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サンダルはクセが強かった

 さて、リビングメイルをどうしたものか。

 『火矢』の魔法は、愉快犯が覚えたら、とんでもない被害が出てしまう。

 できれば公開したくない。


 怪我人に『治療』の魔法をかけながら、みんなで話し合ったが、どうしてもいいアイデアが出てこない。


「異世界ではどうしてたのだ?」


「ダンジョンマスターは兵站部隊だったから、直接戦闘に参加しなかったんです。

 聞いた話だと、魔鉄の武器を装備して、各種スキル使った上に、『筋力上昇』の魔法をかけたらしいです。

 後、天職による補正や権能も使っただろうね。」


「『筋力上昇』の魔法は公開してないのか?」


「はい、前にテレビでアイドル歌手に魔法をかけたら、今までの5倍を越える筋力が身に付いたんですが、骨が耐えられるか自信がなかったんで、そこで止めさせた事があるんです。

 最低でも『骨格強化』のスキルがレベル3は無いと危険ですよ。」


『骨格強化』のスキルは骨折しないとレベルが上がらないっぽい。


 アイデアを色々と試しては敗退を繰り返し、進展しないまま、夕方になってしまった。

 このままではらちが明かないので、S&Wのブラウンに相談してみた。


「アルカトラズではでは2階層にリビングメイルが出ました。

 対して我々は有効な攻撃手段を確立したのでーす。」


「本当か!?

 こっちは困ってんだ、教えてくれよ。」


「ならば商談で~す。」


「すまん、武器の商談なら、韓国軍とやってくれ、今代わるから。」


 俺は、韓国軍のチョン軍曹と代わった。

 彼は在韓米軍とも付き合いがあったので、英語も話せた。

 意訳の魔法は電話越しでは使えないので、正直にスゲーと思った。


 ブラウンとチョンの交渉の結果、韓国軍はS&Wから徹甲弾の購入と、俺が『治療』の魔法を公開することで、攻略法を教えてもらえる事になった。


 をゐ!なぜに麻呂が『治療』の魔法を公開するのが決まっておじゃるのだ!?


「こらーっ!勝手に魔法の公開決めるなーっ!」


「アメリカでは、既に州兵が300人ほど入院してるそうだ。

 回復できる魔法が無いと、ダンジョン探索に支障が出る。

 それは我々も同じ考えなのだ。」


 そりゃ、大変だろうけどよ。

 でも魔法の公開で外科医が減るのは、それはそれで大問題だぞ。


 でも、ダンジョンに余剰DPを使わせないとスタンピードが起きる可能性もある。

 その方法こそが、魔物の間引きだ。


 仕方なく俺は『手当て』の魔法を公開することで妥協した。

 本当に大丈夫なんだろうな・・・ダメな気がする。

 まあ、炎上するのは今更か。


 本当は韓国政府とS&Wの契約が終わるまで待たないとダメなんだけど、ブラウンは特別にリビングメイルの攻略法を教えてくれた。


 なんと、リビングメイルには弱点があるのだそうだ。

 その弱点は、『魔力探知』のスキルで判明するのだそうだ。


 今や盲目の障害者の生命線として有名になった『魔力感知』と『魔力探知』は、俺も修得した。

 試しにブラウンから教わったとおりに『魔力探知』を使うと、リビングメイルの体の一ヶ所だけ魔力の反射がおかしい所があった。

 なるほど、アレを潰すのか。


「分かった!左の太ももに弱点がある。」


 俺の指示で左の太ももに銃弾が撃ち込まれる。

 わずか4発でリビングメイルはバラバラになった。

 後に残ったのは10kgほどの鉄塊が1つ、アダマンタイトはレアドロップだったようだ。

 次のリビングメイルの弱点は右脇腹、次は背中と個体差がかなりあった。


「なるほど、これは有効だわ。」


「その『魔力探知』スキルは、どうやって手に入れるんだ?」


「視覚と聴覚が完全に効かない状態で、魔物を倒すと手に入ります。」


「そんな状態でリビングメイルや化け猫を倒さないといけないのか、そんなの無理だろ。」


「正直無理ですね。

 なので、こればかりは難易度初心者の白浜ダンジョンで修得しないとダメです。

 幸い、あの近くには空港がありますから、韓国なら短距離の旅客機で直接乗り入れ可能なはずです。」


 アルカトラズで『魔力感知』を使った奴も、多分飛行機事故でだんじょん荘に一時収容された被害者だろう。

 こればかりは白浜に来てもらうしかない。

 帰ったら、暗闇の罠の間と無音の罠の間を増やすか。

 いや、白浜ダンジョンに階層全体に暗闇の罠を施した階層を作るのもいいかもしれない。


「ならば、白浜ダンジョンで『魔力探知』のスキルを獲得するのが先だ。」


 チョン軍曹は、部隊長に何やら進言すると、軍用車で何処かに去って行った。


 時間がかかりそうなので、俺は兵に化け猫対策に『魂滅』の魔導書を見せ、スマホに撮影させた。

 そして『魂滅』を魔物以外に使う事が、どれほど危険なのかを説明する。


「ダンジョンの魔物に使う分には問題ありませんが、絶対に人間に使わないで下さい。

 異世界では生身の人間に使っても大丈夫でしたが、地球は魔力が強いので、無事では済まないかもしれません。」


 魔力が強いのも考えものだ。


「魂滅で消滅した魂は、本当に無くなります。

 しかし、輪廻の順番は変更されません。

 よって、魂が無い状態で転生します。

 当然魂が無い状態では生きて行けないので、肉体が死んだ後、再び輪廻の最後尾に魂が無い状態で転生の順番が登録されます。

 この繰り返しです。」


「つまり、死産の確率が上がる訳か。」


「はい、厄介なのが魂の一部が欠損した場合です。

 どうなるか一概に言えませんが、最悪の事例では、何をやってもカルマが上がるようになり、死んだ後はカルマが高いため、王族に転生しては横暴の限りを尽くし、たとえ討たれても、また王族として転生しては横暴の限りを尽くすという事例がありました。

