おまけ.出発準備 ~ニーノ~
そろそろお影さまのビジュアルを公開したいなと思いながら、お骨さまの絵ばかり描いています。
そのうち公開します。
ニーノがお影さまの上に乗るのは、大変だった。
何しろ、ニーノが近づくと、お影さまはのそのそ離れてしまう。
ニーノがまた近づくと、また離れる。
「おかげさま、ニーノが嫌いですか?」
言ってしまってから、ショッキングな質問だと気が付いた。
――影はニーノをよく知らんのじゃ! ゆえに、嫌いではないのじゃ! 他の生き物が近づいたら、離れるのは当たり前なのじゃ!
「ほほう!」
つまり、お影さまのパーソナルスペースです。
――影よ。ニーノはお主の傍におらねばならぬ。小さなトカゲと思うがよい。
竜さまが口添えしてくれる。
ぶー
お影さまはニーノに向き直り、右の眼でニーノを見て、反対側に首を折って左の眼でニーノを見る。
「できるだけ、ご不快のないようにいたします」
直立してるニーノに鼻面を寄せて、おかげさまはぐいっと押した。ニーノは頭を後ろに倒されたけど、無表情のまま。
ぶー
ニーノ、頭を戻す。
「はい」
ぶー!
「はい」
お影さまはまた首を傾ける。
「……何を話してますか?」
こっそりお屑さまに聞いた。
――鳴き交わしと同じなのじゃ! 意味より返ってくることが大事なのじゃ!
「ほほう!」
さすがお屑さまです。
「お影さま、背中に乗せていただいても?」
ニーノがお影さまの後ろに回るけど、ニーノの姿を首で追ったお影さまは、一定のポジションになると、のしのし方向を変えてニーノと向き合う。
「お影さま」
ぶー
「はい」
ぶー!
「はい」
ニーノがもう一度歩いてみるけど、お影さまはまたくるりとニーノに向き合ってしまう。
「お影さま」
ぶー
*
――まったく! とんだ阿呆なのじゃ! 背を見せねば、ニーノは背中に乗れないのじゃ!
何回か繰り返したところで、お屑さまが叫んだ。
お屑さまは誰にでも、容赦ない。
「おかげさま、見えないところに誰かがいるのが嫌ですよ」
困ってるかな? と思ったニーノの表情は、微笑んでた。
「竜さま、少しお影さまと遊んでもよろしいでしょうか?」
――うむ。それがよい。
ニーノはお影さまと向き合って左の手を挙げた。
「お影さま、どうぞ押してみてください」
首をかしげたお影さまだけど、竜さまから説明されたのか、鼻面でニーノの手のひらを押す。
ニーノの手のひらは動かない。
ぼ!
さっき簡単に頭を後ろに倒せてたから、お影さまはちょっとびっくりしたみたい。
羽を少し広げて、脚を踏ん張って押す。
それでも、ニーノ、びくともしない。
ぼっ!
お影さまは羽をバタバタしてしっぽも突っ張るけど、相変わらず、ニーノは全然押されない。
――ニーノは強いのじゃ。友の付き人なのじゃ。
様子を見てたお骨さまは、きょきょきょきょきょと羽を鳴らした。
ぼっ! ぼっ!
お影さまはうまくいかないから羽を乱暴にバタバタする。
竜さまが目を細めた。
――影よ。今度はニーノが押すのじゃ。
「それでは、押します」
ニーノがお影さまの前まで近づき、お腹に手を当てる。そのまま押した。
ぼっ!
お影さまはばたばた羽を動かし、ひっくり返りそうになって慌てて空に飛び出した。
――影よ。ニーノは追いかけられるのじゃ。
「それでは、追います」
ニーノが地面から飛び出した。
「おお!」
ニーノが飛ぶのは見たことあるけど、いつも必要最低限。今みたいにずっとお影さまを追いかけて飛んでる姿は、なんだかとっても珍しい。
スピードの変化も自由自在で、気持ちよさそう。
ぼ!
あっと言う間に並ばれて、お影さまびっくり。
がぶっと噛みつこうとするけれど、ニーノは上手にひらひら避ける。
「ニーノ、すごいですね」
――山の付き人なのじゃ! 当然なのじゃ!
……当然なのかな?
いつまでたっても捕まえられずに、とうとうおかげさまは火まで吐いたけど、ニーノには全然通じない。
ぶー
――はい。
夜空だから二人がどう飛んでるのか、よく分からなくなってしまった。
長く長く一緒に飛んで。
つまり、お影さまもニーノはすごいと思ったらしい。
翌日には、ニーノはお影さまのパーソナルスペースに入ることを許されてた。
背中に立つように乗って、お影さまが雨に濡れないようにする役。
……やっぱり、ニーノはチートです!
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