第3話 「魔王様、大人気なく腹を立てる」
前話のあらすじ:妹と交流を深めました。
「見るからに怪しいが……傷を負っているのか」
「はい。見捨てることができなかったんで、連れてきました」
車内で寝かされている仮面の人物はぐったりとしていて動かないものの、胸がわずかに上下していることから、まだ生きてはいるようだった。
応急処置はされているようだが、今も尚出血が続いているようで、脇腹は真っ赤に染まっていた。
「なに呑気に言っていますの! 早く治療して差し上げないと! リング! この方の服を!」
「はいはいっと」
声を荒げたラーミアの指示に従い、リングが手早くその人物の衣服をクナイで切り裂く。
こう見ても妹は、医療系に精通していたりするのだ。
なので、治療魔法に関しては、私よりもラーミアの方が実力は上だったりする。
「ひどい傷……でも!」
衣服を破ったことで露わとなった患部に触れないようにそっと手を添えて、治療魔法を開始。
ぽうっと温かい光に包まれた傷口が、見る見る塞がっていく。
(久しぶりに見たが……腕は衰えていないようだな)
かつて、私に認められる為にマイアスが私に挑んできていた際、彼の傷をすぐに治したいという目的のもと、妹は治療師を目指したのである。
もともと根が真面目な妹はその後も治療師の勉強を続けており、私が失脚する前までは、正規の治療師顔負けの実力まで高めていたものだった。
妹の実力が健在だったことに私が感心していると、あっという間に傷口が治療されていた。
「……ふう。これで一安心ですわ。──というか、この方、男の子だったのですね」
仮面で顔はわからないものの、はだけた胸元から、ラーミアがそう判断する。
さすがに直に見れば、小ぶりな少女なのか少年なのか、わからないはずもなかったのだ。
「そうみたいだが……この子をどうするかだな」
仮面でわざわざ顔を隠していることから、よほど正体を隠したいのだろう。
まあ、その理由はわからなくもなかった。
なにせ、この少年は……
「魔族国にわざわざ人族の少年が来るなど、只事ではありませんね」
淡々とアテナが指摘する。
そう。
この少年は、人族だったのである。
仮面でこそ顔はわからないが、いまはフードも脱がされているので、髪の色がはっきりと見えていたのだ。
魔族ではありえない、艶のある黒髪。
黒髪は人族特有のものであり、恐らく仮面を外せば、人族特有の瞳の色をしていることだろう。
自分の目の色を隠す意味合いもあり、仮面を付けているのかもしれない。
国境に壁が張り巡らされているというわけでもないので、国境警備の巡回網を搔い潜れば、意外と簡単に相手国へと潜入することは可能ではあるのだ。
とはいえ、森の魔女のように偶然ということはあっても、普通の一般人がそこまでのリスクを冒してまで敵国に行くことはなく。
仮面をわざわざ付けていることから、この少年は偶然に迷い込んだ、ということはないだろう。
「勇者……というわけではないな」
だとしたら、同化している精霊が何かしらの行動に出ているはずであり。
森の中で、ダミアンにあっさり連れて来られることはなかったことだろう。
一振りの剣を携帯しているようだが、この細腕で扱うことが出来るのかは疑問であり、それゆえにここまでの深手を負ってしまったのかもしれない……まあ、推測の域は出ないが。
「ぶっちゃけ、そこまで気にする必要あるッスか? 怪我は直したんだし、あとは森の中に放り込んできたらいいんじゃないッスか?」
もっともな事を言って来たのは、手のひらでクナイを弄ぶリングだ。
「それで気絶してる時に野良魔獣にやられようが、わたしらにはカンケーないと思うんスけど」
「さすがリングさん。血も涙もない。こんな幼気な子を雨の森に投げ捨てるなど。私には口が裂けても言えませんね」
