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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
3章 名前を呼んでほしい
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4 いま必要なのは

 一度基地に連れて行くことを考えたが、カナメは邪魔をしたくないと言って、エイジに隠れるように付いてきた。

 一緒に行動すれば、危険はないだろう。

 何かがあった時に守ってやろうという考えは、エイジにはもちろんなかったが。


「どこに向かっているんですか?」


 カナメはエイジに問いかける。


「仲間を探している。はぐれてしまったんだ。合流できれば、安全なところまで戻る」

「分かっ……りました。ぼくにも遠くを見ることくらいはできます。なにか変なものを見つけたら言いますね」


 カナメはそう言って後ろを振り向いた。

 前はナナカが見ているから大丈夫だと判断したのだろう。

 外の世界にはもう随分慣れているようだった。

 ナナカと同じように、武器を持っていない――。


「カナメ、ひとついいか?」

「はい」

「お前、どこからきた?」


 カナメは一度振り返ったが、エイジの顔を見た後すぐに目を逸らした。

 なにか意味がありげな行動に、エイジは眉をひそめる。


「なにあれ?」


 問い詰めようとしたところで、ナナカが声を上げた。

 声につられて顔を向ける。

 そして、エイジは空に浮かぶ妙なものを発見した。


「山?」


 ナナカがそう言うのも、仕方のないことだろう。

 山は飛ばない――そんなことはだれにだってわかる話である。

 しかし、そのあまりにも大きななにかは、山と例えるほかない。

 かすかにきこえる羽音は、いつもとは違って何重にも重なってきこえる。

 あの山のようなものから聞こえると考えるべきだ。


「まさか、助手より先に本命か」

「エイジ、あれが何かわかるの?」


 エイジには、それが何か予想できた。


「巣だ。あの中にマザーがいる――」


 ナナカは息を飲み込んで、そして何かを言いたげにエイジの顔を見た。

 彼女の言いたいことはひとつだろう。

 それは、どうやっても解決できるはずのないことだ。


「俺たちには羽がない。飛べない」


 もうこの時代に、空を飛び回れる乗り物は存在しない。


「そんなぁ……」


 ナナカは肩を落とす。

 カナメは二人の会話をじっと聞いているだけだった。

 エイジは――


「……」


 巣を睨みつけている。

 空を飛ぶ乗り物はない。

 空を飛ぶためには、羽が必要だ。


「……」


 かつて鳥には、空を飛ぶ羽はなかっただろう。


「……」


 鳥は進化を繰り返し、そして空を飛ぶ権利を得たのである。


 進化を受け入れるか――進化を受け入れないか――。


 エイジにある選択肢は二つだった。


「基地に戻るぞ。ナナカ」


 どちらを選んだとしても、たどり着く場所は同じだろう。


「なにか策があるのね」


 考える必要もない。

 エイジに選ぶことができるのはひとつのみ。


「繋げるためだ」


 だれに言うまでもなく。

 彼は決意を声にした。


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