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サンダルでダンジョンを作る

 散々な目にあったが、俺達は韓国に辿り着いた。

 場所はチャンウォン市チネ区、韓国海軍の軍港が有名な所だ。

 というか、モロに軍港だった。


 俺達は巡回の兵をつかまえ、韓国軍に保護してもらった。

 その日はもう夜だったので、収容施設で夜を空かす。

 基地司令には、俺が渡航する話がいってたのだが、彼らからしてみれば密入国状態だったので、俺の名をかたるスパイの可能性も考えたそうだ。


 翌日、彼の目の前でK2戦車を『火矢』の魔法で吹っ飛ばしたら、簡単に納得してくれた。

 東富士演習場での一件はこちらにも知れ渡ってるらしい。

 基地司令からは、『火矢』の魔法を教えて欲しいと頼まれたが、俺が自衛官に『装甲』を使わせ、そこに『火矢』を撃ち込んで彼の無傷な姿を見せると、司令は『火矢』を公開しろと言わなくなった。

 敵兵に効果は無く、流れ弾の破壊力は強大となれば、公開しても害しかないと分かってくれたのだ。


 自衛官達はひとまずソウルの日本大使館が預かる事になり、俺は早速ダンジョンを作りに行くことになった。


 俺は万一に備えて『装甲』の魔法を展開しているため、通訳にチョン・ウユ軍曹をつけてくれた。


「昨日は災難だったな。」


「ええ、ロシアに続いて今度は中国ですよ。

 ところで、候補地はどういった所ですか?」


「サンダル島だ。」


 スタンピードの危険性と狩りの効率を考えたところ、橋が一本しかかかってないサンダル島に決まったそうだ。


 サンダル島にはすでにダンジョンのスタンピードを前提に、陣が組まれていた。

 アルカトラズではM2だったが、ここでは対物ライフルだ。

 部隊も300人程が配置されたいた。

 手にはS&Wのグレードランチャー、チョン軍曹によると、ダンジョンの情報を提供してもらう条件として、韓国軍で購入したそうだ。


「このようにダンジョンを作ってくれ、できるか?」


 俺はチョン軍曹からダンジョンの大まかな図面をもらうと、検討に入った。


「通常のダンジョンだと、セーフティゾーンはダンジョンにストレスがかかる。

 ダンジョンコアに近くなるほどストレスが強くなり、魔物が強くなる。セーフティゾーンはやめた方がいい。

 やるなら、ダンジョン入口付近だ。」


「それではあまり意味が無い。」


「いえ、ダンジョンに通算10時間いるだけで手に入る『自然治癒強化』というスキルがあります。

 他にも徒歩で通算10km移動ると手に入る『体力上昇』や、水中で通算100秒息を止めると手に入る『肺活量強化』といった、戦闘以外で身に付くスキルがあります。

 白浜ダンジョンに来ればすぐに身に付きますが、韓国国内でもそういった場所があった方がいいでしょう。」


「なるほど、そういう事なら頼む。」


「あと、一般ゴミでもいいので、いらない物をください。

 ここにくるまでに結構DP使っちゃったから、ダンジョンに補給します。」


 俺はおよそ島の中心にダンジョンを産み出した。

 幅は3m,一応車が入れる大きさだ。


 1階層の最初は直径100mほどのセーフティゾーンにした。

 セーフティゾーンは魔物が湧かないだけで、普通に侵入してくる。

 外もだが、常に兵が常駐しなければならないので、そこそこ負担になるだろう。


 セーフティゾーンからは通路が5本放射線状に伸びている。

 4本は幅50cmと狭いが、一本だけ幅が3mある。

 スタンピードの際には、主にここから魔物が溢れだすのだが、これはダンジョンの仕様として仕方がない。

 大型の魔物が往来できないと、ダンジョンはマスターの隙をついて、想定外の所に出口を作るようになるからだ。


 この太い道を見つけて上り坂を行くと、セーフティゾーンに帰って来れるようになっている。

 細い道はショートカットだ。


 1階層をある程度作成したら、意図的に用意した2階層までの下り階段の先にダンジョンコアを設置する。

 アルカトラズのときは、特に指定が無かったので、自然発生に任せたから、魔物も無理なく発生したが、果たしてここは何がポップするだろうか。

 韓国軍だけでは不安なので、俺も随伴する。


 幅3mの通路を俺を先頭に3列縦隊で進むと、すぐに『探知』の魔法に魔物がヒットした。


 あれは・・・リビングメイルか?いや、デュラハンかも。

 デュラハンは生首を抱えてる奴がほとんどだが、たまにゴハン粒か何かで元あったあたまにくっつけてる紛らわしい奴もいた。

 それをやられると、デュラハンとリビングメイルはダンジョンマスターでもぱっと見分かんないんだよな、完全にキャラかぶりだ。


 それにしても、えらい重装備だ、普通のリビングメイルは鎧だけで、たまに片手剣を持ってるだけなのに。

 盾と、アレはまさかツヴァイハンダーか?

 ツヴァイハンダーといえば、両手持ちの剣の中でもヘビー級で、槍やハルバードなどのポールウェイポンの棒の部分を攻撃して武器を破壊するのが目的の武器じゃなかったか?