「まーたアテナっちは。自分だけいい子ちゃん振るつもり? 絶対この子、厄介事抱えてるっしょ? 巻き込まれたらどーすんのさ。縁もゆかりもないのに怪我は直した。これだけでも十分って思わない?」
「わたしは血も涙もあるので、この件に関しては、発言することは避けましょう」
「あ、ズルっ。本音はわたし側のくせに。わたしだけ悪者にする気?」
「というか、精霊に血って流れてたっけ……?」
ぼそりとダミアンが呟く。
基本的に精霊種は人間種とは違うので、血の通った肉の身体ではないのである。
「ダミアンさん、この場合のツッコミは空気が読めていないかと」
「あ、ごめんなさい、つい……」
「まったく、気を付けてくださいね。空気の読めない男は、女にモテませんよ?」
「いやいや、そもそもさ? 後輩君が普通にしてたってモテるわけないっしょっ。こーんなチビ、オトコとして意識しろってほうが、ムリムリでしょー」
「確かに。リングさんの指摘は的を射ていますね。申し訳ありません、ダミアンさん。たとえ貴方が空気が読めたとしても、貴方がモテることはありませんでした」
「えっと……なんで俺がディスられてるんですかね……?」
いつの間にか貶される側となっていたダミアンが落ち込みを見せる一方では、まだ意識のない少年の額の雨粒をハンカチで拭った妹が、私へと視線を向けてきた。
「お姉さま。実際のところ、この子どうします? 私としては、せめて雨が止むまではと思いますけれど……」
「んー……私としても、さすがにこんな雨の中に捨てて行くというのは、躊躇われるな……」
確かに、魔族と人族は敵対関係にある。
かといって私たちが直接人族から何かをされたわけでもない以上、私やラーミアが、必要以上に人族を敵視する理由はなかったのである。
だが逆の立場になって考えた場合、ひと騒動が起きかねない可能性もあった。
なにせ、怪我を負って意識を失い、目が覚めたら周りにいるのは、人族と敵対関係にある魔族がいるのだから。
子供というのは大人の影響を受けやすいために、魔族を敵視する大人たちに吹聴されていれば、きっとこの子も魔族を敵だと断定してくることだろう。
そうなると目が覚めた時に、この少年が暴れることは想像に難くなかった。
「ラーミアの意見を取り入れるとしても、とりあえずはこの子の武装は外しておこうか」
そう判断した私が、意識のない彼が帯剣している剣に手を伸ばした時だった。
「……ん……ここは……」
少年が目を覚ましたかと思うと。
「──っ!?──魔族……っ!!!?」
間近にいた私と目が合った瞬間、飛び起きるのだった。
※ ※ ※
飛び起きたといっても、ここは限りがある車内の以上、少年に逃げ場はなく。
壁際にピタッと背中を張り付けた彼は、迷うことなく抜刀する。
ダミアンが身構え、リングがラーミアを守るべく庇うように動く中、私は彼が抜き放った剣身に目を惹かれていた。
(あれは……儀礼用か。となると、彼は……)
実用性に乏しい切っ先だったのは、それが儀礼用の剣身だったからである。
儀礼用の剣を持ち歩いているということは、この少年はその剣を武器として使う為ではない、ということであり……
少年が何事か小さく呟くと剣身が光り輝き、そこからすうっと現れたのは、ふよふよと浮遊する、手のひら台の大きさの炎を纏う女の子だった。
「ほう? 火の妖精ですか」
「きゃ……っ」
「あ!? どうして妖精が触れ──」
パシっと何の気なしにアテナが火の妖精を難なく片手で捕らえており、捕らえられた妖精が小さく悲鳴を上げ、少年が愕然とした声を漏らすも、アテナの正体を知るや、焦燥感を滲ませながらも納得を見せた。
「……そうか。精霊だから、妖精を捕まえられたんですね……」
本来ならば、素の状態なら実体を持たない妖精と触れ合えるのは召喚者だけなのだが、精霊は人間とは違い肉の身体も持っていないために、ある意味では妖精と同種とも言えるので、精霊であるアテナが難なく触れたのである。
