13.夜行性
なかなかリズムが作れず、間隔がばらばらですみません。
次の朝、起きて外を見てみる。
まず目に入ったのは、お骨さまのしっぽの骨。ントゥが見える位置に座ってるみたい。大きな骨の向こうに、湖の岸辺で寝っ転がってる竜さまが見えた。
「りゅーさま、燃えてるかな?」
目を凝らして見る。明るくなった中だと青い火が燃えてるのか、よく分からない。
竜さまはその辺りに転がってる岩を拾い上げて、噛んで砕いたり、遠くに放り投げたりしてる。
「むむ。りゅーさま、まだごきげんです」
「エーヴェ。起きたならご飯にするよー!」
食堂のほうからジュスタの声が聞こえた。
「はい!」
部屋を飛び出す。
「ジュスタ、おはよう! ……あれ? ニーノは?」
腕まくりを元に戻しながら、ジュスタがやって来た。
「お。顔洗います」
一緒に船倉の二層に行って、手と顔を洗って戻る。
「ニーノさんは黒い竜さまと外にいるよ」
「そうか。けがしてますからね」
「ご飯食べたら、見に行こう」
「そうします!」
食堂に着いたら、歪んだツボの上でリラックスモードになってるペロがいた。忘れてたので、水をかけてあげる。かける端からぐんぐん吸い込まれた。
「ペロも黒い竜さまに会いに行きますか?」
「新しい鉢はもう少し待ってな」
ペロはリラックスモードのままだ。
二人で朝ごはんを食べてから、外に出た。
「ニーノ! おはようございます!」
「おはよう」
ニーノは黒い翼竜の側に布を敷いて、器に入った薬草を細かく砕いている。
「ニーノさん、朝ごはんどうぞ」
「助かる」
ジュスタがおにぎりを渡す。今日はキノコ炊き込みご飯。
ニーノは薬草を傍らに寄せて、黙々とおにぎりを食べ始めた。
黒い翼竜の側に行って見る。火をいっぱい吐かれて大慌てだったから、全然顔はわからなかった。初めて会う気持ちだ。今は目をつむって、眠ってるみたい。
包帯でぐるぐる巻きにされてるのが、二箇所。体を覆う皮膚は固そうで、すごく強いトカゲみたいな感じ。顔を近づけても鱗は見えないけど、つやつやして光を反射してる。
「黒い竜さまのお怪我は大丈夫ですか?」
ジュスタはニーノの傍で羽を見上げてる。大きな羽は今は折りたたまれてるけど、他より色が薄い被膜が膜といえないくらい厚くなって、みゅっとはみ出てる。触ってみたいけど、手が届かない。
「お怪我は問題ない。眠っているのも回復のためだろう」
「眠って元気になります! でも、起きてまた火を噴いたりしませんか?」
――火を噴いたら、また友がケンカするのじゃ。
お骨さまがひょいひょい近づいて来て、黒い竜さまをのぞき込む。竜さまは遠くの岸辺でごろんごろんを始めた。
りゅーさま、ごきげんです。
――まだ寝ておるのじゃ。
お骨さまはかたっと首をかしげる。
「エーヴェ、黒い竜さまの羽が触ってみたいです!」
やってきたジュスタが羽を見上げる。
「わー。ちょっと柔らかそうだ。でも、勝手に触っちゃ悪いよ」
……むー。残念。
眺めてたら、さっと立ち上がったのが目の端に映った。
ぐ、ぐう……
お腹に響く音がした。目の前の巨体から響いてくる気がする。
――動いたのじゃ。
「お目覚めですか」
お骨さまは少し離れた。急に火を噴いたら危ないもんね。
でも、ニーノが黒い竜さまの頭に近づく。見ると、さっきまで閉じてた目がうっすら開いてる。
ぶー――――……
……あ、そうか! マナーモード!
ぶるぶる震えるみたいな声を立てて、黒い竜さまはずりずりと腹ばいのまま後ろに下がった。
お骨さまにならって、ちょっと遠巻きに眺める。
黒い竜さまは何もしない。
「どうしましたか? まだ痛い?」
眉間にしわを寄せたニーノが、ふわっと宙に浮いてそのまま甲板に飛んで行った。
「どうしたのかな?」
「うん……。エーヴェ、お骨さまのほうに行っててくれるかな? ニーノさん、手伝います」
眺めてると、ニーノはどうも帆を外そうとしてる。ジュスタも鉤を投げて、舷側から甲板に上がっていった。
しばらくして、帆を持ってニーノが戻ってきた。そして、そのまま帆を黒い竜さまの上にかける。帆はとても大きいけど、それでも黒い翼竜のしっぽは外に出たままだ。
「おおー?」
――なんじゃ?
ぶー――……
しばらくすると、声が聞こえなくなる。
帆の下で首を持ち上げたみたいで、ゆるい丘ができた。
「ご不快ではありませんか?」
ニーノが声をかける。
左右に首が動いた。周りを見回したみたい。そして、ゆっくりと立ち上がった。
帆をかぶって立ち上がった黒い竜さま。お化けに変装してる。
あ、でも足は見えてるから、お化けじゃないかな。
――おお。元気になったのじゃ。
お骨さまが立ち上がった黒い竜さまを見て、ぱかっと口を開ける。
――わしはお骨さまなのじゃ。おはようなのじゃ。
さっそく挨拶してるけど、黒い竜さまは帆をかぶってるから多分見えない。
「どうして、帆をかけましたか、ニーノ」
ニーノが冷たく見下ろしてきた。
「おそらく、こちらの竜さまは明るいのが苦手だ」
「なんと!」
帆をかぶった黒い竜さまは、地面のにおいをかぐように、首を下ろしてる。
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