帰路もただでは済まない
翌朝、サンチョン空港から乗員150名を乗せたボーイング737型機が飛び立った。
事前に韓国の軍人と俺が乗っている事を周知し、AAMミサイルの有効射程に入った戦闘機は日韓の機体であっても、問答無用で撃墜すると事前に警告しておいた。
なので、さすがにスクランブルをかけるようなバカな国は無かった。
ただ、遠くからタンク満水戦法をしようとしたバカがいたので、俺はお返しとばかりに、『探知』魔法と『魔力探知』スキルのコンボで、術者共をつきとめて水瓶の魔法を連射してやった。
使ったのが屋内だったから大変な事になってるだろうけど、死にはしないだろう。
民間機に『水瓶』使うような奴らだ、容赦はしない。
それを俺が本当に乗っている、プサンから福岡行きの客船の中から、5分後にもう1度犯人共を中心に『水瓶』をプレゼントしてやった。
復旧作業をしている人達が慌ててる。
俺は福岡につくと、またしても自衛隊の車で白浜まで送ってもらう。
白浜までは、かなり時間があるので、同乗していた自衛官の事情聴取に応じたり、雑談したりして過ごした。
「士長さん、護衛艦あかつきの件はどうなりました?」
俺は運転してる、名前を知らない士長に聞いてみた。
韓国でも報道されてたが、『意訳』の魔法では、テレビの内容が分からない。
画像と放送の長さから、あかつきが沈んだとしか報道されてなかったと思う。
「日本では、昨日から大騒ぎであります。」
やはり、日本では扱いが大きかったか。
「犠牲者は出ませんでしたか?」
「自分は海自のことはよく分からんです。」
「そりゃそうか。」
少なくとも機関士達は全員助けたから、しばらくしたら韓国から戻って来ると思う。
いや、もう戻ってきてるかな?
ここは記者の牧野に聞くか。
俺は牧野に電話をかけた。
「鈴木さんですか!
今度はどんなネタくれるんですか?」
今日の牧野は食い付きが良いな。
「まずは、俺が護衛艦あかつきに乗ってたっていうネタだ。」
「まぢかっ!
鈴木さん墜落したユナイテッドエアーにも乗ってましたよね、実はかなりヤバい立場にいるんですか?」
少し地がでてるな。
携帯越しに牧野が興奮してるのが分かった。
「らしいね。
アメリカにいたときも、何度か狙撃されたよ。」
「狙撃って・・・何でそんな平然としてられるんですか。」
「色々やらかしてるから、そのうち刺されるだろうなって。
実際は撃たれたけど。」
「という事は、あかつきが沈んだのは、鈴木さんが狙いだったと?」
「多分ね。
どうやら魔石発電が、エネルギー産業の連中から見ると、脅威らしいんだ。
世界中の軍需産業とか軍隊とか、事実上俺が潰しちゃったような物だからね。」
「次はエネルギー産業の番だという訳ですか。」
魔石発電が普及したら、恐らく産油国は大打撃を受けるだろう。
だが、俺はダンジョンを増やし続ける。
ダンジョンから産出されるのは、魔石だけじゃない、魔鉄やアダマンタイトのような、周期表に無い魔金属類も産出されるのだ。
魔金属類は、ほぼ全てが何かしらぶっ壊れた性能を持つので、金や銀など比べ物にならない価値があるはずなのだ。
「エネルギー産業には悪いが、俺はダンジョン作るのやめないよ。」
「産油国が黙ってないですよ。」
「だから飛行機や護衛艦ごと抹殺となんて話になったんだろうね。
それと、米韓の合意で、医療産業からも狙われる予定だから。
そんな事より、あかつき情報教えてくれよ。」
「そんな事ってアンタ・・・」
牧野は、イカダで脱出した隊員はコンテナ船が救助して、新潟港で下ろされた事くらいしか知らなかった。
あかつき沈没の原因は調査中との事だ。
これは意図的に隠蔽してる可能性があるな。
単に発表が間に合ってないだけかも知れないけど。
情報的には、こちらの持ち出しが多かったが、現状は把握できた。
ここは動かない方がいい、白浜につくまではラジオとかで情報収集だな。
途中、行きと同じくドクロマークが書かれたナニモノカを受け取り、和歌山駐屯地まで輸送する。
厳重に密閉されているから、中身は分からない。
空間型ダンジョンの中でゴーレムがナニモノカを落としたみたいだが、大丈夫だろうな。
色々気になるけど、これは知らなかった事にした方が良さそうだ。
その頃、中国の北京では、晴天なのに浸水被害を受けたとある建物で、復旧作業が続いていた。
『水瓶』の効果はおよそ直径10m、上下の階も一部水浸しになった。
「サーバーは完全に駄目です。」
不幸にも、ターゲットがいた部屋の下の階は、サーバールームだった。
各種機材の運命は推して知るべしだ。
状況から見て、報復なのは間違い無い。
「くそっ、どこから情報が漏れたんだ!」
彼らはまだ、『探知』の魔法が、逆探知可能なのを知らない。
「怪しい者をピックアップせよ!」
こうして、いもしない犯人探しが始まった。
犯人の情報が入っていたであろうサーバーから、ハードディスクを抜き出して解析しようとしたが、『水瓶』の魔法は、ハードディスクの隙間に入り込み、本来密閉されてるはずの内部まで水浸しになっていた。
それでも復旧させようと努力を重ねたが、ハードディスクは積層されたディスクのマウントが1μmずれただけで正常に働かなくなる。
彼らの試みは失敗に終わり、結局怪しい奴を、拷問および自白剤で無理やり吐かせ、いもしない犯人を15人ほど見つけ出した。
何人も粛正され、中には偶然にもイスラエルのスパイも混ざっていた。
後に残ったのは、大量のゴミと無理やり自供させられ粛正された関係者の恨み、そして保身のために報告した『イスラエルと鈴木元太がつながっている』という間違った情報だけだった。
粛正の嵐が終わって数カ月後、『探知』の魔法が、逆探知できると知った時には、イスラエルとの間に生まれなくてもい軋轢が生まれ、しばらく後を引く事になるのだった。
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