6.地馳さまの付き人
みゃうみゃう、みゃうみゃう……
お互いに鳴き交わしてるアミョーを見上げる。
長い足は、シラカバの幹みたい。ちょうど真ん中あたりから、つやつやした象牙みたいな蹴爪が生えてて、その色がそれぞれ違う。
羽は濃い茶色、頭と首は白と茶のまだら。ちょっとウズラみたいなイメージだ。
……おお、目が黄色!
背中の位置が私の目の高さくらい。そこから蹴爪に足をかけて人が降りてくる。
服がふわんと軽く広がった。
「もふ!」
今まで見たことない質感の、布? 毛布? 羽毛布?
色がアミョーとおそろいだから、アミョーの羽で作ったんじゃないかな。
「なに? 布に興味ある?」
そばかすいっぱいの人がにっかーっとのぞき込んできた。
「はい。アミョーの羽ですか」
「そうだよー。ほら。軽いよ」
マントの裾を手に乗せてくれた。
「ほわー! 軽いですよ!」
「え、そうなの? 俺も触っていいですか?」
「いいよいいよー!」
ジュスタも私の隣で手に布を乗せる。
すごいことに、すぐに指先が温かくなってきた。
「あったかいです!」
「本当だ! やっぱり羽毛は軽いですね」
目が輝いてるジュスタの側に、ニーノが立つ。
「私はニーノと申します。そちらの白銀のたてがみの竜さまの付き人です」
「あ、俺はジュスタです。俺も、竜さまの付き人です」
ジュスタに続いて、ぴょんっと背を伸ばした。
「初めまして! エーヴェはエーヴェです! りゅーさまの付き人ですよ」
「あたしシステーナ。なげーからシスでいーぜ」
――シスも山の付き人なのじゃ!
お屑さまを見て、そばかすさんがすっと背を伸ばす。
にこにこしながら、一人一人名前を確かめる。
「わたしのことは、マレンポーと呼んでください」
「はいはい! おれはカウね!」
両手を上げて元気な声を上げたのは、褐色の肌の小柄な男の人。
「わたし、ペードだよ。はじめまして」
にーっと笑った歯が白く輝く。黒曜石みたいにぴかぴかの女の人だ。
「地馳さまの付き人は――人間の付き人は、三人ですか?」
「いーや、あと一人いるよ」
「アミョーもたくさん」
――おれたち、たくさんたくさん。竜さまと走る。
ぽかんとなった。
「あれ、今の声……」
ジュスタも目を丸くしてる。
――おれ、人と話す。竜さまの力もらう。おれ、話す。
アミョーのうちの一人が、こっちを見て首をかしげた。
――クフプは特性を持っておるのじゃ! 特性を持つ同士は、話せることも多いのじゃ!
お屑さまがぴこんぴこんしてる。
人間以外で特性を持ってる生き物は初めてだ。
「おおー! じゃあ、クフプ? がお名前ですか? エーヴェはエーヴェです!」
人を乗せてきた三羽のアミョーがお互いに、かたりかたりと顔を見合わせた。
――おれ、カタッカ。
――おれ、クフプ。
――おれ、ストスト。
「おおー」
なんと三羽とも特性があります。
せっかく名乗ってくれたけど、全然見分けられそうにない。
「蹴爪で覚えるといいよ」
ペードが教えてくれる。
カタッカとクフプとストストが近くに来て、蹴爪を見せてくれた。
カタッカが青で先端に近いところが水色っぽい。クフプは青色に近い緑色。ストストはちょっと黄色いところがある。
「ほほう」
「ずいぶん違いますね」
――おれの爪、素敵。強いぞ。
……えーっと、これはクフプ。地馳さまの言い回しの真似なのかな?
――おれの爪、いい色。いい形。
これはカタッカ。スキップして周りを回る。
――おれの爪。珍しい。ポポの色。
「ポポ?」
――さっきペロが吐いた花なのじゃ!
「たくさん吐いてたぜ」
「これこれ、この花」
マレンポーが指さしたのは、キンポウゲに似た黄色い花。
――ポポ。いい色。おいしい。
ストストがポポをくちばしで千切って飲み込んだ。
「カタッカ、クフプ、ストスト。初めまして」
ニーノが折り目正しくあいさつした。
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