10.走る!
お待たせして申し訳ありません。
いろいろな心配事で執筆力が弱まっております…すこし不定期更新が続きそうです
羽吹雪。風が吹くと、地面に落ちたのがまた空を飛んで、綿雪が舞い飛ぶみたい。
「この羽はいつまで飛びますか」
――すぐになくなるのじゃ。アミョーのわた毛は抜けるともう生えないのじゃ。
「もう二、三日で全部抜けちゃうんじゃないかな」
「あっという間におしまい」
「そして、うぶ毛の抜けたアミョーのヒナは、みるみるうちに大人と変わらない大きさになるんですよ」
「お、マレンポーです! こんにちは!」
「はい、こんにちは」
いつの間にか、マレンポーが隣でにこにこ立ってた。
「エーヴェさん、袋をいっぱいにしてくれたんですね」
「そうです。消えぬかすみ」
「ふふふ、お屑さまの言葉は美しいですねぇ」
――当然なのじゃ! 美しいわしからは美しい言葉がまろびでるのじゃ!
お屑さまは得意げにぴこんぴこんしてる。
……マレンポーはどうしておくずさまが言ったって分かったのかな?
「それじゃあエーヴェさん、袋をもらいます。羽布を作るのはわたしたちにまかせてください」
「羽布作りはとーっても難しいからね」
「エーヴェは道具がないもんな」
カウが二本の棒をひらひらさせる。その棒の先端で、まるで編み物みたいに羽と羽を絡ませてたのを覚えてる。
「でも、エーヴェ見たいですよ!」
――わしも羽が布になるのを見るのじゃ!
「今日じゃなくてもまだ機会はありますよ。エーヴェさんはヒナに会いに行くんでしょう? ストストが待っています」
「待ってますか?」
マレンポーが杖を持った手をあげて、前後ろ、右左と大きく振る。すると、向こうのアミョーの群れから、一羽が離れてこっちに走り出した。
「ストストですか? 目がとてもいいですよ!」
蹴爪の色でストストと分かる。あんなに離れてるのに、マレンポーの小さな動きで伝わったんだ。
「アミョーは動きに敏感なんですよ。むしろ、距離かもしれません。人間と違って近づく、遠のくの動きがよく分かるんです」
「ほう!」
たしかに、左右の動きと前後の動きだったら、前後のほうが分かりにくいかも?
マレンポーがきらきらしてる。
「おもしろいですよね! やっぱり群れで走るから、ですかね?」
「隣のアミョーにぶつかりません!」
「ぎりぎりを走ってもぶつからないんですよ。そのときどきで、皆ちゃんと同じくらいの距離をおいて走りますからね」
「アミョーが物にぶつからないのすげえよな」
「そうだね、背中に乗ってると感心するもん」
カウとペードも口々にアミョーをほめる。
――当たり前なのじゃ! 注意して走るのじゃ!
お屑さまだけ、不思議そうにしてる。
……風に飛んで、いろんな物に絡まっちゃうお屑さまが、アミョーに感心しないのはなんでかな?
私は背中に乗せてもらったとき、揺れにびっくりして、他のことにはぜんぜん気がつかなかった。
――エーヴェ! 羽集めは終わったのか? ヒナと会うぞ! ヒナたち、愛らしぞ!
目の前で急ブレーキをかけたストストがこっちに首を傾ける。
「会いますよ!」
――アミョーのヒナは、ヒナ同士で集まって大きくなるのじゃ! 童もヒナも童ゆえ、ちょうどよいのじゃ!
おくずさまがぴこんぴこんする。
――ヒナたくさん! エーヴェ、乗せるぞ!
「お?」
まだ一人で乗ったことがないからたじろいだけど、カウとペードが手を差し出して、ストストの背中に押し上げてくれた。
――行くぞ!
一度離れた羽吹雪のほうへ、ストストはずんずん走っていく。
気のせいか、さっきより羽がまばら。朝は一所に集まってたヒナたちが、いくつかのグループに分かれたからかな。
走り回ってるヒナ、砂の上に座って頭をゆらゆらさせてるヒナ。地面にくちばしを寄せて歩き回って、ときどき何かをついばんでるヒナ。
お屑さまのいう通りで、ここにいるのはみんなヒナで、大人たちはちょっと離れたところで、周囲を警戒してる。
みゃう!
みゃあみゃあ
「おお?」
まばらになってたヒナたちが、首を持ち上げ、何羽かこちら目がけて走ってくる。カウやペードと一緒のときは、知らんぷりだったのに。
――ストスト、餌ないぞ。
「おお、餌をねだりにきますか」
――餌ないぞ。
さっきまでヒナを愛らしいって言ってたストストは、ヒナの前に来るとつんつんの知らん顔。ヒナの前を走り抜ける。ヒナが餌はもらえないと諦めたところで、走るのをやめてヒナグループの間を練り歩きはじめた。
ストストの背中の上から眺める。動く度にわた毛をまき散らすヒナは、もう私と背が同じくらいか、高い。頭を持ち上げて両方の羽を広げると、ただの腕しかない人間だと、全然勝てそうな気がしない。
「強そうです」
――強いのじゃ! 走り比べをしてみるのじゃ!
――アミョーは走るぞ! とても速いぞ!
お屑さまがはやし立て、ストストに首の後ろをくわえられ、地面に下ろされた。
「え? 本当に走り比べますか?」
――アミョーと遊ぶのじゃ!
みゃうみゃう
ストストが首を高く伸ばすと、ヒナが何羽か集まってくる。
そして、駆け出した。
――童! 走るのじゃ!
「合図はないですか!?」
ストストも羽を広げて、走り出した。
「なんと!」
――急ぐのじゃ!
飛んでくるわた毛が顔をかすめる中、私も慌てて走る。
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