20.夕方遊び
しばらくすると、夕陽を羽に浴びながらお影さまと竜さまが船に向かって飛んでくる。羽が持ち上がる度、赤く光っては元の色になる。
お影さま、赤と黒の竜みたい。
――友と影が戻ってくるのじゃ。
帆桁の横にひょいっと首をのぞかせたお骨さまに、システーナとびっくりする。しっかり抱えててもらって、よかった。
お骨さまの頭の上では、ントゥが尻尾をくねらせてる。
なんか余裕の表情。
――ントゥは満足したのじゃ!
お屑さまがぴこんぴこんした。
一日、お骨さまと遊べたから、余裕なのかな?
「いつの間に戻ったんですー? お骨さま」
「エーヴェ、びっくりしましたよ」
――なんと。エーヴェはびっくりしたのじゃ。ばあ、も言わなかったのじゃ。
お骨さまは顎をかたかた鳴らす。
そのまま、ひょいひょいと竜さまたちを迎えに行ってしまった。
岸辺に降り立った竜さまと首をぶつけてごあいさつ。
続いて飛びこんできたお影さまは、お骨さまに体当たりする。
「なんと! おかげさま、強いですよ!」
叫んでる間に、お骨さまはバラバラになってしまった。
お影さまがびっくりして後ろに飛び戻る。
どしん、どしんと二回跳ねてから、ゆぅっくりと首を伸ばした。
ぼっ!
首を傾けてもう一回、ぼっと吠える。
――ばあ! なのじゃ!
おかげさまの鼻先にお骨さまの上あごがのしかかる。
ぼ! ぼ!
おかげさま、慌てて飛び上がった。
鼻面から転げ落ちたお骨さまの上顎は、ひょいひょい飛び跳ねて、他の骨の傍に戻ってくる。
みるみるうちに、お骨さまが立ち上がった。
――影もびっくりなのじゃ。うまくいったのじゃ!
うぉっほっほを始めるお骨さまから離れたところに降り立って、お影さまはあからさまに警戒してる。
ぼっ
――これは友にしかできぬ。
初めて会って火を吐かれたときにもお骨さまはバラバラになってたけど、お影さまは見てなかったのかもしれない。
しばらく胡散臭そうに周囲を回ってから、どしどしお骨さまに近づいて、鼻面でお骨さまの鼻……上顎あたりに触った。
――わしにしかできんのじゃ。影はできんのじゃ。
お骨さまは羽を、きょきょきょきょきょと鳴らす。
鼻をぐいぐい押しつけても、お骨さまがばらばらにならないことを確かめると、お影さまは、もう一度首を傾けた。
そして、のしのし岩の山に近づいていく。
……あ、昨日バラバラになった黒い岩の残骸の小山だ。
――影は黒い岩がたいそう面白かったのじゃ! まだあきらめんのじゃ!
やっぱり元の形にならないことを確認すると、お影さまはぶーっと震えて不満をひょーめーした。
*
夕陽をバックに、竜さま、お骨さま、お影さまは夕方遊びをしてる。今日はントゥもお骨さまの骨の上に乗ったままだ。
――貴様ら、そろそろ降りてこい。
「ぎゃっ!」
頭に響き渡った声に背筋が伸びる。
システーナもおんなじで、ちょっとおかしい。
――ニーノ、船の中におるのか。
――はい。今、夕飯を作っておりました。何か御用でしょうか。
あっと言う間に甲板に現れそうな口ぶり。
システーナにおんぶしてもらって帆柱を降りる。
――ニーノに、ジュスタ、回復したか? そろそろ地馳のところへ行く。
「いつ出発ですか!」
――出発はいつですか。
ニーノと質問がかぶっちゃった。
――早ければ明日の宵。
――宵じゃ! 宵じゃ!
お屑さま、なぜか盛り上がってます。
「おちびはだいじょぶか?」
「お?」
あわてて頭の中で縄を結ぶ。
「わかりません! でも、早く地馳さまに会いたいです」
でも、夜に飛ぶんだもんね。……眠くならないかな?
――明日か明後日に飛ぶとちょうどいいのじゃ!
――なぜじゃ?
自信たっぷりのお屑さまにお骨さまが聞く。
――地馳の位置がよいのじゃ! 風もきっとよいのじゃ!
――うむ。位置はよい。風は分からぬ。
――地馳は良い竜なのじゃ。
ぼ!
お影さまがばたばたと羽ばたいた。
「おかげさま、やる気です!」
べ!
こっちを向いて呼ばれたから、きっと本当にやる気いっぱいなんだ。
「明日でもなんとか。明後日なら問題なく」
甲板に降り立ったタイミングで、ニーノも甲板に上がってきた。
「俺はあさってのほうがいいです」
ジュスタのくるんくるんの黒髪がひょいっと甲板に顔を出す。
――うむ。明後日にしよう。
「はい!」
付き人みんなで声をそろえる。
――明後日の宵じゃ! 宵じゃ!
お屑さまがぴこんぴこん宣言した。
「出発前にやることがたくさんある。明日は忙しいぞ」
ニーノが振り向いて、みんなを冷たく見る。
「だいたいいっつも忙しーけど」
「わかりました!」
「楽しみだねー」
口々に上がった返答のどれかに、ニーノはうなずいた。
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