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なんかハメられたっぽい

 日本に帰った俺は、しばらく中国とフィリピンの他、小笠原と北マリアナ諸島にダンジョンを増やしつつ、白浜ダンジョンを充実させる生活を送っていた。


 8階層の暗黒エリア、9回階層の無重力エリア、10階層の飛行する魔物のエリアと増やしていったが、四条に難なく攻略されてしまった。


 その四条が、11階層以下を実装しろとうるさいので、11階層はボス階層にした。

 本来白浜ダンジョンはスキル育成を目的にしたダンジョンだが、11階層からは死ぬ可能性が高くなる。

 11階層のボスは、デュラハンだ。

 サンダルダンジョンの1階層にレアとして出没するストライカーデュラハンと比べると、自衛隊員と一般人くらいの差があるヌルい奴だが、白浜ダンジョンとしてはかなりの強敵のはずだ。

 各国の軍隊の精鋭の前では、ガラクタ状態だったけど。


 そんなおり、だんじょん荘にクック諸島の外務大臣本人がやってきた。


「クック諸島にダンジョンですか。

 時間的に無理です。」


 ダンジョン丸は、海がベタ凪状態なら200ノット出せれるが、大平洋の波は高い。

 全長23mのダンジョン丸では、35ノットくらいが限界だ。

 白浜から35ノットでクック諸島まで行くとなると、最短で片道145時間かかる。

 ダンジョンを稼働させてる間は、ずっと起きてないといけないから、必ずどこかで睡眠を取らなければならない、なので片道7日はかかる計算だが、これはトラブルが全くない場合だ。


 初めてアラスカにダンジョンを作った時は、3日も余計にかかってしまった。

 ヤクタットの時だって、アレックス船長がバカやったせいで、予定外のダンジョン作る事になったもんな。


 その辺を説明したら・・・


「撃墜されるのを覚悟の上で、航空機を出します。

 乗員はいずれも白浜ダンジョンで訓練を終えた精鋭達です。」


 なんと、クック諸島に2機しかない虎の子のB52戦略爆撃機を飛ばしてくれるそうだ。

 まだあったんだなーB52、もうとっくに絶滅したと思ってたよ。

 これは弱ったぞ、B52なんて乗れる機会なんか今後絶対ないぞ。


「帰りはトランスポータルの罠が使えるように、日本製府とも交渉済みです。」


「は?日本政府トランスポータルの罠オッケー出しちゃったの!?」


 急いで山本議員に電話して、そんな事になってるのか確認したところ、日本とクック諸島には直行便がなく、ニュージーランドを経由した便でも利用者が少ないため、航空業界には影響ないと判断したそうだ。

 後は通関の問題が残るが、南紀白浜空港の中に出発用ダンジョンと到着用ダンジョンを作れば解決すると合意したそうだ。

 実際は1つのダンジョンに出入り口を2つ用意して、双方の往来を困難にする感じになるだろう


「をゐ!何で俺に相談しないで決めちゃうんだよ!あそこ道路が片側1車線しかないから、通常ダンジョン作ったら年中渋滞するぞ。」


 俺は山本議員にスマホ越しに抗議したが、奴はどこ吹く風だ。


「渋滞は君が気にする事ではない。

 探索者の中には、渋滞を嫌って駅から走る者も多いしな。

 それに君、ダンジョンの起源を探しにフランスに行きたいって言ってたじゃろ。

 そのうちワシらに黙ってやらかすつもりじゃったろ。」


 読まれてる、くそーっ!


「そうそう、ダンジョンのカルマ判定の罠を使いたいから、空港施設にもダンジョン組み込めるように頼む。

 空港にはもう話行ってるから頼むど。」


「それもやるんかーい!

 てか、カルマ判定以外にもマリファナとかコカインとかも見つけられるけどなっ!」


「んがっ!?」


 山本議員、目んタマ飛び出てますよ。

 えらく驚いてるみたいだけど、アナタだんじょん荘から、オリハルコンとか特定の物持ち出せないように規制かけたの知ってるでしょ?