 ちなみに、国を救うために暴君を討った英雄は、カルマが高い者を殺した罪で、カルマが天文学的に落ちたとか。

 一番キツイ地獄で精算するにしても、10万年かかるとの噂です。」


「ひでえ・・・」


 地獄が本当にあるかどうかは分からないけど、地球でも異世界でも、地獄の概念はあったから、本当にあるのかもしれない。

 空間型ダンジョンつないで地獄に行かないように気を付けよう。


「俺はその異世界に行った事があります。

 昔は人口1億人規模の国もあったそうだけど、俺が行った時点では、人口1万人以上の国は無いみたいでした。

 努力して国を富ませたら魂オカシイ奴に骨までしゃぶり尽くされるから、みんな努力しなくなって、どこも極貧の生活でした。

 俺は事情だけ聞いて、一切補給しないで別の異世界目指して逃げたけど。」


「そんなにヤバいもんなのか。

 でも、そいつも『魂滅』で倒せば良かったのでは?

 死産の確率が上がる方がマシだろ。」


「当然試しただろうね。

 でも解決してないって事は、ダメだったんでしょう。

 まあ、何かの感情がおかしかったり、スキルが訳の分からない動作をしたり、びっくりするだけで魔法が暴走したりと、普通は被害が限定的で、社会全体を潰すような事は稀みたいだったけど。」


 魔物を仕留めてる間も、魂の欠損や消滅についてレクチャーする。

 面白い事に、言葉で話すより『意訳』の魔法で伝えた方が、ヤバさが伝わった。


 今日1日狩りまくり、魔石は150kgも集まった。

 宝箱もあり、中級ポーションが2個と、魔鉄でできた矢じりが4つ、ドーピングの種が1つ手に入った。1階層からドーピングの種かよ。


 初日なのに、なかなかの量である。

 韓国兵達は『魂滅』の魔法にも慣れ、俺さえいれば、かなり順調に狩れるようになった。


 ダンジョン入口で韓国兵に混ざって晩飯を食いつつ、雑談する。

 『意訳』を使うために『装甲』を解除するのは不安だな。


「鈴木君、いくら魔法を使っても魔力切れを起こさないんだが、どうなってるんだ?

 小説とかだとよくあるだろ。」


「地球は魔力が濃いから、使ったそばから回復するんですよ。」


 これが白浜ダンジョンなら、寝るか魔力を回復するポーションを使わないとダメだ。

 魔法関連のスキルを上げるには、白浜ダンジョンより、アルカトラズやサンダルの方が良さそうだ。


「『魂滅』はゴースト系限定にして、グレードランチャー等の銃砲でその他を攻撃するしか無いな。」


「でも、それだと弾切れになったらどうするんだよ。」


「かと言って、リビングメイルに刀剣が効くとは思えん。」


 武器とは人殺しのための道具だ。

 つまり人を効率良く殺すために発展してきた道具であって、魔物を殺す事は想定していない。

 人類が何千年もかけて進化させてきた武器は、人外の存在にはあまり有効ではなかった。


 ダンジョンのセーフティエリアにカクテキをゴリゴリ食う音だけがする。


「鈴木君、異世界ではどうしてたんだ?」


「リビングメイルはもっと深い階層で出てくるから、それまでに『腕力強化』や『先制攻撃』や『斧強化』みたいな攻撃スキルはレベル4くらいまで上がってるものなんだ。

 後は天職、『僧侶』ならさっきの化け猫を一切消耗しないで消滅させられる、魔石ごと。

 地球は天職無いから厳しいなぁ。

 その代わり銃砲も車両もあるけど。」


「そうだ!戦車で踏み潰そう!」


「いや、ロードローラーだろ。」


 兵達が急に沸き立つが、それだと魔石も粉々になるんだよな。

 韓国がダンジョンを欲しがる理由の1つは、魔石発電だ。

 なので、魔石を粉々にしてダンジョンに吸収されては、本末転倒なのである。


「それは最後の手段だね。

 魔石が手に入らないのは痛いな。」


 となると、答えは1つしかないよなぁ・・・


「やっぱり、白浜ダンジョンでブートキャンプして、スキルの獲得とレベル上げしかないかな。」


「その通りだ。」


 チョン軍曹と司令官だ、どうやら話し合いが終わったらしい。


「日本政府と話がついた。

 君から許可が出れば、順次白浜ダンジョンで鍛える事となった。」


 まあ、そうなるとは思った。


「俺次第ですか。

 ところで、銃の使用については、何か言ってましたか?」


「いや、何も。」


 ならばオッケーにしちゃえ。

 こちらから条件を提示してみた。


「そうですね。

 条件は


○期間

 無制限

○人数

 300人まで。

○宿泊

 だんじょん荘(1人1ヶ月5000円)

○物資

 韓国軍が用意する。現地調達可。

○武器

 歩兵が携帯できる武器は全て使用可能

 だんじょん荘から外へは持ち出し禁止

○法律・規則

 だんじょん荘のルールに従う。

 ルールが無い場合は日本の法律に従う


 こんな所でしょうか。」


 韓国側には特に異存は無かったようで、即座に合意となった。

 俺にとってはトラブルも回避できて、一気に300人分のDPが手に入るおいしい契約だった。

 言葉のチョイスがおかしい場合も、誤字脱字報告でお願いします。

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え!?治療の魔法公開しないって決めてたのに韓国のために公開しちゃうの!? おかしいでしょ!
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