「なるほどな。火の妖精使いか。だから、雨の森の中では無力だったんだな」
私の指摘に、少年は唇をきゅっと嚙みしめた。
火が水に弱いのは当たり前であり、火の妖精もまた、自然の摂理には逆らえないということだ。
「知っていますか? 精霊にとって妖精は大好物なんですよ。じゅるり……おいしそうですね?」
「ひ、ひいぃぃ……っ」
「アテナ。揶揄うのは時を選んでくれ」
私は嘆息ひとつ。
精霊が妖精を食べるなど、もちろんアテナのいつもの冗談である。
しかしそれを真に受けた妖精は、怯えまくって涙すら浮かべていた。
「……くっ。まさかこんなところで、魔族に掴まるなんて……」
「少年、少しは落ち着いてくれ」
当然といえば当然の反応を示してくる少年に対して私が溜め息を吐くと、少年は警戒心を爆発させながら私を睨みつけてきた。
……仮面で目は見えないが、そんなニュアンスだということが見て取れた。
「……無茶振りですね。落ち着けるわけないじゃないですか。それに、僕を無力化するために剣を奪おうとしたくせに……」
「それは誤解だ。君に暴れられないようにしようとしただけだ。現にこうして、君は暴れているだろう?」
「それは、だって……」
言いよどむ彼へと、リングに守られながらの妹が柔らかい眼差しを向ける。
「怪我の御加減はどうですの?」
「怪我……? あれ? さっき魔獣から受けた傷が……」
「妹が治療したからな。少年。君に害を加えるつもりならば、手当なんてしない」
「どうして魔族が……」
「種族なんて関係ないだろう。傷を負っている者がいたら助ける。ごく当たり前な行動だ」
「…………魔族は、邪悪な存在なのに……」
「邪悪、か。一方的な考え方は、私は好かないな」
「え……?」
「魔族の中にも、何の根拠もなく人族は邪悪だという風潮があるからな。だから他人のことは言えないが……君は、邪悪という定義はなんだと思う?」
「定義、とか急に言われても……」
まあ、それもそうだろう。
だから私は、違う問い方をする。
「なぜ君は、魔族が邪悪だと判断したんだ?」
「それは……周りのみんながそう言ってるし、歴史の勉強でも……」
「周りに左右されて自分の考えを持たないのは、傀儡と同じだと思わないか?」
「傀儡っ?! ぼ、僕は傀儡じゃない!」
「君が何者かは知らないが、自分の目で見て、身体で感じたことが全てであり、それが真実なんだ。それを怠り周囲に言われるがままに考え方が凝り固まるならば、やはり君は傀儡ということだ」
「違う! だから僕は自分の意思で、みんなに内緒で魔族国に来たんです!」
怒りを露わにしてきた少年は、まるで私に食って掛かるように剣幕を荒くしてきた。しかし動揺を隠しきれていないようで、啖呵と敬語が混ざっていたりする。
この辺りは、やはりまだ子供なのだろう。
「それに! 僕自身だって魔族に被害を受けてるんだ!」
「被害、だと?」
「魔族のせいで、僕の大事なヒトが攫われたんです! だから魔族は邪悪なんだ!!」
「……どういうことだ?」
私が問いかけたところで、少年はハッと我に返ったように押し黙る。
魔族を敵視しているようなので、そんな私たちに下手な情報を与えられないと思ったのだろう。
「黙ったところで現状が変わるわけじゃないぞ。子供だからと私が甘やかすとでも思っているのか? 強引に吐かせる手段を私が知らないとでも思っているのか?」
「お姉さま」
話に割ってきたのは、苦笑を浮かべるラーミアだった。
「そんな高圧的な態度では、むしろ警戒心を掻き立たせてしまいますわ」
「いや……私は別に、そういうつもりでは……」
「おやおや。御自覚がないので? クレア様は子供に対しても、厳しい面がおありだと思われますが」
「子供だからだ。子供のうちにきちんとした考え方を持たねば、ロクな大人にならないだろうが」
とはいうものの、魔族が邪悪だと言いきられたことに多少なりとも腹を立ててしまったのは事実であり。
