その307 対戦ありがとうございました!
「この勝負……絶対に勝ちます!」
「意外ですね。ラウラは寛容な方なのかと」
「いやいや、普通にカードになるのは恥ずかしいですよ……でも、それ以上にですね──」
私が寛容か不寛容かはさておき、確かに普段ならナナっさんのお願いであれば大抵のことは受け入れる私である。
カードになるのもまあ、それだけなら構わないと思う。
ただし……そこにゲーム性があるなら話は別!
「カードになるだけならいいんですが──私がカードになったらステータスが絶対にクソ雑魚なんですよ!!!」
「そこですか?」
「この世にクソカードを増やしてはなりません! 子供がなけなしのお小遣いで引き当てた時に可哀そうです!」
「想定が謎過ぎます」
別に『生徒トレーディングカードゲーム』は一般に売られてもいないと思うけれど、そうだとしてもいたずらに弱いカードを増やしたくはない。
それに私が混じるとテーマデッキを作るときなんかに不純物になりかねない。
ここは勝たせてもらう……推しのカードを使ってね!
「ふっ……ではこのカードプールから好きにデッキを作るのじゃ!」
渡されたカードの束から私は既定のカード数までカードを選んでいく。
そうしてデッキを作って行くなかで気付いたのだけど……推しのカード多いな!
お兄様も『黒貴族・ジョセフ』って名前で入ってるし、グレンもジェーンもいる!
推し、このゲームで負けまくってる?
「というか、もしかしてナナっさんこのゲームクソつよいですか?」
「当然! わしの作ったゲームを一番上手く遊べるのは勿論わしじゃよ!」
「まあ、そもそも経験者がナタ学院長だけなので……」
「なるほど、確かに圧倒的有利です」
「そんな寂しい奴みたいに言わんで欲しいのじゃ~!」
一人でこのゲームを遊んでいるナナっさんを想像すると泣けてくる私だった。
しかもナナっさん分身出来るから現実的にやってそうなんだよね。
なんとも侘しい光景……。
でもでも、カードゲームのプレイヤーは分身出来なくても結構そういう遊びやってたりするらしいですよ?
「しかしながら、それを考慮してもナタ学院長は強いですよ。過去には100戦して1勝でもすれば挑戦者の勝利というルールでも負けませんでしたから」
「本当に強いんですね……考えて見ればそれくらいないとヘンリーも負けませんもんね」
ヘンリーの頭脳を持ってすれば初見のゲームでも難なくこなしてみせるだろう。
そんな推しに勝っているという事実は、ナナっさんがこのゲームをめちゃくちゃ得意としていることを示していた。
「ヘンリーも普通のルールで惜しいところまでは行ったんじゃがのう」
「ラウラ、どうか仇は取ってください」
「任せてください! ヘンリーの為にも勝ちます!」
話しながらもカードを選別していた私はなんとかデッキを完成させるとナナっさんその2の前に腰かける。
いよいよデュエル開始だ……!
「先行はくれてやる! 引け! ラウラウ!」
「行きます! ドロー!」
こうして始まった生徒トレーディングカードゲーム。
決着には五分もかからなかった。
何故なら全てはワンターンで決着したから──
「──まず『黒貴族・ジョセフ』を特殊召喚します。お兄様は手札から三枚のカードを墓地に送ることで特殊召喚することが可能です。墓地に三枚送ります。そして手札から『完全無欠の王子様・ヘンリー』の魔法を発動。墓地から場に一体特殊召喚することが出来ます。私は先ほど墓地に送った『表情豊かな無表情・イブン』を選択。イブンが場に召喚され、更に召喚されたイブンの効果でデッキから『最強を目指す道筋・グレン』を手札に加えましてそのままグレンを場に召喚。グレンは召喚時に双方のプレイヤーのヒットポイントに1000ダメージを与えるので、私とナナっさんのヒットポイントは3000から残り2000となります。ダメージを負ったことで手札から『天使にして天才・ジェーン』の魔法が発動。コインをトスして表の場合ヒットポイントが1500回復し裏が出た場合は1000のダメージを負います。トス。表が出ました。本来ならこのまま回復ですが、ここで『ツンデレお嬢様・ローザ』の魔法を発動させてトスをやり直します。再度トス。裏が出ました。私のヒットポイントに1000のダメージ。残りヒットポイント1000となりますがここで最初に召喚されていたお兄様の効果が発動。お兄様はプレイヤーのヒットポイントが1000以下となった時、そのターンに負ったプレイヤーのダメージを相手プレイヤーにも負わせることが可能です。ここまででこちらが負ったダメージは2000。ナナっさんの残りヒットポイントが2000なので0となり私の勝利です。対戦ありがとうございました!」
「…………………………何がおきているんじゃ!?」




