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第一章 悠久の塔 第三層 TRS OBTdate.2 その2

更新タイミングちょっと遅くなりました。

 冒険者たちの拠点となっている町『リンドベル』に一時撤退し、そこからタウンポータルに乗り『帝都ランダグルム』にあるレギオン館と呼ばれるレギオン専用のハウス機能を持ったルームへ移動する。


レギオン館はメインサーバーからは切り離されており、通常のマップ以外で使えるWeb関連の機能などの制限も無く作戦会議では非常に便利な場所である。


 レギオン『ブラックサイクロン』の面々が集まる専用部屋《ルーム》でメンバーである俺、シャッハ、アコちゃん、カレンはとりあえずWebコンソールで外部のネット情報などを集めたり、動画サイトの動画を閲覧したりして残りのメンバーが戻ってくるのを待っていた。


「30分後って言いながら1時間近く待ってるね……」


 アコちゃんはアニメのOP映像を見ながら暇そうな表情をしながらそう言った。


「そろそろ来るさ」


 俺がそう言った瞬間に扉が開く音がする。


「クーさんは魔法使いだな……」

「その言い方は何だかイヤな感じだぞ?」

「変な意味で言ったんじゃないってばぁー」


 アコちゃんは動画を閉じて焦りながらワタワタと腕を振り動かして否定する。


 遥か昔から一定の条件でとある年齢になると魔法使いになれるという都市伝説があり、これも語られる年代によって年齢や条件が違ったりする。


「ごっめーん、おそくなっちった☆」


 彼女は言葉に反して全く悪いと思ってませんという態度でそう言った。


 基本的に彼女は非常に自己中心的で自分で決めた時間にちゃんとやって来たことは数えるほどしかないので、みな慣れっこである。


「とりあえず、早速で悪いけどPT編成するわよ。戦士《ストライカー》3、魔杖士《キャスター》2、魔銃士《ガンナー》3で考えてるんだけど、意見のある人!」


 メンバー構成で言えば、戦士《ストライカー》シャッハ、姉《るかち》、アコちゃん。魔杖士《キャスター》は俺、しょこらん。魔銃士《ガンナー》はカレン、ミソスープ、ナギリだろう。


 盾《タンク》役はシャッハ、前衛《アタッカー》が姉《るかち》、アコちゃんとミソスープ。回復《ヒーラー》役がしょこらん、支援《サポート》が俺。後衛《カバー》は基本的にスナイパーのみでどちらかというと攻撃的な構成でカレン、ナギリという感じだ。


「俺たちは一層、二層のボスと戦った経験から出来ればミソスープは魔杖士《キャスター》の方がいいと思うんだけど。ボスは基本的に硬くて全体的に火力不足というか、物理耐性系に寄ってる気がするから魔法火力は必要かなーと思うんだけど」

「……なるほどね。さすが愚弟というところね。でも却下!」


 その言葉に一番はじめに声を上げたのはシャッハだった。


「珍しいね。シャッハが同調してくるのってさ。とーりあえず、却下した理由から述べましょ」


 彼女は自信満々な風に微笑み人差し指をピンと立てる。


「まずは火力の問題ね。確かに皆も分かってると思うけど単純火力で考えると攻撃魔法の威力は高いけど、デメリットの詠唱時間《キャストタイム》を考慮して時間効率を考えた時は戦士《ストライカー》や魔銃士《ガンナー》の方が与ダメは高いってこと」

「でも、それは支援《サポート》と回復《ヒーラー》があること前提ってことだよね?」


 基本的にシャッハと姉《るかち》は意見が合うことが多いのだが、意見が食い違った時でも彼が喰いつくことはあまりない。しかし、今回は何故かシャッハは姉《るかち》に意見している。


「それを言われると確かにそうだけど、常にベストを考えた時に支援《サポート》と回復《ヒーラー》がいなければ、そもそも全滅寸前よ? それに連携を考えた上で私達は高火力な構成でみんなキャラ作りをしてるでしょ。回復量が心配なら私達がPOTをガブ飲みする。魔法属性の攻撃がどうしても必要なら属性付与《エンチャント》アイテムか支援で補う。その上での最強でしょ?」


 彼女の言葉に誰も反論出来ずに沈黙が広がる。


 俺たちは全員で相談しあってキャラクターメイキングして育てて来た経緯があり、各人のオリジナルスキルさえも、連携出来るような構成を持っているスキルも幾つかある。

だからこそ、闘技場で50連勝以上の記録も持っているのだ。ただ連勝記録に関しては最終的に対戦相手があまりに少なくて8対8の対戦が出来なくなったせいで記録が止まったのだった。


「魔物戦《PvE》メインで考えたら、魔法攻撃は重要かもしれないけど……私達ってやっぱり対人《PvP》がメインでしょ? それに某掲示板勢も既にこっちに来てるから『悠久の塔』も荒れるわよっ♪」


 と、彼女は満面の笑みを浮かべる。

その姿は非常に魅力的でシャッハやアコちゃんは思わず赤面してしまう。その姿を見て思わず微笑むミソスープであったが彼女はそれに気がつき素早い蹴りを繰り出す!