(私としたことが……大人気なかったな)
反省した私は、少年への対応を妹に任せることにした。
ちなみに、火の妖精はどうにかアテナの手から逃れようとジタバタしているようだったが、アテナはちゃっかり妖精から魔力を吸い取っているらしく、妖精は火の力を行使できないらしかった。
ダミアンとリングが警戒を示す中で、ラーミアは少年と目線を合わせるように少しだけ身を屈めた。
「さっきお姉さまが仰ったように、黙っていても問題は解決しないと思いますわ」
「…………」
「貴方が動揺するのもわかります。だって、邪悪だと思わされている魔族に囲まれているんですものね」
「…………」
「でも信じてください。私たちは、貴方の敵じゃありませんわ。敵だったら、邪悪だったら、貴方の傷を癒す真似なんてしないでしょう?」
「…………」
「不安なのはわかります。疑念を抱くのもわかります。でも、疑ってばかりでは先へ進めないと思いませんか?」
「…………」
「私は、貴方だけじゃなく、先ほど貴方が仰った攫われた方も心配なのですわ」
「──!……アイリ……っ」
「アイリ、と仰られるのですね」
「…………」
「ここは魔族国。人族の貴方では、何かと勝手も違うでしょう。救出するにしても、時間をかけるのは得策とは思えませんわ」
「…………」
「事情を教えてくれれば、手伝えるかもしれませんわ」
そう述べたラーミアがちらりと私を見てくる。
私の意見を求めているのだろう。
極力、寄り道はしたくないところなのだが……
私には、少し気になることがあったりする。
「少年。確認させてほしい。攫われたのは、君のその知り合いだけなのか?」
「…………」
「頼む、それだけでも教えてくれないか?」
「…………違います。何人かの人達が、拉致に合っているようです」
「そうか」
「お姉さま?」
「もしかすると、私たちとっても無関係とはいえないかもしれない」
「どういうことですの?」
「タイミングが合いすぎていると思わないか? 魔族国内でも行方不明者が出ているこの時に、人族でも人攫いが起きているなど」
素体は魔族として、その他必要な材料が、他の種族という可能性もあるのだ。
もしかすると、人族以外の種族にも被害が及んでいる可能性もあるだろう。
「私には無関係とは思えないんだが」
「それはそうですけれど……」
「半魔人の製造工場も、判明していないんだよな?」
「はい。目下全力で捜索していますけれど」
「半魔人……っ」
黙して私と妹のやり取りを見ていた少年が声を漏らした。
「もしかしてアイリは、その材料に……っ」
「……半魔人を知っているのか。しかも他国の者がその情報を得ているなど。現時点では秘匿されている情報を知る君は、何者なんだ?」
私の指摘に、しまったとばかりな顔をする少年。
なおも追及しようとする私を、ラーミアがやんわりと制してきた。
「お姉さま」
「む……すまない。とにかく、だ。君が素性を明かしたくないのならばそれでもいい。だが、もしかすると君の目的地と私たちの目的地は、同じかもしれないということなんだ」
「……同じ、ですか……」
「ああ。私としても、半魔人の製造は止めたいと思っている」
少なくとも、犠牲ありきの戦力増強は容認できるはずもなく、早急に止める必要があった。
改良して犠牲が必要ないというのであれば、止める理由はないのだが。
それに、半魔人の製造工場を潰すことでも、ブレアに大打撃を与えることもできるだろう。
「君がこの場にいるということは、攫われた人物の居場所を、何かしらの方法を使ってわかっているんだろう?」
「それは……」
「はっきり言おう。私はラーミアと違い、優しくないからな」
私の言葉に苦笑いを浮かべる妹を横目に、私は躊躇する少年を見据えた。
「時間をかければかけるだけ、攫われた人物が危険に晒されるぞ」
「……っ」
