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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
5章 嘘つきの火傷
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 旅に出るとは言ったものの、行く当てはもちろんない。

 観光地なんてものはないのだし、ごそごそと親の部屋を漁りなにかないものかと探ってみる。

 いくつもでてくる地図は、旅をすることが好きだった親父のものだ。

 そういえば、と親父の言っていたことを思い出す。


『妙な扉を見つけたことがあったんだが、そうだなあ。またいつか行ってみたいものだ。知り合いの軍のやつに伝えたらそれが大発見に繋がったんだと。不思議なこともあるもんだなあ』


 あれはただの冗談話のように思っていたが――地図の中にバツ印の描かれたものを見つける。

 まるで宝の地図のようだが。


「扉あったトコって、そんなメモがあるかよ」


 よほど嬉しかったのだろうか、ぐるぐると何重に丸がしてある。

 そこまで強調しなくても目に止まるというのに。


「ここに行くか。地図だと山の中みたいだけど」


 旅っていうものは、なにも観光することに限ったものじゃないだろう。

 この時代じゃ、観光はやはり不可能なのだから。

 可能な旅行というものは一択か。

 支度を適当に済ませ、外出用のスーツに身を包む。

 これを着ていれば、例の人間のようなものや蜂みたいなものから襲われることがない。


「僕の親父はもしかして天才だったんじゃないか?」


 このスーツを考えて作ったのは親父だった。

 スーツといっても、上下の防寒着をつなぎ合わせて、周りをガラスに似せたプラスチックで覆っただけのもの。

 遠目に見れば、あのうろつく人のようなものに見えなくもない。

 近づけば丸わかりであるが、いまのところ襲われたこともないし、うまくいっているのだろう。


 扉といえばどこかに繋がっていると決まっている。

 山の中に隠れるようにしてあったとなれば、その先にはなにがあったのだろうか。

 宝探しと考えると、この旅もなかなか悪くないものじゃないかと思えてくる。


 家をでて、一人で外を歩く。

 何かをを思い出したように振り返った。

 思い返せば一人で家を出るのは初めてだった。

 急に寂しさのようなものが湧き出てくる。


「母さんを殺したのは僕じゃないか。一人になったのは僕自身のせいじゃないか」


 不可抗力だったことだ。

 殺されると思ったら、その瞬間には母を殺していた。

 後悔はしていない。

 母の自業自得のようなものだ。

 もう二度とその場所には帰ってこないだろう。

 倒れたままの母は、いつか腐り消えていく。

 そうすればあの家には誰もいない。

 自分の中にある母は消えてくれないだろう。

 思い出は簡単に消えたりするものではないのだから。


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