がありますが、どうですか?」

 辰人が羽春に尋ねる。

「あたしも魔王様が操縦しているものだと思っていたわ。魔王様からシュウクレムに魔力が送られていたのは感じたもの。それってシュウクレムに指令を送っていただけだったのかしらね」

「まあ、ずっとしゃべらなかったから意思があるとは思わないよな。でもよ、使役者が昔の魔王様か今の朝太に変わったことでしゃべれるようになったことには変わらないよな」

「私もしゃべる機能が新たに追加されたものだと思っていたのですが、別の可能性もあります。もともとしゃべる機能はあったけれど、以前はしゃべる機能を制限していたのかもしれません。魔王様の魔力が弱まりそのリミッターが外れたという場合です」

「なんで魔王様はそんなことをしていたんだ?」

 真洋が疑問を口にする。

「この性格が鬱陶しくてしゃべれないようにしていた可能性があります」

「魔王様は操作ではなく制御するために魔力を送っていたのかもしれないってわけね」

「思わず納得してしまいそうになるくらいの説得力はあるな」

「失礼な奴らだニャー」


「それよりも、術の手掛かりがつかめないなら我々が考えなければいけないのは今後のことです」

「朝太が魔王に戻る方法を見つけないといけないわけだが、シュウクレムも知らないんじゃ話は進まなそうだもんな」

「力になれなくてすまんニャ」

「もう少しこの生活を続けることになりそうね」

「長期戦も覚悟しないといけないニャ。吾輩が気になっているのは魔王軍へのケアなのニャ」

「どういう意味だ?」

「吾輩たちが揃って魔界からいなくなったわけだからニャ。魔王軍のメンバーにはどんな説明しているのか気になるところニャ」

「我々が何をしているのかは、もちろん秘密にしてあります」

「それはよくないのニャ。このまま何も知らせない状態が続くと不満が溜まっていくものなのニャ」

「だけどよ、正直に言うわけにはいかないだろ。魔王様がこんなことになっているなんてさ」

「そこはあれニャ、吾輩たちは人間界の調査をしていることにでもすればいいのニャ。ちょっとずつ調査報告をしておけば、時間稼ぎくらいにはなるニャろ」

「なるほどな」

 そう話がまとまったときに、部屋の外から足音が聞こえてきた。


「カステラちゃんいる?」

 足音の主は朝太だった。朝太は部屋に入るなりそう聞いてきた。

「ほら、朝太。起きたらまずは、おはようでしょう」

「おはようございます」

 羽春に促されて朝太は元気に挨拶をする。

「はい、おはよう。カステラならここにいるわよ」

 その言葉を聞いて朝太はパッと明るい顔を見せる。

「それじゃ、朝ご飯にしましょうか」

 君守家の休日の朝の始まりだった。

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