2 始動
ミドウをナナカが殺した後、エイジは彼女を連れて念のために、生き残りたちが隠れていた家に向かった。
そこには死体はひとつもなかったが、致死量を超えているであろう出血痕が大量に残されていた。
おそらく全員が、エッジにやられてしまったのだろう。
きっとまだ近くを、彷徨っているに違いない。
そして基地に戻った。
ヒビキはエイジたちを見て全て察したのだろうか、ワタリのことは聞いてこなかった。
人の死にはやはり慣れているのだろう。
「これからのことを考えないとな」
「そうですね。マザーの情報も全くないですから」
食事を終えた後、二人は向かい合って座った。
「エイジ何飲むー?」
「……お茶でいい」
「ヒビキもお茶ね」
う、と声を詰まらせるヒビキ。
二人揃ってずいぶん年下になめられたものである。
「そういえば、あいつに調べさせてはいたんだろう?」
「ああ、ナナカですか」
二人で揃ってお茶を運ぶナナカを見た。
「あの子には初めから期待していませんので」
「なるほどな」
「なによ。あたしだって出来る子なんだからね」
そうして、色の付いていないお茶を差し出した。
エイジはひとくち口に含んで、頷く。
ヒビキは慣れたようにため息をついた。
「お湯だ」
「お茶葉入れること忘れてたの。いいじゃない、温まるのは一緒だし」
「決定的に違うところがあるだろうが……」
味がないのはなんともいえないところだった。
確かに、温まりさえすればそれでいいのだけれど。
エイジはもうナナカの適当さ加減に慣れつつあった。
「こいつに期待していないとなれば、他にも助手がいるのか?」
「ああ、言っていませんでしたね。もう一人いるんです。彼女はとても優秀で、ナナカと二人で行かせたはずなんですが――」
「いつのまにかいなかったの」
ナナカはいい香りのするコーヒーを口にして言う。
やはり自分のものだけはしっかりしているようだ。
「連絡がとれなかったのは?」
「充電できる場所が見つからなくて、念のために電源を切っておいたの。もしものときに使えなきゃこまるでしょ?」
「ヒビキ、いいのかこんなので」
「エイジさんさっきも言いましたよ」
期待していない。
なるほどこれでは期待しようがないというものである。
それでも、最低限は役に立つといったところか。
エイジはお湯を口に含んでため息をついた。
「待てよ。もう一人との連絡もつかないのか?」
「ああ、いえ。彼女は機械に触れないんです。なんと言いますか、すごく不器用なので。だからナナカと一緒にしたんですけども」
「なんだよ二人とも変わらないじゃないか」
「二人とも戦闘能力は高いんですけどね」
それだから外の世界で生きていけるのだろうが。
エイジはすでに、ナナカの戦闘能力を知っている。
片腕だけで頭部を破壊できる握力。
エイジを超える脚力。
おそらくエイジは彼女と争っても勝てないだろう。
決定的ななにかが違うようだった。
もしかすれば彼女であれば、素手で結晶を破壊できるのかもしれない。
「最終目標はマザーの捕獲として、まずはもう一人と合流したいところだな。もうすでに何か掴んでいるかもしれないんだろ?」
「ええ、期待していいと思います。私は研究を続けますので、外のことは頼みます」
エイジは席を立つと、思い出したようにヒビキに声をかけた。
「もう一つ調べて欲しいことがあるんだが、いいか?」
「なにか気になることが?」
「氷河期の本当の意味だ」
「本当の意味?」
ヒビキは腕を組んで考える。
「氷河期まであと5年。ずっと変だなんて思っていなかった。違和感すらなかった。でもおかしいんだよ。A798年9月16日。その日に急に氷河期がくるのか? 今は氷河期じゃないのか?」
「……そうですね。おかしい。なぜいままでそんなことにも気がつかなかったのでしょうか。確かに調べてみる必要がありそうですね。任せてください」
「よし」
エイジは食器を片付けているナナカに声をかけ、外へ行く準備を始めた。
大変申し訳有りませんが
しばらくの間、投稿間隔をあけさせていただきます
次回の投稿は4月8日21時の予定です