「ぐほぉっ!」

「お味噌汁さん、大丈夫ですか?」


 しょこらんは心配そうにケツを蹴られてぶっ倒れている彼に優しい声を掛ける。

そもそも痛みは感じないから、彼もノリでやっているのに心配する、とーっても天然な彼女であるがゲームの腕前は姉《るかち》お墨付き……と、いうか俺と共に彼女は姉《るかち》に付き合わされ多くのゲームをやって鍛えられていると言った方がいいだろう。


「と、いうか姐さんオレには選択権ないんっすかね?」


 何事も無かったかのようにミソスープは立ち上がりながら訊ねる。


「あると思ってたの?」


 と、彼女は即答した。



 基本的な戦術は盾《タンク》役のシャッハをトップに強力な前衛《アタッカー》で各個撃破。中衛《サブ》でミソスープが動き、俺が前後の支援《サポート》をしながら回復《ヒーラー》のしょこらんと連携する。後衛《カバー》は相手の動きを止めるスナイパーの二人だが、この二人の攻撃力は非常に高く、驚くほどのピンポイントで狙撃を行う事が出来るほどの練度を持っている。


 俺たちは各自のフォーメーションを再度確認して、アイテムをごっそり使うこと前提で持ち物をガチ勝負用に変更する。

フロアごとにアイテムや装備の耐久度を回復することが可能ということが分かっているが故に全力で投入しても大丈夫だと分かったからだ。


 そして、俺たちはしょこらんが用意したワープポータルを利用して『悠久の塔』のロビーの近くへと移動する。


 近くにしかポータルが用意出来なかったのはロビーがポータル禁止区域に設定されていたからという話だ。ちなみに俺もワープポータルのスキルを取っているが面倒くさかったのでポータルポイントの記録などしていなかった。


 ロビーでNPCを囲んで少し遊んでから俺たちは塔へと侵入した。

 ちなみにロビーのNPCだが、見た目は相変わらず人形のような少女だった。しかし、時間が経って多少修正されたのか、AIの調整があったのかしらないが不安定な動作は無くなって普通なNPCの反応になっていた。


 これにはアコちゃんも不思議そうな表情をしながら「なんだか面白くない感じだね」と呟いていた。正直、何が面白いかどうかは不明なのだが不安定な動作をするNPCが存在するよりは普通の方がいいと思うのは俺だけなのだろうか?


 一応、先にどれくらいのパーティーが侵入しているかをるかちが確認すると、既に100近くのパーティーが入っているという事だった。

さすがにいきなり人数が増えるとマップ上は大混雑が必至だろう。ハッキリ言ってフロアの広さはさすがに100近くのパーティーがプレイしているということは、500名以上のプレイヤーがマップ上に存在することになる。


どう考えても大変なことになっている、であろう第一層へ俺たちは降り立つ。


「うわぁ、酷いわね……」


 姉《るかち》は腰に下げた刀を抜き払いながらそう言った。

通路には既に戦闘で倒れた他のプレイヤーの死体が大量に転がっており、魔法や魔弾が飛び交っている。まさに混沌《カオス》な状況だ。


「とりあえず、殲滅していかないと先に進めなさそうね」


 彼女はヤレヤレといった風に呆れた顔をするがその瞳の色は楽しそうに見えた。


 そして、彼女はすぐに左手を動かして合図《ハンドサイン》を出し、全体に指示を送る。

 その合図は突撃で俺たちは一気に移動を開始する。


 すでに一度クリアしているダンジョンの進行ルートは把握している、如何に早く駆け抜けることが出来るかがポイントだ。目の前で戦闘を行っているプレイヤー達はいきなり横からの射撃で数人が倒れる。

彼らの仲間は射線の方向を確認するが既にそこには誰もおらず、見えない狙撃手に慌てふためく。


 俺たちはカレンとナギリが狙撃した側の対岸にいるプレイヤー達に突撃攻撃を行い、その場を簡単に突破した。

なお、カレンとナギリの姿を敵が見つけることが出来なかったのは<鏡面外套《ミラーマント》>と呼ばれる数秒だけ視界に認識出来なくなるアイテムで実はこれはかなり面倒なクエストをクリアしないと購入できないアイテムだ。