 重すぎて手数が少ないから、対人攻撃には向いてないはずだ。

 奴は、そんなシロモノを片手でブンブン振り回してる。


 俺は魔王四天王の矛で斬撃を受けてみたが、とんでない威力だ、一撃で吹っ飛ばされ、ダンジョンの壁に叩きつけられた。

 『筋力上昇』の魔法で強化してるのに、コレかよ。


 すかさず兵がグレードランチャーを撃ち込んで、ターゲットを奪ってくれた。

 しかし、1発や2発でくたばる鎧ではない。


 俺は背後から近づき矛を全力で一閃し、右肩から左脇腹まで一気に斬り裂いた。

 瞬間、俺の右腕からありえない激痛が走る。

 とてもではないが矛を持てない、それどころか何かを握るのも無理だ。


『新規スキル取得 骨格強化』


 矛の重さと魔法で無理矢理強化した筋力の全力攻撃に、右腕の骨が耐えられなかったかっ!てか、『骨格強化』って骨折すると手に入るのかよ。


 慣れない左手でスマホを操作するのは厳しいので、根性でリュックから笏を取り出し、『治療』の魔法を発動する。

 みるみる骨折が治り、痛みが嘘のように消え去った。

 やはり、『治療』の魔法は公開すると外科医が大量に失業しそうだ、慎重にしないと。


 しかし、問題なのはもう片方の魔物だった。

 ゴースト系だ!しかもただのゴーストじゃない。

 羊くらいの大きさで虎縞模様、しかし、透けて体内の魔石が見えている、化け猫だ。

 あれはグレネードが効かない、どうしよう1階層からゴースト系が出ちゃったよ。


 ちなみに化け猫は、日本では100年生きた猫が妖怪になったと伝わってるが、異世界では死んだのに気がつかず100年経過した猫の魔物と言われている。


 化け猫は容赦なく『火槍』の魔法をブッ放してきた。

 『火矢』でもオーバースペックなのに、『火槍』だ、『装甲』の魔法で防げるけど、4発が限界だろう、5発目は魔法が破られた上に、余波で体がプラズマ状に分解されそうだ。


 俺は仕方なく化け猫に『魂滅』の魔法を撃った。

 『魂滅』は、霊体にダメージを与える魔法で、実体がある相手だと効果が無い。

 少なくとも異世界では効果が無かった。

 化け猫には有効なはずだ。


 魔法を放つと、ターゲットを中心に半径1mが赤黒い光に包まれる。

 赤黒い光は6秒ほど続き、『魂滅』に巻き込まれた化け猫は、魔石を残しきれいさっぱり消滅していた。


 うわーっ、『魂滅』も大幅パワーアップしてる。

 異世界じゃ効果は一瞬で、範囲もゲンコツくらいだったのに。

 しかも一撃って、異世界じゃ何発か当てないとダメだったのに。

 めちゃくちゃ危ないな。

 まさか実体があっても魂がダメージ負うんじゃないだろな。


 ちなみに、鎧の方は『死の宣告』を使ってこなかったのでリビングメイルと判断した。

 グレネードランチャーで倒せたが、だいぶ弾を使ったようだ。

 正直コストパフォーマンスが悪い。

 全員もれなく『射撃』スキルを手に入れたので、次からは命中率に1%の補正が加わるが、イマイチ実感できないだろう。


「まいったな、ゴースト系には実弾兵器は効かないぞ。」


「今の魔法を公開する訳にはいかないのか?」


「『魂滅』の魔法は、霊を攻撃する魔法なんだが、地球では威力が強すぎて一撃で仕留めてしまいました。

 ダンジョンのゴースト系の魔物なら問題無いんだけど、人間の霊に使うと治療不能な魂の障害者として転生したり、輪廻の輪に戻る魂が減ったりして世界の理を破壊する可能性があるんです。」


 異世界では『魂滅』の魔法は、基本実体がある敵には効果が無かった。

 しかし、地球では効果が高すぎる。

 実体があっても、危ないかもしれない。

 帰ったら雲のダンジョンとかで実験してみよう。


「でも、ゴースト系が出てきちゃったなら、そうも言ってられないもんな。

 スタンピード怖いから、君たちにだけ教えるけど、取り扱いには本当に注意してね。」


 最後に、この魔法は対人はもとより、あらゆる動物の霊への使用を禁止し、違反者には重い量刑を課す法律を制定するようにと忠告した。


「くれぐれも、動物に使っちゃダメだよ。

 魚・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類全てダメだからね。」


「虫はいいのか?」


「虫に魂は無いらしいです。

 虫でゴースト系とか見たことも聞いた事もありませんしね。

 魔物なら女郎蜘蛛とかいますけど。」


 注意しておいたのだが、一見するとお手軽に化け猫を倒せる『魂滅』は、徴兵制がある韓国内に広まってしまうのだった。


「リビングメイルはどうにかならないのか?」


「入口にセーフティゾーンを設けた悪影響だ、どうしようもなければ変更するけど、他に無理が出るからおすすめできない。

 倒し方を考えた方がいいな。」


 試しに『火矢』を放ってみたら、命中しなくても一撃で倒せた。

 ダンジョンの壁に当たった時の爆風および衝撃波でバラバラになったのだ。

 『装甲』の魔法無しだと全員死んでるな。


 ちなみに、魔石は化け猫・リビングメイルともに1kg、お値段にして1万円くらいだった。


 その他にリビングメイルは、なんと低確率だがアダマンタイトの粒をドロップした。

 アダマンタイトはダンジョンに唯一吸収されない物質なので、俺は普通に欲しい。

 異世界じゃダンジョンの20階層より深くないと見つからなかったのに、地球じゃ1階層でいきなりだ。


 化け猫のドロップはゴーストラバー、異世界ではゴムの役割をしていたので高値がついたが、地球には普通にゴムがあるので、ハズレである。

 言葉のチョイスがおかしい場合も、誤字脱字報告でお願いします。

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