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その306 許可ぶん取り


 気軽なものかと思いきや意外と剣呑な空気を醸し出している!

 やや不安になりながらも学院長室に移動すると……山盛りの書類が机にドンと置かれていた。

 どうやら忙しいのは本当だったらしい。


「よく来たのう!」

「来てみたのにナナっさんの姿が見えません!」

「書類で完全に隠れてますね」


 ナナっさんの小柄な矮躯はチョモランマの様な山脈でに覆い隠されており、その奥から話しかけてくる姿はまるで書類が喋っているかのようだった。

 こうやって話している間に高速でペンが走る音が部屋に響き、書類が積み上げられて行っている……本当に大変そうだ。


「その状況だとゲームできなくないですか?」

「大丈夫じゃ……増えるから」

「増えるから!?」


 ナナっさんのその言葉と同時に背後から現れたのは、なんとナナっさんである。

 当たり前のように増えないで欲しい!

 ナナっさんその2はそのままソファーに腰かけると、カードを机に置き始めた。


「わしバージョン1.05じゃ」

「アップデートが細かいタイプ!」


 どうやらこの分身が私と遊んでくれるらしい。

 もはや神出鬼没を越えて魑魅魍魎という感じがしてきたナナっさんだった。


「ルールブックもあるから読んでおいてくれ」

「意外ときっちりしてるんですね……しかもそこそこ分厚い」

「仕事も遊びも全力がモットーじゃ!」

「その言葉は仕事と遊びを同時にやるって意味じゃないですからね?」


 ひとまず私はルールブックを読み込む。

 こういうのは基本遊びながら覚えるのが一番なのだけど、しかし最低限の知識は脳に叩き込んでおいた方がいいとも思う。

 理解とは知識の先にあるものだからね。


「そしてこのゲーム……敗者には罰ゲームが降りかかるのじゃ」

「へぇ……へぇ!? き、聞いてませんよ!?」

「スリルがないと面白くないからのう」

「これが魔のゲームたる所以です」


 ヘンリーが言っていた不穏な言葉はこれを意味していたらしい。

 なんだか詳しい様子を見るに、もしやヘンリーも一度このゲームをプレイして敗北したのだろうか……。

 そして、その罰ゲームとは一体? あんまり厳しいものだと私、死んじゃうかもしれませんが。


「罰ゲームの内容は……じゃな」

「ごくり……」

「『敗者はこのゲームに出演することを了承しなければならない』というものじゃ!」

「……いや、そ、そういう手段で生徒から許可を取ってたんですか!?」


 一応許可取り出来た生徒だけで作っているという話だった『生徒トレーディングカードゲーム』だけれど、なんとその許可は賭けでぶんどったものだった!

 負けたらカードになるなんて、それだけ聞いたら完全にカードゲームの悪役だよ!

 もっと真っ当な手段で許可取ってください!


「はっ……もしやヘンリーも?」

「はい……カードになってしまいました」

「ナナっさん……! なんって素敵ことを……!」

「ラウラ、そこは卑劣なことをって言う場面ですよ」


 しかしなるほど、この方法なら確かに許可なんて出しそうにないメンツからも許可が取れる。

 考えて見ればレイマンさんなんて如何にも許可なんて出しそうにない性格だから、もし愛犬家さんがレイマンさんだとしても、この方法でカードにしたというのなら納得だった。

 

 それにしても推しがカードになるのは素晴らしいのだけど……これ私が負けたら私もカードになっちゃうのか。

 それはなんか……嫌!

 これは絶対に負けられないぞ……! 

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