ウワサではサービス開始すれば課金アイテムとなるという話だ。


「プレイヤーばっかりで魔物《モブ》がいないな」


 駆け抜けながら盾突撃でプレイヤーを吹っ飛ばしながらシャッハは言った。


「確かにそうだね、というか人多すぎない? これってコンテンツ的に問題だと思うんだけど」


 アコちゃんも楽しそうに敵を斬り倒す。


 全体的に見た感じレベル帯は高くてもLv40くらいのプレイヤーが多いのはクローズでレベルを上げていた人たちなのだろう。全員Lv60を超えているパーティーはそういないのは確かだ。


 第三次βテストの時に最後まで残っていたメンバーは20名くらいで、自分たちを除けばLv60に到達しているプレイヤーは多くて30名前後だ。

このゲームは実はLv40まではそこまで難しくは無い……世間的に言う廃人プレイヤーであれば、二日から三日あればそのレベルまで簡単に行けるだろう。ただ、Lv40以降はかなりレベルを上げる為に多くの魔物《モブ》を狩るか闘技場で同レベルもしくはそれ以上の相手と幾度も戦い、勝利しなくてはいけない。


 α、β、第二次β、第三次βはキャラリセットがあった為にテスト期間のはじめは皆レベル1だったが、早くから参加しているメンバーは如何にして早くレベルを上げるかを熟知しているので、気合さえあれば四日から五日でレベル上限《キャップ》まで到達可能だった。


 特に第三次βは二週間という時間と連休が重なっていた為に1アカウントで最大の3キャラ分をレベル上限《キャップ》まで育てるという強者さえも出現したのだ。これは俺たちのメンバー『ミソスープ』のことだけど……。


 普段、彼は仕事をしているので夜、もしくは夕飯時からのログインで深夜までプレイするのだが、そのタイミングだけ連休の合間の平日は全て有休を取り長時間プレイしていた。

姉《るかち》が協力していたっていうのもあるけど、プレイ時間だけで言えばメンバー内ではミソスープに勝る者は誰もいない。


 なお、ミソスープは魔銃士《ガンナー》でも珍しい猟兵《レンジャー》型の魔銃士《ガンナー》で前衛《アタッカー》でも後衛《カバー》でも動ける中衛《サブ》ポジションを得意としている。別キャラで魔杖士《キャスター》を使うことも多いがこちらは魔法型と呼ばれ攻撃魔法をメインに立ち回る高火力キャラだ。


 そうこうしている間に俺たちは第一層のボス部屋へやってくる。


「ユニークボスってどんなのだったの?」


 姉《るかち》は俺に向かってそう言いながらシャッハとアコちゃんに合図《ハンドサイン》を送る。


「闇系の粘質生物《スライム》で物理耐性、攻撃で取り巻き召喚。体力三分の一で防御形態と取り巻き吸収で体力回復って、面倒くさいヤツだったよ」

「なるほどね……通常ボスは後半の動きが無いだけみたいね。じゃ一気に倒しちゃいましょ!」


 彼女はそう言ってスキル<五行拳気>を発動させる。このスキルは5つの気、いわゆる属性からひとつを選び攻撃に付与するモンクのスキルだ。


 登場したボスをスナイパー勢が火炎弾を惜しげも無く撃ちまくり、ミソスープは特殊移動で前線に移動し散弾式魔銃で火炎弾を放つ。


「延焼効果《ヒートエフェクト》出るんだ」


 俺は驚いて思わず口にしてしまう。

ミソスープがそれを聞いて『知らなかったのかよ』とニヤリとしながら言った。


 延焼効果《ヒートエフェクト》に合わせて大量沸きする黒い粘質生物《スライム》をシャッハ、アコちゃんがいきなりオリジナルスキルを発動させつつも文句を言いながら駆除していく。


「大量沸きしすぎだってば」


 そこへ姉《るかち》はゆっくりと楽しそうに進み敵本体に向かって<武神流覇《ぶしんるは》>を撃ち込む。


 もとより彼女のオリジナルスキルの威力はオカシイのだが、支援と属性の効果も乗り一瞬でボスのライフを0にしてしまう。


「なんだか、私達が苦労してたのがバカみたいね……」


 そう言いながらも楽しそうなカレン。


「ま、私達は火力重視のチームだからね」


 これくらいは当然と姉《るかち》は人差し指をピンと立てる。


「さ、この調子で次の階層も一気に駆け上がるわよ!」


 彼女はドSな笑みを浮かべながら皆を次のフロアへ急がせた。


明日は更新無し予定です!

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