出来損ないの箱 ゼロ
出来損ないの箱 ゼロ
「アリス、頑張れよ」
「完全なる執行人のヤツらをぎゃふんと言わせるのよ」
「俺たちの望みなんだ。アリス」
すれ違う人から声を掛けられることが増えた。
どうやら、わたしが完全なる執行人から選ばれたことを知っているらしい。
正式に通告されるのは明日の正午だ。
それでも、情報というものは漏れてしまう。どこでもそれは同じだ。
明日の正午、この場所から出るチャンスがわたしに与えられる。
完全なる執行人の気まぐれは数年に一度。前回チャンスを与えられたのはわたしの幼馴染のキルファだった。
結果だけ言ってしまうと、キルファは失敗した。そして、ここ、出来損ないの箱に戻らなければならなかった。もう二度と、外の世界を見ることはないだろう。
出来損ないの箱。
それは弱者が集められる場所。毎年、百人単位で増えていく。
出来損ないの箱はその名の通り、出来損ないがゴミのように棄てられていく場所である。
わたしもその中の一人だ。
そして、完全なる執行人の気まぐれでチャンスを与えられた。
完全なる執行人の目的は知らないが、外に出ることができるのはありがたい。
出来損ないの箱は、いわゆるスラム街だ。
汚れて、沈んで、死んだと同じように生きる街。
ここの生活から逃れたいと思う人は多い。しかし、この国が存在する限り、出来損ないの箱の住人は逃れられない。
外に出るには、完全なる執行人から選ばれなくてはならないのだ。そう。今回のわたしのように。
完全なる執行人が何を考えているのかは分からない。
けれど、せっかくのチャンスを棒に振るわけにはいかない。
明日の正午。
わたしには、任務と少しの自由が与えられるはずだ。