「私たちは製造工場を知りたい。君は拉致されたヒトを救いたい。私たちの利害は一致すると思うんだがな」
「……でも。製造工場じゃないかもしれませんけど」
「まあ、それならそれで構わないさ。旅は道連れというしな。救出に手を貸そうじゃないか」
「……どうしてですか?」
「君の”魔族は絶対に邪悪だ”という考えが変わってくれれば、とも思っている」
「…………」
「まずは、こちらの誠意を示そう。アテナ、火の妖精を離してやってくれ」
「かしこまりました」
「ひぃ~っ、マーズさまぁ! 怖かったよぉ~っ」
どうやら少年の名は、マーズと言うらしい。
解放された妖精は涙目で少年に取りすがり、一方で少年は、口を開けるのに一拍の間を置いた。
「……こちらからも質問がひとつあります。いいですか?」
「ああ。答えられる範囲ならな」
「なぜ……半魔人の製造を止めたいのですか? 魔族国にとっては戦力増強になるのに……」
「戦力増強になろうが、民に犠牲が出るならば意味がないだろう。民あっての国なんだからな」
「民あっての国……。ですよね。民に犠牲が出る戦力増強なんて、絶対間違ってますもんね。理由はどうあれ、守らなきゃいけない民を犠牲にしちゃいけない……」
私に同調するわけではなく、まるで自分に言い聞かせるような口ぶりだった。
そして彼は、目元を覆う仮面を脱ぐと、真っ直ぐな眼差しを私に向けてきた。
幼い顔つきから、もしかするとダミアンよりも年下なのかもしれない。
「”民”と表現する貴女の正体が気になるところですけど……僕も正体を明かせない以上、追及はしません。でも、僕と同じ考えである貴女は……信用できると判断しました」
そう述べてから、懐から取り出したのは、ひとつの懐中時計だった。
「これで、居場所がわかるんです」
パカッと開かれると、時刻を教える時計ではなく、羅針盤のような形状であり、ひとつの光る点が浮かび上がっていた。
※ ※ ※
※ ※ ※
「さっむ」
降りしきる雨の中、森の枝葉で雨宿りしている騎士のひとりが全身を震わせると、両手で雨粒を遮りながらタバコに火をつけた別の騎士が、一服してから煙を吐き出してきた。
「まあでもよ、あんなに楽しそうなラーミア様は、久しぶりに見たかもな?」
「確かに。子供みたいにはしゃいでたよな。それだけクレアナード様を慕ってるってことなんだろうさ」
「ってか。クレアナード様も、お元気そうで良かったよな」
雨宿りする彼らはこれといってやることもないが、かといって友達というわけでもなくただの仕事仲間のために、話題も自然と限られることになる。
ちなみに、御車を務めていた屈強な騎士はちゃっかり馬車内に避難しているために、難を逃れている模様だった。
「弱体化したって聞いているが……いまの俺らと、どっちが強いんだろうな?」
「馬鹿、変なことを言うなよ」
「いや、変な意味じゃなく。ただ純粋に気になってさ」
などとやり取りをしていると、傘を差した女官が近づいてきた。
「お疲れ様です。差し入れです」
その片手には道具袋を持っており、彼女は騎士たちと合流すると、道具袋からポットを取り出し、先に騎士たちに渡していたコップに中身を注いでいく。
湯気が立っていることから、温かい飲み物なのだろう。
「こりゃ在り難い」
「身体が温まるなぁ……」
「この様子だと、いましばらく雨は止みそうになさそうですね」
「だなぁ。参りますよ、本当に」
「ってか、ダースのダンナはちゃっかり馬車に避難してるし、ズルイですよ」
「この差し入れは、彼の指示でもあるんですよ?」
「マジですか?」
「意外だなぁ」
「それと。クレアナード様の馬車は雨が止むまでは動けないようなので、止むまでは我慢してください」
魔族国のこの時期の雨は長引くために、今しばらくは雨に耐えねばならず。
身体が温まったものの、騎士達は、げんなりとした気持ちを隠せないのだった。
用が済むと女官はさっさと馬車に返って行きました。