 続いて、ダンジョン課に空港改造の件を聞いてみたら、「もう決まったんですかーっ!」と驚いたいた。

 鈴木蓮も知ってたあたり、どうやらダンジョンを白浜に誘致したときのチーム和歌山が動いてるっぽいな。


 まあ、空港がダンジョンというのも面白そうだ。

 俺も悪ノリして警備用にスチールゴーレムを配置したり、トランスポータルの罠までの間を吊り橋にして、眼下に魔物を徘徊させたりしてみた。

 高所恐怖症の人からは不評だったが、「このルートを使って日本を侵略する奴らがいたら、即座に吊り橋を落として日本を守る」と言ったら、みんな納得してくれた。


 南紀白浜空港ダンジョンが完成し、例によって産油国からの妨害をなんとかかわしつつ、クック諸島に到着した俺は、ラトロンガ国際空港内にダンジョンをサクッと作り帰国した。

 やはり、トランスポータルは早くていい。

 航空業界にも影響が少なそうで良かった。


 と思った時期が俺にもありました。


 俺が南大平洋地域にダンジョンを増やしていたある日、ふと気がついた。

 ラロトンガ国際空港ダンジョンから南紀白浜空港ダンジョンにトランスポータルする団体客がいる。

 2ヶ月前までは俺しかいなかったのに、どういう事だ?


 空港職員に聞いてみたら、納得の事実が。

 南米から東アジアを目指すとき、クック諸島に来てトランスポータルを使うのが一番早いから、みんな南米から東アジア行きの直通便を使わず、クック諸島に来てるんだそうだ。

 南紀白浜空港は白浜ダンジョンの影響で、マニラや北京への直通便があり、関空に行けば大抵の主要空港に行けるから、ラトロンガ国際空港の利用客は増えてるのだそうだ。


 教えてくれた空港職員は、去り際にニヤリと笑った。

 そういえば、俺がダンジョンを作ったその日に、ターミナルからダンジョンに行く道の整備が始まってたな・・・てことは、俺がダンジョンを作る前には、すでに設計どころか資材の発注が完了してたな。

 間違いない、コイツら確信犯だ。


 利用客が少ないから大丈夫だろうと、たかをくくってたら、このザマですよ。

 油断もすきもあったもんぢゃねーよ。


 日本に帰った俺は、久々にネットを検索し、日本~南米の直通便がのきかなみ廃止になった事を知った。

 航空業界に、モロ影響出てんぢゃねーか!

 同時に、俺宛のヘイトが集まり、大炎上してる板が複数見つかった。


 俺のせい?今回はクック諸島のせいだろ!

 今さら大炎上しても気にしないけど、俺のせいじゃないのに炎上するのは、どこか納得できない。

 俺は、たまたま白浜ダンジョンにうっぷん晴らしに来てた山本議員にグチをこぼした。


「山本さん、ゴーレムの握力なら、『装甲』の魔法でも握り潰せますから、ちょつとゴーレム軍団編成して、クック諸島滅ぼしに行ってもいいですよね。」


「お前そんな事できるのか!?」


「できませんよ。

 ダンジョンマスターがダンジョン出て使える権能なんか、ダンジョン作る事とコアを加工する事くらいですよ。」


「脅かすでないわ。」


「なるほど、それ脅しになるんですね。

 いいこと知りました。」


「・・・」


 山本議員は深いため息をつくと、ようやく今回の一件を白状した。

 日本とクック諸島をトランスポータルでつなぐと、周辺の航空事情が変わる事は気付いていたそうだ。

 そこで、航空各社に問い合わせたところ、東アジアから南米への直行便は存在せず、北米で乗り換えるのが一般的なんだそうだ。


 この乗り換えがうまくいかないと、航空各社に空港職員および乗客の全てに負担がかかり、信用を落とす原因になるので、どうにかしたいと悩んでいたが、他に方法がなく、世界の空を預かってきた自負や責任感もあったので、今日までずるずると来ていたらしい。

 正直、東アジアから南米に行く人は国際線の利用客の0.1%もいない、そんなもののために信用を落とすくらいなら、廃線にしたいのが航空会社の本音だ。


 ならばダンジョンマスターが唯我独尊にダンジョンを作った挙げ句、めんどくさくなってトランスポータルの罠で帰った事にすれば、利用者は素早く移動できるし、航空会社も利用客がいなくなった路線を廃線にできる。という事だそうだ。


「それで俺が悪者かよ。」


「今更じゃろ。」


 何か納得いかねーっ。

 でも、南大平洋地域にダンジョン作りやすくなったからいいか。

 恨んでも現状が変わる訳でもないから、ここはやりやすくなったと前向きに考えよう。


「それじゃ、唯我独尊にトランスポータルの罠でダンジョンつなげまくりますんで。」


「それはやめてくれ。」


 ダメか。

 でも、いつか全てのダンジョンをトランスポータルの罠で往来できる大航海時代ならぬ大ダンジョン時代が来そうな気がする。

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急いで松本議員に電話して、そんな事になってるのか確認したところ、日本とクック諸島には直行便がなく、ニュージーランドを経由した便でも利用者が少ないため、航空業界には影響ないと判断したそうだ こちらでは…
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